90年代後半からダンスミュージックのフィールドでDJ、プロデューサーとして活躍してきたDr.Shingo。そんな彼が、本名のSHINGO SHIBAMOTO名義でVJのMMMと組み、新たなる表現に挑んだ。

それは、LED BALLとモジュラーシンセを要いた“音と光”のインスタレーション。3次元立体空間における光の動きを表現することで事象のミクロとマクロの世界を考えることをテーマとした、その名も「LIGHT / WAVE」。

『MUTEK.JP』で、新たなる領域に踏み出した彼にそのクリエイションの着想について話を訊いた。

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——今回のプロジェクト「LIGHT / WAVE」で伝えたかったことは?

ヴィジュアルとサウンドの表現の原点回帰された世界観を感じてもらいたいと思いました。
光と音は、どちらも波で現象を説明することができます。私たちが目にすることができる世界は光がなくては何も見ることができません。その光をLED BALLで表現し、その動きや色に対してモジュラーシンセで音を被せ、原始的な光の群と生々しくシンプルな電子音とを掛け合わせることで、音と光の原点回帰された世界観を意識しました。

——このプロジェクトの着想はいつ頃、どのようにして生まれたのですか?

この発想は、DJとして約17年間活躍してきて、このカルチャーに敬意を持ち、これからもそこに身を投じていたいと願う一方、ここ数年DJ以外の表現方法にも興味を持つようになりました。
そんな時に、アートフェスティヴァル『MUTEK』の存在を知りました。そして、カナダのモントリオールで本場の『MUTEK』を体験し、世界にはこれほど自由にアートを表現しているアーティストがいることに衝撃を受け導かれました。

日本に帰り、旧知の仲であるVJのMMMに“誰もまだチャレンジしていないフォーマット”のプロジェクトをやろうと持ちかけたところ、彼がLED BALLシステムを提案してくれたんです。そして、デモの映像を見たときに直感的にこのシステムを使って作品を作ろうと決めました。
LED BALLを使ってパフォーマンスをしているアーティストは既に存在しますが、立方体のLED BALLシステムと電子音楽をかけ合わせたのは僕たちが世界初です。

——実際にパフォーマンスを終えて今はどんな気持ちですか?

ライヴが終わった直後の気持ちとしては、新しいフォーマットを作り上げられたことに大変満足しています。MMMも僕も“やりきった”という感じはしてますが、既に発表したビデオ作品や『MUTEK.JP』で発表したライヴは挑戦の第一歩にすぎないので、今後はこれまで培った独自のノウハウを発展させて、より面白いと思ってもらえるようなアートパフォーマンスを作り上げたいです。

SHINGO SHIBAMOTOとMMMの挑戦はまだ始まったばかり。
近い将来、彼らが新たなるアートフォームで僕たちを再び驚かせてくれることを期待せずにはいられない。そして『MUTEK.JP』のような、尖鋭的な音楽とヴィジュアルを合わせた、クリエイティブで実践的な試みが行われるフェスティバルやショーケースが日本のシーンにも根付くことを強く願っている。

MUTEK.JP レポート
1|未知との遭遇の数々 右脳を掻き回す新体験がそこに
2|実験音響の最高権威Raster-Notonが語るクリエイティビティの理念とは?