それこそ古来から人は音楽に熱狂してきたものだが、同じように人を興奮させてきたものがある。それは火、とりわけ花火にみな心奪われてきた。
そもそも花火の起源は紀元前3世紀ごろ、ルーツは中国の狼煙にあると言われ、観賞用の花火は14世紀にイタリアで祝祭に使われたのが始まりだとか。そして、日本にも花火的なものは伝わっていたものの、本格的なものは伊達政宗や徳川家康が最初に見たとか見ていないとか(諸説あるらしい)。

その後着実に進化し、今や世界に誇る日本の伝統文化となった花火が、今、最新のテクノロジーと融合し、新たなカルチャーを生み出そうとしている。その端緒となるのが、5月27日(土)にお台場海浜公園で開催された未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」だ。

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そこでは人の心を昂らせる二大要素、花火と音楽にパフォーマンスやライティングなどが加わった、まさに新感覚の花火大会。しかも、実際に会場に行ってみると花火が打ち上がる前からその様子は既存の花火大会とは一線を画していた。

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というのも、会場内にはいたるところにパフォーマーがいて、それもただパフォーマンスするのではなく積極的に来場者とコミュニケート。一緒に踊ったり、写真を撮ったりとサービス精神満点。その他にもフードエリアや子ども連れのためのキッズエリア&授乳室まで完備。

そして、会場内には2つのDJブースも設けられていて、そこでDJするのは今年MONDO GROSSOとしての活動を再開した話題のSHINICHI OSAWAやElli-RoseことELLI ARAKAWA。さらには、RHYMEにNAOKI SERIZAWAといった一線級の現場で活躍するアーティストたち。
彼らが主戦場(クラブ)とはまたひと味違ったフィールド、陽光きらめき目の前には海が広がる心地よい空間でいつもとは違ったプレイで極上のサンセットタイムを演出。それだけでもファンにとっては嬉しい限りだが、こういった“おもてなし”は現代のイベント、フェスにはすごく重要だ。

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この日の開場は16時。みないい場所を確保しようと早くから訪れるお客さんが多かったが、実際花火があがるのは19時以降。それまでの約3時間をいかに飽きさせないようにするか、そのために様々なコンテンツを準備していることは本当に素晴らしいと思う。しかも、おもてなしで言えば、会場が砂浜とあって座って花火を観る人のために、レジャーシートが配られるという丁寧さ。

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前置きが長くなってしまったが、肝心の花火。
今回は会場内に合計230台以上のスピーカーが用意され、3Dサウンドデザインのパイオニアkatsuyuki setoによる野外では世界初のミュージック花火が行なわれていたのだが、それはとにかく興味深かった。クラシックやポップに加え、ダフト・パンクやブラック・アイド・ピーズにザ・プロディジーなどのダンスミュージックとともにあがる花火はまたオツなもの。

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特に、エニグマの名曲“Return To Innocence”と一瞬の花火がもたらす哀愁感はマッチしていたし、プッチーニ歌劇「誰も寝てはならぬ」での壮大な締めくくり方はなんともオシャレ。そして、それら音楽と花火のシンクロ率の高さも現代の技術の進化を感じさせてくれたが、既存の楽曲以外の3Dの波の音や風の音などの環境音は実にリアルで、まるで映画館のような感覚。目を閉じれば、まさかお台場にいるとは思えない異次元体験。3Dサウンドの奥深さをたっぷりと感じさせてくれた。

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しかし、この日のメインは花火であって目を閉じているわけにはいかず、「隅田川花火大会」や「東京湾大華火祭」といった名だたる花火大会にも参加している老舗花火屋「丸玉屋小勝煙火屋店」の見事な大輪に感動! といきたいところなのだが、目の前には水上を舞うウォーターパフォーマーや炎と光の演舞を魅せるファイヤーパフォーマー。さらにはポールダンサーまで登場して、目のやりどころに困る嬉しい悲鳴状態。そこに音楽も加わるものだから、視覚&聴覚をフル稼働しても脳がオーバーヒートしそうな盛りだくさんの情報量。いずれにせよ普段の花火大会とは違う新感覚の未来型花火エンターテインメントというのも頷ける内容だった。

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そして、もうひとつ気になったのが花火の見方。今回は普通に観るだけではなく、横になって花火が鑑賞できるベッドエリアやクッションエリア、一流のシェフによる料理に舌鼓を打ちながらゆっくりと観れるディナーエリアなど、様々な工夫がなされていたこと。それらは、全て前売りの時点でチケットは完売していたようだが、ただ観せるだけでなく、見方においても新しさを提案するところは興味深かった。

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最終的には前売りも当日も全てチケットは完売し、初開催ながら15,000人もの動員を記録した「STAR ISLAND」。総合プロデュースの小橋賢児氏は「来年もお台場で待ってます!」とのコメントを残していたが、人類の英智はまだまだこんなものではないはずだ。

伝統文化と最先端の新たな蜜月「STAR ISLAND」、ここから日本のカルチャーの新たな歴史が紡がれていくことに期待したい。

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