現行のシーンで今、世界で最も輝いている“U25”と言えば……2016年のDJ Mag「Top 100 DJs」で見事1位を獲得したマーティン・ギャリックスに他ならないだろう。彼がいかにして頂点へと登り詰めたのか、その軌跡を改めて振り返ってみたい。

1996年生まれの弱冠20歳ながら“世界一”。それもデビューから約4年で。これほどセンセーショナルなシンデレラストーリーは、まるで漫画の世界ようだがまぎれもない事実。その成功潭には早くもMTVが目をつけ、2016年ドキュメンタリー作品『The Ride』を制作。20歳という若さで自身の歴史が世界に届く、そんなDJ は今だかつて見たことがないし、他のジャンルにおいてもそうそういない。

そんなマーティンのこの20年を振り返ってみると、まず出身地からして幸運だ。
なにせ彼が生まれたのは世界屈指のダンス大国オランダ。ティエスト、アーミン・ヴァン・ブーレン、そしてハードウェルと「Top 100 DJs」で世界一に輝いたDJを3人も生み、その他にも数多くのスターを輩出。

それだけに音楽との出会いも早く、彼は幼少期に興味を持ち、2004年には世界的祭典でのあるアーティストの姿を見て、当時8歳でDJの道を志すことに。そのアーティストは、同郷の大先輩ティエスト。DJシーンでも大きな快挙となった彼のアテネオリンピック開会式でのプレイにマーティンは大きな衝撃を受けた。

そこからDJの練習に励み、なんと13歳で地元のクラブでDJデビュー。しかも、本人曰く、当時のギャラは300€(約35,000 円)だったらしい。。

その後、オランダの名門音楽養成学校Herman Brood Academieに通い、プロデューサーとしての知識を学ぶ。基礎を疎かにしない、それも大事なことなのだろう。

そして、2013年にその才能は開花。当時、EDMが世界中で大きな盛り上がりを見せていたが、それもまたマーティンを後押しした。ダンスミュージックが誕生して以来、史上最強のムーブメントとも言われるEDMが拡大していく、その絶好のタイミングで彼はシーンに現れたのだ。

もはや言わずもがな、“Animals”の大ヒットでその名前を世界中に知らしめたわけだが、そのとき彼は17歳。その若さも話題性を後押しし、世界中からギグのオファーが舞い込むことに。
すると、翌年の「Top 100 DJs」に初登場40位という快挙を成し遂げ、以降もアッシャーをフィーチャーした“Don’t Look Down”やウィークエンドの代表曲“Can’t Feel My Face”のリミックスに加え、自身がDJを志すきっかけとなったオランダ屈指のスターDJティエストとの“The Only Way Is Up”やアフロジャックとの“Turn Up The Speakers”、ディミトリベガス&ライクマイクとの“Tremor”などビックアーティストとコラボレーションを重ねてきた。
同時に数多のビッグフェスに出演。件のランキングでも2014年に4位と大躍進。その翌年にはベスト3入りを果たし、2016年はいよいよ王者に。

DJを始めて約7年。13歳当時のギャラは今や千倍以上になっているはずだ。ダンスミュージックシーンにはこれほどの大きなチャンスがあり、20歳にして成功を得ることができる。それは多くの若者に夢を与えることだろう。
そして、彼がティエストに憧れたように、彼を目指し新たなスターが誕生していく。それがこの世界の大きな魅力であり、彼らにとっての醍醐味でもある。

ちなみに、昨年の「Top 100 DJs」にランクインしたアーティストの中にもマーティン同様、25歳以下のアーティストは数多く、8位のオリヴァー・ヘルデンスが21歳。20位のアレッソや26位カイゴが25歳で、83 位のジョーズや87位サム・フェルドは23歳。その他にも多くの“U25” が活躍していることを最後に伝えておこう。

photo: ©ULTRA JAPAN