ハウスを軸にあらゆるジャンルへと触手を伸ばし、絶えず上質なサウンドをスウェーデンから世界に送り続けてきたレーベルLocal Talkが設立から5年半を迎え、コンピレーションアルバム「LOCAL TALK 5 1/2YEARS LATER」をリリース。

そして、その記念碑的作品にMidori Aoyama率いる国産気鋭ハウスレーベルEUREKA!がコラボ。彼らが本作の日本盤を制作したのだが、そこになんと日本のクラブジャズシーンの第一人者・沖野修也が新たに楽曲を提供。

決してないとは言わないが、普通にはあり得ないこの組み合わせ。それはなぜ誕生したのか。その理由を探るとともに、さらには本作の仕上がりについて、今回はMidori Aoyamaと沖野修也、さらにはLocal Talkの主宰マッド・マッツにもスカイプで参加してもらい鼎談を敢行。本作を機に繋がった3組だが、なんとそこで新たな胎動が……。

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——まずはマッツに伺いますがLocal Talkを設立して5年半、今の率直な感想は?

Mats 僕は今まで様々なレーベルを手掛けてきたけど、Local Talkはよりシンプルにしたかったんだ。それはロゴも然り。今のところ昔思い描いていたようにうまくいっているよ。

——設立当初と今、シーンにどんな違いを感じますか?

Mats 今はシーンが大きくなったものの、当時の方がよりコアなコミュニティがあった。ポテンシャルは感じるけど、今はまだどこか小さく感じてしまうんだ。ただ、いい方向には向かっていると思う。あと、以前はヴァイナルがもっとありふれていたね。

——やはりヴァイナルと今全盛のデジタルでは違いますか?

Mats セールスと人に対するリーチ力が全然違うよね。デジタルは簡単だから。あとはストリーミングが大きくなってきて、そこでお金を得ることもできる。やっぱり今はデジタル化の傾向が強いよね。

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——沖野さんはそのあたりどう思いますか?

沖野修也(以下、沖野) 僕はマッツと状況が違い、日本ってストリーミングは全然ダメ。ヴァイナルもコストがかかるし、今の日本の状況はすごくよくないと思います。一方でヨーロッパは先にいっている感じがしますね。CDはなくなり、ストリーミングサービスも普及し、さらにはDJがヴァイナルでプレイする。羨ましい限りですが、その背後にはマッツのように頑張っている人がいるから結果が出ていると思うんです。僕らも頑張らないといけないですよね。

Mats 日本のシーンは、今はまだ小さいことがポイントなんだ。裏を返せば大きく成長することもできるからね。そのための努力は僕も一緒にしていきたいと思ってる。

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——そもそもMidoriさんがLocal Talkを知ったきっかけは?

Midori Aoyama(以下Midori) DJスティウの「I Want」というEPですね。それを聴いていいレーベルだなと思って。当時、僕はラスマス・フェイバーと曲を作ったりしてたんですけど、彼にLocal Talk好きなんだよねって言ったら、拠点が同じスウェーデンなこともあってマッツのことを知っていて。紹介してくれたんです。それが2014年で、その後いろいろと話をしていくうちに日本でツアーを一緒にまわりました。

——沖野さんは?

沖野 Bassfortの“Moon Shadow”という曲があって、それで知りましたね。ただ、当時はマッツがやってることも知らずに。

Mats それはLocal Talkのファーストだ!

——先日はLocal Talkの5周年と半年を記念したコンピ「LOCAL TALK 5 1/2YEARS LATER」が発売され、その日本盤でMidoriさんが主宰するEUREKA!とコラボ。その経緯を教えてください。

Mats ツアーを繰り返すうちに仲良くなり、Midoriに僕の知識を伝えていったんだ。そして作品ができた。彼は今若い人とベテランのいいブリッジになっていると思うね。

Midori 僕はもともとマッツがRaw Fusionをやってたことも知らず、地方のDJやオーガナイザーが彼を尊敬している姿を見て感銘を受けたというか。たくさんの面白いことをやってきているのを知り、それを自分でもやりたいと思ったんです。

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——本作の仕上がりはいかがですか?

Mats もともとLocal Talkは90年代ハウスのレーベルに思われることが多かったけど、実際はいろいろなハウスをやっているんだ。そして、今回はその様々な側面を表現したかった。僕の中でもかなり音楽的なものに仕上がったと思うよ。

——CDのアートワークはブレイズのアルバム「25 Years Later」のオマージュですよね。

Mats あの作品は僕の中でも人生のトップ5に入るんだけど、本当にいろいろなハウスが入っているよね。そこがLocal Talkのコンセプトと同じだと思ったんだ。だから、今回は僕らなりの「25 Years Later」を昇華させた。それはもちろんリスペクトでもあるんだ。

沖野 今まで過去の作品をまとめたコンピレーションはありましたけど、これは新しい作品を集めていて、まるでLocal Talkの未来を映しているようでもある。ここから先どうなっていくのか本当に楽しみです。

