KEN ISHIIとともに、今年世界最高峰の祭典『Tomorrowland』に出演し、さらには『Ultra Singapore』のステージにも立ったPKCZ®。彼らはそこで何を観て、何を感じたのか……。

今回話を聞いたのはDJ MAKIDAIとDJ DARUMA。DJの最新スタイルやダンスミュージック事情まで話が膨らむ中でも、やはり感じるのは『Tomorrowland』の影響。前者は大きな自信と今後の指針を、一方で後者はシーンの未来と確かな気概を再確認。

待望のデビューアルバム「360° ChamberZ」をリリースしたばかりだが、彼らの目線はすでに新たな方向へと向いているようだ。

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——『Tomorrowland』はどうでした?

DJ MAKIDAI(以下、M) 僕は今回初めて行かせていただいて、プレイする前日には現場に入っていたんですけど、そのスケールの大きさと音楽に久々にワクワクしたというか、テンションがアガりましたね。実際にプレイするディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクの“SMASH THE HOUSE”ステージは約1万人ぐらいのキャパで、当日はすごく緊張感がありましたけど、会場に来ている方々の楽しもうという意識にも支えられて、ものすごくいい1時間のセットができました。

DJ DARUMA(以下、D) 僕らは言ってしまえば向こう(ヨーロッパ)では完全に無名のアーティストで、でも逆にそれは音楽の力だけで勝負できるチャンスだなって思ったんです。それはすごくありがたい環境でした。

僕らの前のウメット・オズカンはやっぱりスゴい人気で、最後もハードダンスぐらいのBPMでガンガン盛り上げ、僕らの時間になったらみんな去っていってしまうような状況で。それも当然だと思うんですけど、僕らも自分たちのセットに自信があったし、信じていたので一生懸命構築していったら徐々にお客さんも増えていって。

そしてしばらくすると外が大雨になって、僕らのステージは屋内だったのでたくさんの人が入ってきたんですよ。その後、雨がやんで、僕らのDJがよくなかったら単なる雨宿りになってしまうんですが、みんなフロアに残ってしっかり盛り上がってくれて。

M 信じられるものが自分たちのセットだけ、そんななかで『Tomorrowland』のオーディエンスに受け入れられたことは本当に大きな自信になりましたね。

——かなり貴重な経験だったわけですね。

D 自信とともに、改善点も見えました。『Tomorrowland』自体、本当に素晴らしいというか、あらゆる部分でエレクトロニック・ダンスミュージックの最高峰を感じることができました。

あと、会場で気になったのがメインステージのタイムテーブルの組み方。以前とは変えてきているなって感じて。

——それはどんなところが?

D 客観的に見て、いわゆるEDMのみでメインステージを展開していくのが厳しくなってきているのかもしれないなと。DJのラインナップの流れの組み方がEDMで盛り上がって、その後はトランシーに踊らせ、そしてまたEDMと交互にはさんできていたんですよ。それにはまだお客さんも慣れていないところもあったんですが、縦にノらせるだけでなく横に“踊らせるグルーヴ”を意図的に組み込んできているところに、何か変えようとしているんだなと思いましたね。

——そういったことは今後の音作りにも関係しそうですね。

D 完全にそうですね。

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——今回はやはり普段とはセットも変えていったわけですよね。

D 『Tomorrowland』に来ているヨーロッパの方は若いときからダンスミュージックに接し、なおかつメジャー・ヒットチャートにエレクトロニックミュージックがガンガン入ってきている土壌で育ってきている方が多い、つまり基本的なエレクトロニックダンスミュージック・リテラシーみたいなものが高いと思うんです。そんなお客さんに対して、いかにマナーを保ちながら、日本的なエッセンスを入れられるか、そこが肝かなと思っていて。

海外のダンスミュージックマナーだけでDJをしてしまうと、VERBALの言葉を借りれば“間に合ってます”となってしまう。向こうには、とんでもない数のDJとアーティストがいるわけで。かといってマナーを守らないわけにもいかず、そこにどれだけ日本的なエッセンスを入れられるかがPKCZ®としての態度、カラーに繋がると思って、見た目から考え、音楽もいかにも日本らしいアニメやゲームのエッセンスを入れながら構築していきました。

