来日直後の海外アーティストに突撃インタビュー! アート・デパートメントに続く第二弾は、UK出身のアンダーグラウンド界の巨匠ニック・ザ・レコード。

ここ日本には1990年代初頭よりたびたび来日し、クラブパーティはもちろん、『Life Force』や『TAICOCLUB』、そして『Rainbow Disco Club』など名だたるイベントに出演。ディスコを中心にハウス、テクノ、ジャズ、ファンク、ソウルなどあらゆるサウンドに精通する真なるマエストロのプレイに多くのファンが酔いしれてきた。

一方で、今や再興の兆しを見せるレコードの世界屈指のコレクターとして名を馳せるニック・ザ・レコード。そんな彼が見た日本のレコード市場とは……。

東京では約6年半ぶりとなる超ロングセット、オープン〜ラストまでプレイする2月23日(金)のパーティを前に、音楽のこと、レコードのこと、そしてプライベートまで、いろいろと話を聞いてみた。

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——確か、初来日は1993年。今からもう25年前になりますが、今回の来日で何回目になるか覚えてます?

それは数えきれないほどだね……一時は3ヵ月に一度は日本に来ていたこともあったから、かれこれ100回は超えているはずさ。

——日本で必ずやることはありますか?

パーティをして、(レコードを)ディグして、おいしいご飯を食べる。ただ、毎回のことだけど、時差ボケにやられるのがちょっとツラいかな(笑)。

——ディグはどこで? お気に入りのレコードショップはありますか?

新作なら渋谷のLighthouse Records。旧作や中古ならディスクユニオンだね。

Lighthouse Recordsにモリヒロというスタッフがいるんだけど、彼は本当に素晴らしいね。僕の日本語が拙い分、深い音楽の話ができるわけではないんだけど、それでも彼は僕の趣味を熟知していて、毎回素晴らしいレコメンドをしてくれるんだ。

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——生粋のディガーでもあるあなたが見る、日本のレコード市場は?

日本ではコンスタントに素晴らしいセレクションと出会うことができる。レコードに関する長い歴史があるし、強力なレコード収集文化があるからね。日本は常にいいレコードに溢れていると思うよ。

——過去に日本で見つけたレアなレコードにはどんなものがありますか?

初来日したときに探していたのはディー・ディー・ブリッジウォーターのような、日本限定でリリースされているクラシックジャズの名盤だったんだ。ただ、それは需要も高く、なかなか見つからなかったんだけどね。

でも、その代わりに中古レコードショップで見つけたのは、僕のお気に入りの一枚でもあるハービー・ハンコックの“Dedication”。これは1974年に発売されたソロLPで、収録曲のうちの2曲がシンセを多用したテクノ調の曲になっているんだ。

他には、1990年代初頭にレムリアのLPが中古で数百円で売られていたのに出会ったときは本当に驚いたね。当時は日本でも需要があった作品のはずなのに、ものすごく安く売っていたからさ。

——日本のレコードショップはアジア諸国と比べてどうですか?

日本以外では、韓国のソウルでしかレコードを買ったことはないかな。それも、数年前にビザの関係で日本を一時的に出国して、韓国で36時間過ごしたとき。そのときは80年代のKポップとディスコカバーの楽曲が印象的だったね。

日本のレコードショップの文化はアジアでも随一。比べものにならないと思うよ。

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——近年、1970〜80年代の日本の楽曲をダンスエディットした作品やジャズやファンクのリイシューが海外のレーベルから発表されています。そういった日本語曲のリエディットについて、あなたはどう思います?

個人的に、日本のディスコや80年代の楽曲が今注目されていることは、素晴らしいことだと思う。ディガーやリエディットしたアーティストに感謝しないとね。

おそらく、日本のクラブで吉田美奈子の“TOWN”を初めてかけたのは僕だと思うんだけど、そのときの反応は今でも覚えている。すごく特別なものだったからね。その後、僕はそれをイジャット・ボーイズのダンに1枚売ったんだ。彼も日本でよくプレイしていたからね。当時の僕にはちょっとチージーな感じがしたんだけど、それが今やヨーロッパでも人気のトラックになっている。その変化には本当に驚かされたよ。

——お気に入りの日本人アーティストはいますか?

まずは細野晴臣。彼はいくつもの素晴らしい楽曲を発表していると思う。

日本人DJに関しては、正直なところあまり彼らのプレイを聴いたことがないんだ。というのも、いつも僕がロングセットをやってしまっているからね(笑)。小さいバーなんかでは聴いたことがあるけれど、それはクラブとは話が違うし、なんとも言えないな。

しいて挙げるなら、大阪のレジェンドでもあるAGEISHI。そして、DNTがいいよね。あとは、LIFE FORCEのinnaやpAradiceが素晴らしいと思うけど、最近は聴けてないね。

——では、日本人以外で、今注目しているレーベルやアーティストは?

それを挙げるとキリがないね。数多くのレジェンドが今なお素晴らしい楽曲をリリースしているからさ。

ただ、そのなかでもペペ・ブラドックは必ずチェックしているよ。先日、彼の新作を聴いたんだけど、僕の中ではあまり響かなかったんだ。でも、そのときハッと思った……これはペペの作品で、それを理解できないというのは、僕が彼の感性に合わせないといけなんだってね。

——レコードショップ巡り以外の日本での過ごし方は? 例えばお気に入りの日本食とかあります?

もちろん、日本食は大好きさ。日本に滞在しているときは日本食しか食べないし、逆に海外では日本食を食べないようにしてる。多くの場合、その味に失望してしまうからね。

お気に入りのお店もいくつかあるけれど、申し訳ないがそれは教えられない。なぜなら、それらは全て座席数が少ないお店だから、予約で埋まってほしくないんだ(笑)。

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——いよいよ23日(金)、表参道のVENTでプレイされますが、過去には日本で10時間以上にも渡るロングセットを披露したこともありました。今回は……。

正直わからない、僕は普段会場やオーガナイザーが止めるまでプレイするから(笑)。お客さんから観ると僕が疲れたから終わる、そう思われがちだけど、本当はいつももっと続けたいんだ。でも、全ては会場とスタッフ次第。そこは自己中心的になってはいけないからね。

——最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

本当に感謝しかないよ。いつも、オープンなマインドとハートで踊ってくれてありがとう。そして、今回のプレイも楽しみ! その一言に尽きるね。

撮影協力:Lighthouse Records
Interview: Naoki Serizawa
Photo: Tasuku Amada

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EVENT INFORMATION

Nick the Record - exclusive set -

2018年2月23日(金)

OPEN 23:00

VENT(Omotesando)

¥3,500(当日) ¥2,500(前売)

Nick the Record / Sisi / Yoshinori Hayashi / KITONOA

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