先日、EDM界屈指のプロダクション:SFX Entertainment(以下SFX)が破産したことをお伝えしたが、次々に続報が届いているのでここで一度その経緯と今後について考えてみたい。

【過去記事】
EDM業界の最大手プロモーターが破産!『Tomorrowland』、Beatportの未来は?

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そもそも、SFXとはどんな会社なのか。
現在CEOを務め、EDMビジネスの仕掛人とも目されるロバート・シラーマンが設立。2000年に一度はアメリカのラジオ局クリア・チャンネルに数十億ドルで売却したが、2012年に再びSFXを創業。

その後はEDM系のイベントプロダクションなどを次々に買収し、EDM関連の様々な事業を行ってきた。
その買収総額は10億ドル(約1200億円)とも言われ、傘下には世界最高峰のフェス『Tomorrowland』や『Sensation』を手掛けるID&T、そして『electric zoo』のMade Eventに加え、i-MotionTotemQ-Dance、さらには世界最大級の音楽配信サービスbeatportも名を連ねている。

その後SFXは躍進を続け、世界各地でフェス、イベントを展開。
EDMの流行もあり一見業績も拡大の一途を辿っているように見えたが、実はそうではなかったようだ。

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アメリカの経済誌フォーブスによると、
「数年前までは買収を続け、順調な経営が続いているように見えたが、組織化に問題を抱えていた」
と伝えている。

また、一部のアナリストのレポートによればフェスやイベントによって莫大な利益がありながらも高騰するEDMアーティストたちへのギャランティ、フェスにかかる運営費などとの収支があわなかったとも言われている。

そんなSFXの負債は徐々に膨らみ、2015年にはbeatportの支払いが滞るという事態も。
ここ1年で多額の資金注入を試みたり、約3億ドル(約360億円)もの負債を精算し、非上場企業として継続する道を模索するなどしてきたが失敗。
今年1月に破産申告を検討していることを公表していた。

そして、2月1日に本拠とするアメリカ合衆国にチャプター11(連邦倒産法第11章)の適用を申請したわけである。

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では、このチャプター11とはなんなのか。
これは日本で言うところの民事再生法に相当し、再建型倒産処理手続を指す。
それは全ての債権回収や訴訟を一時停止し、事業を継続しながら経営再建に専念できるというもので、比較的に短期間での再建が可能だと言われている。

なお、過去にデルタ航空やリーマン・ブラザーズ、ゼネラル・モーターズといった世界有数の大企業がチャプター11の適用を行っている。

破産と聞いて、会社がつぶれてしまうと思った方も多いかもしれないが、そうではないようだ。
今回はチャプター11の適用を申請したことにより、約3億ドルもの債務が帳消しとなり、SFX自体はこのまま事業を続けながら復活を目指すということになる。
つまり、『Tomorrowland』やbeatportはなくなるわけではないのだ。

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実際、CEOのシラーマンは
「 (破産申請は)当然、期待していた結果ではなかった。
だが、今回の再編によって我々には、SFXになし得ることを実現するための機会が与えられる。会長として、新生SFXに関わっていくことを楽しみにしている」

とコメントしており、SFXは今後速やかに後任のCEO選びに着手し、6ヶ月以内の事業再編とチャプター11からの脱出を目指しているという。

また、海外メディアによると『Tomorrowland』の広報担当者が
「『Tomorrowland』は100%ベルギーチームが運営しているので、この件(SFXの破産)には関係ない」
とのコメントを発表。

4月に開催される『Tomorrowland Brazil』は滞りなく開催されるようだが、ベルギーチームが関わっていないアメリカで開催されている『TomorrowWorld』については、開催できるかどうかいまだ定かでないという。

一方、beatportは通常通りのビジネスを継続するとのことで、以下のように正式にアナウンスしている。

「ストアは今後も営業を続けます。ストリーミング・サービスもストップしません。新曲も毎日追加されますし、新作ビデオも予定しております。
レーベルや供給元への支払いも、通常通り行なわれます。SFXの再編がうまくいくことを心から願うと同時に、エレクトロニックミュージック・コミュニティを形成する全てのファンやアーティスト、DJの方達の為に、最高のミュージック・エクスペリエンスの実現に向けて尽力致します」

一時は様々な憶測が飛び交った今回のSFXの破産だが、それによるシーンへの被害は最小限にとどまったようだ。