近年、スウェーデンのシンガー:ロビンとのユニットで新たなタームを提示し、話題を振りまくロイクソップ。ダンスファンのみならず、全音楽ファンが渇望する彼らの新作「The Inevitable End」がいよいよドロップ。
それは物事の終わりを意味した陰鬱なる世界。そんな今作が意味するものとは……メンバーのスヴェインに話を聞いた。

――今作は、前作「Senior」から約4年ぶり。この4年間はいかがでした?

「前作のリリース後は、常にツアーをしていた。それからロビンと一緒にミニアルバムを作り、並行して今作の制作もしていた。ただ、アルバム制作期間中、僕らは混乱の中にいたんだ。それは僕とトルビョルンの関係という意味ではなく、外部からの力や個人レベルの問題がいろいろとあってね」

――これまでの作品では必ずどこかに明るさ、陽気な部分がありましたが、今作はそれがない。今までになく深く、陰鬱な感じがしましたが、それはその混乱が影響した?

「その通りだ。当時置かれていた僕らの状況が発露した。以前感じていたようなトリッピーな感じやはしゃぐ感じは、今回僕たちの中になかったんだ。
今作は、人生のある時に体験した感情が具現化されたようなものだと思う。作品は意図的に作られたものだが、なるべくして完成したものだ。つまり、実際に感じていない精神状態についての音楽を作ることは僕らには不可能だと言うことさ」

――制作時の気持ち以外に、今作の制作にあたって核となったもの、もしくはテーマは?

「普段、物事には多層の意味を持たせたいと思っている。ただし、今作は叙情性を強調し、今まで以上に露骨で率直な音楽になったと思う。そこには歌詞も大きく影響しているが、過去にここまで露骨なテーマの作品はなかった。
そのテーマもたくさんある。疑惑、否認、選択肢、さらには結果、死の必然性、探索する意思と付随する結果……あとはタイトル通り、全ての物事が迎える終わりについて。それは大きなものだと死、小さなものだと感情の死、物事の関係の終焉。宇宙に終わりがあるかわからないが、(ほぼ)全てのものに終わりがある。それが今作のテーマだ」

――内容的には様々な方とコラボし、これまでになく歌ものが多かったですね。

「理由はたくさんあるが、1つは曲にふさわしい感情を与えるための声が欲しかったからだ。自分達が思いをしっかりと伝えるために声を楽器として捉え、曲の感情や雰囲気を表現するものの1つとして使用したんだ」

――となると、先ほども歌詞が影響してるとのことでしたが、歌詞の重要性は大きかった?

「過去の作品に比べると歌詞のバリエーションは最も多い。それは、僕らが直面していた苦難などを作品を通じて伝えたかったからだ。そのためには言葉が必要で、歌詞もより露骨で率直になったんだ。
あとは、僕らは同じ作品を作らない。前作は完全にインストゥルメンタルで内省的なアルバムだったから、今作は歌、そして歌詞に力を入れた」

――今作はバラエティに富み、統一性があるようでない。複雑な感覚を受けました。

「僕らは特定のジャンルに定まった作品を作らない。ジャンルに縛られず、その間を飛び回る。ただ、感情や歌詞の内容、制作方法などは統一性のある作品だと思っている。
同時に今回はEDM、最近の音楽スタイルに対する反発を意味する作品になってほしいと思っていたんだ。EDMは常にうるさく、挑戦的な態度が感じられる。今作でもそんなモーメントを入れたかったが、それに対応する静かなモーメントも入れたかったし、ダイナミックな作品にしたいとも思っていた。だから、うるさいと感じられる曲もあれば、静かに感じられる曲もある。音楽が呼吸できるだけの空間を与えたかったんだ」

――そんなEDMをはじめとする、昨今のシーンについてはどう思います?

「大きな変化だと感じたのは西欧のダンスミュージックが、アメリカをはじめとする世界のポップシーンに影響を与えていること。同時に、EDMがヒップホップやロック、ポップ、メインストリームに影響を与えていること。
ただ、それは別に気にしない。僕はEDMをかけないからね。エレクトロニックサウンドはたくさんかけるけど。なぜなら、それが僕のバッググラウンドでありルーツだから。何もかもメインストリームになってしまった感はあるが、アンダーグラウンドのシーンは常に存在する。そして、そこが僕の居場所であり、進むべき場所だ。
幸運にも今はシーン全体がすごく多様で、全てが共存することも可能な状況にある。とても素晴らしいと思う」

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©Sónar

――今作のタイトルは「The InevitableEnd」。その意味同様、従来的な形の作品としてはラストアルバムだと宣言しているようですが。

「その通りだ。僕らはアルバムという形式を使って言いたい事は全て言いつくしたし、そこには非常に満足している。でも、それだけに今別れを告げたい、その歴史に泥を塗りたくないんだ。アルバムという形式を愛しているからこそ。
そして、今はその制限から解放された状態でリリースできる可能性を模索している。その中で、もちろんフィジカルなフォーマットのリリースは続ける予定だ。レコードやCDでね。ただし従来的なフォーマット、ルールにはもう従わないよ」