今年も発表されたDJ MAGの世界人気DJランキング。

本項では、賛否両論騒がれる新王者ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクの勝因とこのランキングから考えうる今後のEDMシーンのトレンドを読み解いてみようと思う。

では、早速そのベスト10を見て見ると……

1位:ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイク(↑1UP)
2位:ハードウェル(↓1DOWN)
3位:マーティン・ギャリックス(↑1UP)
4位:アーミン・ヴァン・ブーレン(↓1DOWN)
5位:ティエスト(—)
6位:デヴィッド・ゲッタ(↑1UP)
7位:アヴィーチー(↓1DOWN)
8位:アフロジャック(↑1UP)
9位:スクリレックス(—)
10位:スティーヴ・アオキ(—)

王者ハードウェル破れる! ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクが初の栄冠に

2013、2014年と連覇したハードウェルに代わり、見事1位に輝いたのはディミトリ・ヴェガス&ライク・マイク!

この結果には世界中で賛否両論飛び交っているが……
ここでは彼らの人気の源について考えてみた。

ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクの魅力と言えば、その圧倒的なパフォーマンス力とともに、昨年の投票以降も“The Hum”や“Tales of Tomorrow”、“Higher Place”など、チャートを席巻するフロア・アンセムを数多く量産してきた。

このあたりは、ベスト10を見ても思うことだが、EDM=プロデューサー至上主義的という構図は今なお健在ということだろう。

さらに、ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクが1位に輝いた背景としてはもう1つの理由が考えられる。
それは、『Tomorrowland』の存在だ。

彼らは2010年に同フェスのホスト&レジデントとなり活躍し、同時に昨年まで毎年『Tomorrowland』のアンセムを制作。
同フェスのコンピレーションアルバムへの楽曲提供はもちろん、毎年5000万回〜1億回以上の再生数を誇るアフタームービーでも随所に楽曲が使用されてきた。

それに呼応するように、DJ Magのランキングでも2011年に初登場で79位。翌年38位、2013年には6位、そして昨年2位と着々とランクアップしてきた結果、わずか5年で1位に。
これは年々人気が上昇している『Tomorrowland』での活躍と比例していると言えるだろう。

それは、ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクが1位に輝いたとともに、もう1人のレジデントであるイヴ・ヴィーが21ランクアップの34位を記録したことからも考えられる。

ランキングから考察する、EDMにおける音楽性の変化

そして2位にはハードウェル、前評判が高かったマーティン・ギャリックスは、1ランクアップの3位という結果に。
初の10代チャンプというのも見てみたかったが……残念。

その他、ベスト10は大きな変動はなし。
昨年はマーティン・ギャリックスの36ランクアップという大ジャンプがあったが、今年は大番狂わせはなかった。

それは、20位以下を見ても同じことで、昨年ブラスタージャックスの58ランクアップという大ジャップは見当たらず。
シーンもだいぶ落ち着いてきているのか、それとも頭打ちなのか……とも思ったが、一概にそういうわけではなく、12位にオリヴァー・ヘルデンス(↑22 UP)、20位にディプロ(↑12 UP)、30位にドン・ディアブロ(↑52 UP)、32位にDJス ネイク(↑33UP)、さらにはカイゴが32位に初登場と、直球EDMとはまた異なる路線のアーティストが大きく躍進しているところから、シーンの 移り変わりというのも感じるところ。

オランダ出身のオリヴァー・ヘルデンスは、2014年から注目され始めたフューチャー・ハウス界の寵児。
よりディープハウス志向の強いそのサウンドは2015年も引き続き注目され、EDMの新ジャンルとも叫ばれているが、その代表選手が12位にランクインしていることは興味深い。

さらには、同じくフューチャー・ハウス界を盛り上げているベテラン:ドン・ディアブロ。
今年は、新レーベル:HEXAGONを立ち上げ話題を呼んだ彼が52ランクアップの30位と健闘していることからも、フューチャー・ハウスの波がきていると言っても過言ではない。

また、ディプロやDJスネイクといったトワーク、トラップ系の台頭。
すでにアメリカのビルボードでは、メジャー・レイザー&DJスネイクの“Lean On (feat. MØ)”がチャート1位を飾り、ディロン・フランシス&DJスネイクの“Get Low”も大ヒットしているだけに、その流れも見逃せない。

ただ、DJ MagはUKのものだけに、アメリカとEU圏における違いというのもあるだろう。
実際、今年アメリカで行われた人気DJランキングを見てみると、1位はスティーヴ・アオキ、そして2位にはカスケイド、3位にディプロと、全然別もの(4位以降は、スクリレックス、クロード・ヴォン・ストローク、ディロン・フランシスと続く)。
その比較もまた面白いが、そのあたりはまた別の機会に。

そんな新たな流れに対して、ニッキー・ロメロが10ランクダウンの18位(彼の場合は裏方にまわりつつあったことも理由だと思うが)、デッドマウスも9ランクダウンの25位(彼の場合はいろいろ理由があると思うが(笑))、ショウテックは37位(20ランクダウン)、クルーウェラに至っては48ランクダウンの81位(路線変更が仇となったか?)、カスケードも38ランクダウンの84位という変化も。

トップ10に変化はなくとも、ベスト100の中では様々な変化があるわけで、そのあたりは音楽的な傾向が関係しているだろう。

来るEDM新時代、今後のシーンはどうなる?

つまり、音楽的な流れとしては王道的なEDMサウンドは落ち着きつつ、オリヴァー・ヘルデンスやドン・ディアブロらのフューチャー・ハウス系、そしてディプロやDJスネイクらのトワーク&トラップ系が盛り上がりを見せている。

フェスにおけるビッグルーム化はまだまだ進行しつつも、その中で変化する音楽性は今後も加速していきそうな気がするし、彼らがまだまだ健在なアーミン、ティエスト、ゲッタらベテラン勢に今後どう向かっていくのか。
それは、来年以降の注目点。

もしかしたら、新勢力にとってはDJ Magのランキングには脇目も触れず、スターたちがマス化していくなかで我が道を行くスタイル(例えばスクリレックスのような)が今後主流になっていくのかもしれない。

それは、ある種ダンスミュージック・シーンの原点回帰にも近い部分があるが、ここまで大きくなったEDMシーンにおいてそれがどう影響するのかとても興味深いところだ。

最後に20位から30位までのランキングも。

11位:カルヴィン・ハリス(↑↓)
12位:オリヴァー・ヘルデンス(↑22 UP)
13位:アレッソ(↑2 UP)
14位:W&W(↑4 UP)
15位:ダッシュ・ベルリン(↑1 UP)
16位:ダブス(↑4 UP)
17位:アクスウェル&イングロッソ(↑↓)
18位:ニッキー・ロメロ(↓10 DOWN)
19位:ブラスター・ジャックス(↓6 DOWN)
20位:ディプロ(↑12 UP)
21位以下は、リハブ、ゼッド、カシミア、ナーヴォ、デッドマウス、ダニック、ダイロ、デオロ、アバヴ&ビヨンド、ドン・ディアブロ。

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