“奇才”といううたい文句も思わず納得。
マシュー・ハーバートの新作がとにかくヤバい!
これまで数々の名作を生み出し、ビョークをはじめとする様々なアーティストたちのプロデュース&リミックスを行うなど、(真面目な)作品で世界的にも高い評価を受ける一方、コンセプチュアルというか実験的というか……とにかくエキセントリックで、ある種変態的ともいうべき行動&制作で度々世間を騒がせてきたハーバート。
ときに日常に溢れる生活音(ラジオや洗濯機、トースターの音など)を取り入れアルバム『Around the House』を作ったり(しかもハウス!)、とある豚の一生をテーマにアルバムを作ったり(ONEシリーズ)。
さらに、レディオボーイ名義ではマクドナルドやギャップといったファスト系の既製品を破壊した音をサンプリングしてパフォーマンスしたり(政治やグローバリズムへの提議)、最近では食物性のレコードを作り(チーズやポテト、玉ねぎなどで)、それを実際にプレイし、その場で食べたりプレゼントしたりするパフォーマンス(Edible Sounds)をしたり、とにかく破天荒極まりない。
○○と天才は紙一重とよく言うが、まさにその言葉がぴったりのアーティストだ。
そんな彼の新作『A Nude (The Perfect Body)』が7月1日に発売となるのだが、今作は果たして真面目かそれとも……。
それがなんと、彼が食べて、寝て、自慰行為して、う○ちする、そんな人間としてはごく当たり前の行動の中で生まれる音のみで作られたとんでもない作品に。
サンプリングという観点においては、それこそ他を寄せ付けないセンスであらゆる音を取り込み、それをひとつのアートフォームへと変換し、これまで誰よりも評価されてきた彼だが、今回のコンセプトはまさにその極み。
上記の音の他にも体を動かす際の音など、生きる上で自然に人体から生まれる音だけで構築された、タイトルよろしく“ヌード”な作品となっているのだ。
手を叩く音や体の一部を使って意識的に音を生み出し、いわば体を楽器として扱うことはあっても、ここまでヌーディーな(人体の無意識な音の体系化した)作品は音楽史上なかったはず。
それが一体どんなサウンドになっているのか、気になる方も多いことだろうが、アルバム発売を前に現在は収録曲全曲視聴がスタート。
収録時間2時間に及ぶ、彼の大作をぜひ一度聴いてみてほしい。
ちなみに、ハーバートは今作を将来的には美術館で展示することを視野に入れているという。
ということは、これは音楽というフォーマットの中で生まれた、ある種彼ならではの身体表現でありインスタレーション。
こと現代美術においては様々な形式の作品が生まれているが、今作は音楽家ハーバートが最もプリミティブな自身の体のみを使った表現方法の極地と言えるだろう。
なお、ハーバートは今夏開催の『SUMMER SONIC 2016』の初日深夜に幕張メッセで行われる『HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER』への出演が決定しているが、そこで今作がどういった形で披露されるのか。
自らヌードとなって、自主規制ギリギリ(もしくはアウトな)パフォーマンスを見せてくれるのか、それもまた楽しみで仕方ない。
Matthew Herbert
「A Nude (The Perfect Body)」
Accidental / Hostess
7月1日発売
EVENT INFORMATION
『HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER』
2016.8.20.SAT
OPEN/START 22:00/23:15
幕張メッセ
¥8,500
Dinosaur Jr., Animal Collective, Deerhunter, Matthew Herbert, Temples, Savages, Asgeir, John Grant