ダンスミュージックをずっと追ってきた身として、夏フェスの出演者の発表の時期となると、「フジロック」や「サマソニ」といった主要フェスは当然ながらも、やはり「SONIC MANIA」(以下ソニマニ)のラインアップがどうしても気になってしまう。

週末にクラブで遊ぶのが習慣になっているパーティピープルの方々、特に『FLOOR』をチェックしている方々は共感いただけると思うが、長年のクラブ通いで、やはりテンションは昼間より夜の方があがる。そういう風に体ができあがってしまっているのだ。

そんな私事はさておき、近年、クラブ事情はネガティブな話題が多かったが、EDMムーヴメントが日本にも本格的に到来して以来、様々な意見があるだろうけど、ダンスミュージックファンの裾野が広がったのは間違いない。
と言うのも、昨年の入場者数を越えているのが一目瞭然の熱気(主催者発表はどうだろうか)。海外のフェスをチェックしているオーディエンスも多いのだろうか、フラワークラウンやビジューブレスレットなどのパーティグッズを身につけている姿も多く見かけて、それぞれが思い思いにフェスを楽しもうとしている姿勢にグッときた。いわゆる「フェスはこうあるべき」とか「○○マナーに則る」みたいな、フェスに存在するある種の暗黙のルールみたいなものも薄れているのかな、といい意味で感じる。

 

kraftwerk1

kraftwerk2

 

“クリスタルマウンテン”では、初っ端からクラフトワークの3-Dライブ。世界中で話題となったライブパフォーマンスであり、いまも変わらぬ4人の淡々と音を繰り出していく姿は興奮ものであったが、位置取りが悪かったのか、あまり立体感は楽しむことができなかった。
続いて向かったのは“ソニックウェイブ”ステージ。このステージは、いわゆるEDM系アーティストがこぞって出演するとあって、終始パンパンのオーディエンスが嬌声をあげつづける狂喜乱舞の様相を呈していた。
“Live For The Night”で一躍シーンの中心アーティストとなったクルーウェラは超がつくほど男前だった。ジャハンとヤスミンの姉妹は、DJセットながら歌うわ、煽るわ、叫ぶわで、攻めまくる。“Live For The Night”も早々に投下し、ミックス、マッシュアップを加えたさながらライブに近いパフォーマンスで、一気にオーディエンスをヒートアップさせてくれた。

 

KREWELLA1

KREWELLA2

ZEDD1

ZEDD2

 

続くゼッドは、“Spectrum”“Clarity”“Find You”などチャートを賑わせた自身の代表曲を連発。“ソニックウェイブ”が入場規制になり、「ソニマニ」のハイライトを作り上げた。
“Clarity”のプレイ時は、他フロアにいても大合唱が聴こえてくるなど、ここでもEDMの浸透ぶりに驚かされたものだが、じつはこの時間帯は“クリスタルマウンテン”のサカナクションも度肝を抜くステージングを披露してくれていた。

 

サカナクション1

サカナクション3

 

昨年に続き2年連続出演となったサカナクションは、これまた昨年と同様にクラフトワークさながらに、メンバー5人がラップトップでいじくるテクノセットでスタート。ワンループに徐々に音を重ね変化させていき、グルーヴでハメる展開は昨年と変わらないが、暗転からバンドスタイルになってからはまるで違った。
まずほとんど歌わない。もはやジャムバンドの領域である。その場で録音した演奏を重ね、徐々に強靭になっていくグルーヴのすさまじさ。ヒット曲のワンフレーズは使用するも、ミニマリズムの手法で解体・構築を繰り返していくパフォーマンスが圧巻のひと言だった。
ポップ層から支持を獲得しながら、これほどまでにダンスミュージック層までも納得させる音を出せるバンドが日本にいるだろうか。サカナクションのステージは、世界中のトップアーティストが集った「ソニマニ」において、もっとも異質でもっともクオリティの高いものだった。

 

サカナクション2

 

クルーウェラ、ゼッド、サカナクションの時間帯に挟まれてしまったDJスネイクに個人的に注目をしていたのだが、このタイムテーブルの都合上、じっくりと観ることができなかったのは残念だった。ディプロにその才能を認められ、リル・ジョンをフィーチャーした“Turn Down For What”がビルボードホット100でも4位を記録する特大ヒット。いまもっとも注目すべきアーティストだっただけに、早い再来日を希望する(個人的な都合ではあるだが……)。

 

KASABIAN1

KASABIAN2

 

ヘッドライナーとして“クリスタルマウンテン”に登場したカサビアンも最新アルバム「48:13」のリリース直後、さらにデビュー10周年というアニバーサリーイヤーということや「グラストンベリー」でヘッドライナーを務めたなどの事象が重なり、大きな注目を集めていた。
コール&レスポンスのサービスもあり、和気あいあいとした空気をつくりつつも、やっぱりカサビアンはカサビアン。気負うことはなく、堂々とした貫録のライヴで終始オーディエンスを魅了。

 

CONGOROCK

DESTRUCTO

YAMATO

the-telephones

NERVO

中田ヤスタカ

MOGWAI

2manydjs

 

振り返ると、やはりオーディエンスの興味はロック勢とEDM勢と好みが分かれていたようにも思えるが、そんなのも全部一緒くたにしてしまう“パーティ感”は昨年以上のものを感じた。
今年日本で控える「ULTRA JAPAN」やアヴィーチーの初来日公演、ファットボーイ・スリムの来日公演などを通じて、ダンスミュージックフェスも非常に楽しみである。