2014年の結成と、そのキャリアは浅いものの、今年の第59回グラミー賞にてデビュー曲“Drinkee”が見事最優秀ダンスレコーディング部門にノミネート。ダンスのビートにアフロやトロピカルなど様々な音楽性が融合し、なおかつダークでミステリアスなポルトガル詩のヴォーカルが際立つ、ホリックな魅力溢れるこの1曲で、元来コアな音楽ファンから注目を集めてはいたものの、一躍その名を世界へと知らしめたソフィー・タッカー。

“Drinkee”以降も様々なジャンルのサウンドを積極的に取り込み、常にオンリーワンなサウンドを打ち出してきた彼ら。ある種節操のないその音楽性の裏には、ソフィー・タッカーなりの信念と音楽への飽くなき探究心が垣間見える。

今回は『BACARDÍ“Over The Border”Launch Party』で初来日したふたりにインタビュー。同イベントのコンセプトである“Over The Border(既存の概念を超える)”にまさに当てはまる彼らは、当日も実に素晴らしいパフォーマンスを披露してくれた。

——まずは今回のイベントの感想から教えてもらえますか。

Tucker Halpern(以下、T) 最高だった。

Sophie Hawley-Weld(以下、S) 私もすごく楽しかった。全てがとてもクールだったけど、なかでもEi Wada’s Braun Tube Jazz Bandのブラウン管テレビを使ったパフォーマンスには魅入ってしまったわ。そして、トキモンスタやアンナ・ストレイカーと同じステージに立てたことは嬉しかったし、会場内で行なわれていたライヴペインティングも素晴らしかった。

あとは、フロアを彩っていた装飾もひとつひとつのディティールがスゴくて、本当に美しかったと思う。特にステージのまわりをにあった(R領域の)スクラップアートもすごくステキだったわね。

T 当初は正直どんなイベントになるのかよくわからなかったけど、結果的に僕らが経験したものの中でもかなりイケてるイベントだったね。自分がファンであるアーティストと一緒にプレイできたし、ビジュアルアートのレベルの高さにも驚かされた。

S 一緒に出演していたたくさんのアーティストや作品からとても刺激をもらったし、今回参加することができて本当に光栄だわ。

——ふたりはアートにも興味があるんですか?

S もちろん、すごく興味がある。

T 僕らは音楽を作るにあたって、アートからフィードバックされることは多いんだ。それに、楽曲を作るときにはたまに音を色で表現することもあるしね。まるでペインティングのようにさ。それって音楽もアートも同じような感覚だってことなのかもしれないね。

S あとはファッションの要素も大きいわね。そこからインスパイアされることもたくさんある。アートは全て大好きだし、音楽も含めてアートは人間のステキな表現方法だと思うの。そして、それは提供する側と受ける側の両方をインスパイアしていく。そんな相乗効果もあると思う。

——このイベントのテーマは“Over The Border”です。ふたりにとって既存の概念を超えること、その境界とは?

T 僕らにとっては、その言葉が全てってことかな。ソフィー・タッカーはNYで生まれたけどアメリカ国外で認知され始めたバンドで、僕らにとってそれは素晴らしいことだと思ってる。それに、そもそも全部英語で歌っているわけじゃない、そこからして境界や既存の概念を意識していないってことになるんじゃないかな。それに、そんなことは存在しないものだと考えるようにしているしね。

S 私も常に境界や常識といった範疇を超えていきたいと思ってる。自分たちの音楽がボーダレスでいられるように常に意識しているし、それを望んでる。とにかくいろいろな要素を取り入れて、境界に左右されないようにしてるの。それを飛び越えるのが好きなのよね。

——そんな境界を飛び越えるべく挑戦し続けている若いアーティストにアドバイスをもらえますか。

T 僕が言えるのは自分が好きな音楽を作るってことだね。たとえば、自分が毎日聴きたい音楽とかね。他の人が聴きたい音楽を作ったりするのはよくないな。

S そうね。あとは、自分にインスピレーションを与えてくれて、一緒に仕事をしたいと思える人を見つけること!

——では、これまでで最も大きな挑戦は何でしたか?

S 私たちはふたりとも小さいころから音楽の教育を受けてきたわけじゃないの。でも、だからこそこうして自分たちも進みながら、学習することができたんだと思う。そして、その分自分たちしかできない、普通じゃないこともできた。なかには、音楽の知識がある人には見つけられない発見もあったりね。それは大きなチャレンジだったけど、得るものも大きかったわ。

T 僕が思うチャレンジであり、なおかつ学ぶことによって得ることができたことは、1曲に時間をかけ過ぎず、とにかく次に進むということ。

実際、曲を作るときには1曲にいくらでも時間をかけることができて、それは自分の理想に近づけば近づくほどそう思うことなんだけど、その距離はいつまでたっても埋まらなかったりするんだ。だから、そういう時は時間を無駄にせず新しいものを作り始めた方がいい、僕は過去の経験からそれを学んだんだ。音楽を作り始めたときには、僕もよくその壁にぶつかっていたね。

——今回、日本に来るのは初めてなんですよね?

T そうだね。来てみたら街がとにかくキレイで感動したよ。

S それに、街を歩く人もみんな本当にファッショナブル!

T 今日は昼間原宿とかを歩いてきたんだけど、とにかく人が多いのに他の国と違って静かでピースフルだよね。そこはすごく好感が持てるし、日本のことが好きになったよ。

——ふたりのデビュー曲であり、今年グラミー賞にノミネートされた“Drinkee”はポルトガル語の歌詞ですが、それはなぜ?

S それは、ポルトガル語自体がそれだけでセクシーでエロティックなものだったから。そして、私自身すごく好きな言語だったからなの。でも、当時はポルトガル語を自分の音楽に落とし込むために、すごく勉強したわ。言語という分野に関しては、私はすごく関心がある。だって、いろいろな見方ができるし、いろいろな聴き方ができるでしょ。

——ちなみに日本語はどうですか?

S 実はね……次に発表する曲には日本語が入ってるの! 9月にリリースされる予定の新曲は、みんなも知っている植野有砂ちゃんがラップをした曲になる予定よ。楽しみにしていてね。

Photo by Shigeo Gomi

SOFI TUKKER
ソフィー・タッカー
Sophie Hawley-WeldとTucker Halpernによる男女混合ダンスポップデュオ。2014年の結成以来NYを拠点に活動し、ディープで中毒性の高いトラックとポルトガル歌詞が実にホリックなデビュー曲“Drinkee”が大きな話題に。また、第59回グラミー賞最優秀ダンスレコーディングにノミネートされたことでも注目を集めている。