あとは、最近のトップアーティスト、それこそディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクとかのプレイを見ていて思うのが、メチャクチャ細かくて、何回波を起こせるかがポイントになっているんですよね。

——およそ2分に一度ぐらいの感覚でブレイクを作ってますよね。

D まさにその通りで、でもそれも彼らはマナーの中で構築しているんですよね。個人的には1曲じっくりと聴いてほしい思いはありますけど、今回のセットに関してはそのスタイルで構築していくことを意識しましたね。

M 最近の傾向で言えば、EDMももちろんかかっている中で、往年のヒップホップ・アンセム、それこそスヌープ(ドッグ)から入ってEDMになっていく、っていうパターンもここ数年よく見ますよね。ヒップホップ・オンリーで勝負するのは、やはりそこでのマナー、お客さんの要望とも違うと思うんですけど、僕らはヒップホップを聴いて育ったので正直嬉しいんですよね。なので、セットの中にもあえてヒップホップをアティチュードとして入れてみたり。

——それはPKCZ®としてのルーツであり、ある種の意思表示でもある?

M そうですね。好きなものは好きですしね。今回は向こうで “MIGHTY WARRIORS”のリミックスをかけたんですけど、反応も上々で。今回の『Tomorrowland』でも感じたことなんですが、今の時代やり方は自由で、その中で面白い、飽きないことをやるのが世界ランカーなんだなって。

そして、自分たちのスタイルというか、カラーをしっかりと持っている。僕らも今後PKCZ®カラーのようなものを構築できたらいいなと思います。

D これは個人的な感覚かもですが、ディミトリ・ヴェガス&ライク・マイクやディプロも、みんな“いかに『粋』にふざけられるか”っていう部分で勝負している感じがするんですよね。フロア側は“アホだ、コイツら!カッコイイ!超最高っ!”ってアガる感覚、そのラインが結構ギリギリなんですけど、それが粋でもありトップランカーはそこが神がかってるんですよね。

——確かに、カラーという意味ではそれぞれありますよね。マーティン・ギャリックスもあのエンタメ感はひとつのカラーですし。

D マーティン・ギャリックスと言えば、たまたまなんですけど、僕はカシアスが見たくて彼らのステージに行ったら、そこは結構ジワジワ新し目のハウス勢が踊らせているようなラインナップだったんですけど、まだカシアスの前のDJがやってて、100人ぐらいがめっちゃ盛り上がってて。それで、そのDJがステージから降りてきたら、お客さんがすごく集まって写真とか撮ってて、よくよく見たらマーティン・ギャリックスだったんですよ。彼がシークレットの別名義でハウスDJをやっていて。彼もまた違うことをやりたいと思っているんだなと感じました。

——EDM自体が多種多様になってますしね。

D もう完全に雑食ですよね。

M EDMもそうだし、DJも、アルバムの形すら様々なスタイルが生まれてきていますよね。DJキャレドやカルヴィン・ハリスはいろいろな人をフィーチャリングして新たな作品を作りましたし。僕らも今回はPKCZ®としてこれまでやってきたイベントの中で出会ったアーティストの中から、自分たちにマッチするアーティストに参加していただいて。そういったアルバムもアリなんだっていう多様性は提示できたかなと思ってます。

——今回のアルバム「360° ChamberZ」も本当に音楽性が豊かというか、バラエティに富んでいて。

D ヒップホップはもちろん、EDM、ハウス、テクノ……ベースはクラブミュージックなんですけど、全てポップミュージックとしても機能できる。それは日本では新しい感覚かなと思います。

M ここまで特定のジャンルで括れない作品も珍しいんじゃないですかね。基本的には僕らが通ってきたカルチャーの中から本当にいいと思うものを抽出し、それをPKCZ®らしく表現しています。

D 僕らは、このアルバムに関してはダンスミュージックをフロアに向けて作っているという感じではないです。濃度としては濃いと思いますけど、この濃度で今の日本の音楽シーンで勝負できる環境はめちゃくちゃありがたいと思っています。

