ダンス・ミュージック大国オランダの祭典
『ADE』に見る日本との差

1995年の初回開催時は3カ所のクラブに出演DJ30人程度の小規模のイベントであったが、政府からの援助等も手伝い、年々成長を遂げて来たオランダの『Amsterdam Dance Event』(ADE)。本年度は政府からの援助がなかったにも関わらず、過去最高規模の大盛況となった。75カ国から30万人以上のオーディエンスが参加し、会期中、連日大小115カ所の会場で行われるクラブ・イベントは300種を超え、これらに出演するアーティストの数は2,156名と圧倒的な数字である。10月16〜20日の5日間に渡って行われたイベント内では本格的なカンファレンスも開催されており、150を超えるプログラムが組まれ、ビジネス発展に役立つ国際会議、有名DJやアーティストを招いてのトークイベント、Q&A、学生向けのカンファレンス等、シーンの拡大と育成を支援。

今年3月の新国王即位式典でのアーミン・ヴァン・ブーレン登壇という話題や、2013年度最新の「DJ Mag」誌による「TOP DJ 100」の10位以内に、1位のハードウェル、2位アーミン・ヴァン・ブーレンを筆頭に、自国のアーティスト6名がランクインするというダンス・ミュージック大国へと成長を遂げたオランダ。国策としてダンス・ミュージックをバックアップして来た体制が世界トップDJを数多く輩出し、文化コンテンツの輸出並びに観光収入増大というダブル、いやそれ以上の経済効果をもたらしている結果を見れば、日本政府の行っている「風営法ダンス規制」が如何に世界から取り残され、時代に逆行しているのかを痛感させられる。

●カンファレンス・ピックアップ
『ADE』で開催された150を超えるカンファレンスから、KOTARO氏が興味深いトピックとなった5つを厳選してレポート!

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1:リッチー・ホウティンQ&A
リッチー・ホウティンによるQ&Aでは、会場内の参加者のみならず、Twitterとの連動でオンタイムに質問に答えるという試みが行われた。チェーンストア等の何処でも誰でも気軽に購入できるポップ・ミュージックと、自身が制作している楽曲との違いを、品質とこだわりの製法で決して大量生産ができず、限られた人々の口にしか入る事のない類の日本酒杜氏のストーリーを語り「自分の創るエレクトリック・ミュージックの楽曲制作と、日本酒を造る杜氏には同じスピリットを感じる」と、答えた。ある意味会期中最も印象に残った発言だった。

 

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2:How Deep Are Your Roots?
このカンファレンスには、大御所勢揃い。ダフト・パンクのアルバムプロデュースで話題となり、先日のWire13にも出演したGiorgio Moroderや、そのアルバムGet Lucky他3曲にギタリストとしても参加しているNile Rodgersらが登壇。自身の音楽的バックグラウンドに密接に関わるディスコサウンドについて貴重な話を展開。Nileは後日別のカンファレンスで即興でGet Luckyを披露し、会場を大いに盛り上げた。

 

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3:Hardwell Interview
ADE開催直後に発表された2013年度のDJ Mag Top 100にて1位の座を獲得したHardwellのインタビュー。若干25歳で世界の頂点に輝いたオランダ期待の星、流石の人気ぶりはカンファレンス開始前から長蛇の列で入場制限がかかる。最前列には小学生が憧れの羨望で彼の話に耳を傾けていた。ダンス・ミュージックに限らず、もはや国民的アイドルと言ったところか…。

 

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4:Future of DJing
オヤイデのケーブルをエンドーズメント契約で使用している事でも知られているDave ClarkeらDJ陣と、Beatportのエンジニア等が登壇して語られる、機材に関するトピックは、デジタル機器の進化と共に移り変わるDJ機材の未来。もはやスマートフォンでのDJが出来てしまう世の中で、ターンテーブルとミキサーにこだわるのか!?それぞれの立場から様々な意見が飛び交う。

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5: Focus on Eastern Asia
まあ、言ったら極東最前線!日本、韓国、中国、台湾のダンスミュージク事情のディスカッション。日本の『ダンス禁止問題』ここでも注目の的。世界に恥をさらす悪法は改正されるのか!?近隣アジア諸国の状況も解り、非常に意味のあるカンファレンスでした。