『はじまりのうた』や『ONCE ダブリンの街角で』といった音楽映画で高い評価を獲得しているジョン・カーニー監督の新作『シング・ストリート 未来へのうた』が7月9日より公開されている。

低予算ながら大成功を収めた2007年公開の『ONCE ダブリンの街角で』は、グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァによる主題歌「Falling Slowly」がアカデミー賞歌曲賞に輝き、映画のサウンドトラックはグラミー賞の候補に。

2013年の『はじまりのうた』ではマルーン5のアダム・レヴィーンが歌う劇中歌「Lost Stars」がまたもやアカデミー賞の歌曲賞にノミネートされるなど、とりわけ音楽映画の名手として知られるジョン・カーニー。

新作『シング・ストリート 未来へのうた』はそんな彼が監督・脚本を務め、アイルランドの首都ダブリン出身の自身の生い立ちが反映された自伝的作品となっている。

プロデューサー:アンソニー・ブレグマンいわく、
「物語の舞台は、1980年代のアイルランドのダブリンだ。 この映画の要素の多くが、ジョンの子供時代の体験から来ている。彼は一流の学校からシング・ストリートの学校へ転校した。
(主人公の)コナーが、父親が失業して資金繰りが苦しくなったせいで、洗練された教育の場から荒っぽい世界へ放り込まれたのと同じようにね。

すぐに袋叩きに遭い、弱みを握られ、自分を守るため、そしてかわいい女の子の興味を引くためにバンドを組んだのもジョンの体験に基づいている」
とのこと(『シング・ストリート』公式サイトより引用)。

シング・ストリート_サブ1

物語の舞台は1985年、大不況下のダブリン。
不況で父親が失業し、学費の安い荒れた公立校へ転校することになった主人公のコナーのささやかな楽しみは毎週木曜日に放送される音楽番組「トップ・オブ・ザ・ポップス」で流れるロンドンの音楽、そのミュージックビデオだった。

ある日コナーはモデルを自称する美しい女の子:ラフィーナに一目惚れし、「僕のバンドのビデオに出ない?」と誘い、OKをもらう。
慌てて自身のバンド:シング・ストリートを組んだコナーはロンドンの音楽シーンを震撼させるビデオを撮ると決意、楽曲作りと練習の日々が始まる。

シング・ストリート_サブ3

映画を彩るサウンドは、デュラン・デュランやザ・キュアー、ザ・クラッシュ、ザ・ジャム、ホール&オーツ、a-ha、スパンダー・バレエといった80年代のアーティストによる楽曲群。

劇中のバンドが歌う楽曲も80年代を意識したものとなっており、“Mary’s Prayer”のヒットで知られるスコットランドのバンド:ダニー・ウィルソンの元メンバー、ゲイリー・クラークが作詞作曲を担当。

コナーのバンドのミュージックビデオもまた80年代を彷彿させるものに。
監督のカーニーと撮影監督のヤーロン・オーバックは当時のミュージックビデオを再現すべく、80年代のビデオの構造、デザインそして編集を徹底分析したという。

オーバックは、
「ポリスからマドンナまで、当時ビデオを作っていた全てのアーティストのスタイルを見てみた。
自分たちのビデオを映画のように撮ろうと、映画監督やカメラマンをつかまえようと皆必死だった時代だ」

とコメントしている。

シング・ストリート_サブ2

また、80年代ファッションもまた本作の見どころ。劇中のコナー率いるバンドのメンバーは、新しく知ったアーティストに影響されてすぐにファッションを真似る。
七変化それ自体も面白いが、衣装デザインは当時の若者のライフスタイルを徹底リサーチし作りこんだそうで、細部に至るまでリアリティたっぷりだ。

『シング・ストリート 未来へのうた』はヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほかにて公開中、順次全国公開される予定。

これとは別に7月30日(土)には90年代ヒップホップオタクの青春を描いた映画『DOPE/ドープ!!』(なんとファレル・ウィリアムスがプロデュース)が公開されたり、グラミー賞5冠ながら夭逝した歌姫エイミー・ワインハウスのドキュメンタリー『AMY エイミー』が公開中だったり……この夏は音楽映画三昧だ。

『シング・ストリート』ポスター
『シング・ストリート 未来へのうた』
http://gaga.ne.jp/singstreet/

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配給: ギャガ