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——『Tomorrowland』の前には『Ultra Singapore』にも出演されてましたよね。

D メインステージの出演で我々の次にGTAが立つようなとてもありがたいタイムテーブルだったんですが、シンガポールは日中がかなり炎天下なのもあって、人の集まりが少し厳しかったですね。日本やマイアミと違ってみんな夕方から参加するみたいな流れがあるみたいで。

ただ、『Tomorrowland』に近いセットを持っていったんですが、少ないながらもダイレクトな海外のヘッズの反応はすごくよくて。ある種『Tomorrowland』への弾みになりましたし、自信には繋がりました。

——海外での経験を経て、現在はアルバム「360° ChamberZ」を持って全国のクラブをサーキットしていますが、日本のシーンはどう捉えてます?

M 今回のツアーはアルバムがコンセプトなので、海外でのセットとは基本的に違いますが、盛り上がってくれているのは嬉しいですね。

『Tomorrowland』で1万人を熱狂させる一方で、国内でも盛り上げることができている、そのスケールが僕らの振り幅に繋がると思うんですよね。そして、それが広がればひろがるほど、より様々な人間が参加できるし、僕らの可能性も広がっていくと思ってます。

D 少し前は、Jポップとダンスミュージックのリスナーは乖離していた部分があったと思うんですけど、みんなの楽しみ方も変わってきていると思いますね。ジャンルの垣根もなく、並列に聴いてくれるような方も数多く出てきている。いい流れになっているのは感じますね。

シーンが変わる足音は確実に聴こえているので、一生懸命続けていけば、何かが大きく変わるんだろうなって思います。

——でも、やっぱり一度体験してしまうと海外は意識します?

M 頭の中にはすごくありますね。挑戦して、前例のないことをやるのがPKCZ®だとも思っているので。今回のアルバムもそうですし、海外に向けて作品を発表していければと思ってます。積極的にチャレンジしていきたいですね。

D そうなんですけど、やっぱり『Tomorrowland』はメチャクチャ怖かったですね。久しぶりに足が震えるレベルでした。『Ultra』もそうでしたけど、このふたつはプレッシャーが尋常じゃなかったです。

——そうだとは思いますが、そういった活動が若いDJにとっても刺激になるのかなと。最後に世界を経験してきたからこそわかった、世界にリーチするために必要なこととは?

M やっぱり曲ですね。世界配信出来る曲が必要かな。

D それもヒット曲がほしいですよね。それがあれば1曲で大きく変わると思うので、それは急務というか。

——バウアーの“Harlem Shake”のような?

D まさにそうです、そこに向けて頑張ります。

——でも、そのためにはどんなサウンドが必要だと思います?

M 実際に今考えている曲もあるんですけど、最近のDJスタイルのようにいろいろなジャンルを移行するもの。様々な要素を一括りにできたら、それはそれで面白いと思うんですよね。

D 楽曲に関しては、それこそ僕ら3人が培ってきた音楽の知識と直感力、スピード感さえ保てればとは思ってます。

たとえば、昔流行ったL.A. Styleの“ジェームス・ブラウン・イズ・デッド”をEDMにしたら面白いってずっと言っていたんですけど、寝かせておいたらそれがビートポートチャートの1位になっていたり、今回の『Tomorrowland』でもロバート・マイルズの“Children”のマッシュアップを作っていたんですけどかけなかったら、メインステージで新しいマッシュアップがかかりまくってたり。

そういった時代感の読み方とスピード感があればどこかで世界へのひっかかりが作れる自信はあります。そこは気合を入れて、勝負をかけていく必要性があるのかなと思っています。

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PKCZ®
「360° ChamberZ」

PKCZ®
ピーケーシーズ
DJ MAKIDAI、VERBAL、DJ DARUMA、EXILE HIROの4人よって結成されたプロデュースユニット。2014年より活動を開始し、これまで様々なアーティストのプロデュース、さらにはクラブやイベントで活躍。2017年には海外にも進出し、『Ultra Singapore』、『Tomorrowland』といった世界最高峰のフェスに出演。このたび待望のファーストアルバム「360° ChamberZ」をリリース。