Mats 僕自身、昔からひとつのスタイルにとどまることができなかった。だから、今こうしてひとつのハウスレーベルを長くやっているのは驚きだ。ただ、それは今年を機に様々な方向に向いていく可能性が高い。もしかしたら、数年でハウスレーベルではなくなってしまう可能性もあるんだ。シーンが成熟していく中で……例えばBOILER ROOMが当初ハウスとテクノだけだったものが拡大したように、そして聴く人の好奇心も増しているように、僕らも音楽を縦横無尽に楽しみたいと思ってる。

——本作にはDJスピナやシンバッドといったベテランから多くの若手まで、多種多様なアーティストが参加していますね。

Mats DJスピナに関しては10年来の友だちなんだ。そして、今回のことを彼にお願いしたら、Local Talkらしい曲をくれたから収録した。僕はもし気に入らなければ、どれだけビッグネームでもリリースしない。ただ売れるからっていうのは嫌いなんだ。あとは、ジェイミー3:26はレーベルにとっていいアンバサダーになる可能性を秘めている。ただ、そんな場合でもやはり最終的には楽曲次第だけどね。

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——今回の日本盤には、ボーナストラックとして沖野さんの“Stand Up”のセルフリミックスが収録されていますが、その経緯は?

Midori マッツにボーナストラックを入れたいと相談したら、日本のアーティストがいいんじゃないかと言われて、いろいろ探したんですよ。それで、あるとき沖野さんがDJ KAWASAKIさんのラジオ番組に出ているときに、今回のデモをかけてて。それを聴いてすぐに連絡しました。そして、最終的にはアルバムに沖野さんの顔も入れて。

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Mats 今回は日本盤だし、日本人が作ったものが重要だと思ったんだ。それも日本を代表するアーティストのね。

沖野 この曲はもともと遊びで作ったリミックスで、リリースする予定はなかったんですよ。完全に僕のDJ用なんですけど、そこにMidori君が反応して。ただ、出すまでにMidori君とマッツのアドバイスをもらってずいぶん変わりましたけどね。ふたりはもっと生っぽいフィーリングがいいって言うので。マッツとは今後ジャズプロジェクトの話もあるので、それとは違うものにもしたいですし。

——そのジャズプロジェクトとは何ですか?

Midori これは僕の中でずっと温めていたアイディアなんですよ。Local Talkの音源をリアルなジャズミュージシャンがアレンジするとどうなるのか、それに、MatsもLocal Talkはハウスだけじゃないって言ってますし。

沖野 その話はもう少しで制作が終わるから待ってくれ(笑)

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——Midoriさんにとってマッツはどんな存在ですか?

Midori 僕はマッツと一緒にいて、彼の音楽を聴いたり、話したりしていると自分がDJとして急激に成長していくんですよね。たぶん、まわりの人との成長速度が3倍くらい早いと思う。とにかく一緒にいることでいろいろなことが吸収できて、それが何より意味のあることだと思ってます。

——マッツに伺います。Local Talkは新人の発掘に定評がありますが、どのようにして見つけているんですか?

Mats 基本は知り合いや友人からの紹介が多いね。ただ、レーベルが大きくなるにつれデモも送られてくるようになった。ただ、それがほとんどよくなくて(笑)。そこから新人を発掘することは今のところないだろうね。

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——ちなみに沖野さんとMidoriさんが最近注目しているアーティストは?

沖野 アトランタのバイロン・ザ・アクエリアスというキーボードを弾くトラックメイカーですね。ジャズフュージョン風味というか、昔の音楽をすごく聴いてる。僕よりも若いんですけど共通の感覚があるので一度リミックスを頼むか、一緒に曲を作ってみたいですね。

Midori 僕はイギリス人アーティストが好きで、今はコーム・Kですね。

Mats 今度Local Talkからリリースするジャックス・メディシンというユニットがいるんだけど、それは沖野さんにおすすめだよ。彼らはターボ・ジャズとパーカー・メディシンのコンビなんだ。

Midori パーカー・メディシンは新曲が出るみたいだけど聴いた?。

Mats その曲は僕らが聴いていらないっていった曲だね(笑)。ちょっと白くて、どこか違ったんだ。そしたら他のレーベルから出てた。でも、それはよくあること。Local Talkで最初にリリースしたアーティストが他のレーベルから出すこともね。

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——最後に今後の展望を教えてください。

Mats Local Talkからはこのコンピ以外にも、マルセル・ルーラー、テレンス・パーカー、DJスピナ、そしてジャックス・メディシン。さらにはカッドヘッドにクラックザット、全ての作品が夏の終わりまでに出せる予定さ。

沖野 僕は今Kyoto Jazz Sextetというジャズのアルバムを作っているので、それが完成したらマッツに聴いてもらって、ジャズプロジェクトができればいいなと思ってます。そして、その後はKyoto Jazz Massiveをやりたいと思っているんですよ。世間があっと驚くアーティストとのコラボも予定しています。年内にできれば……。

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Midori EUREKA!としては、さっきマッツが紹介した本作に参加しているジェイミー3:26の来日が決まりました。あとはまだ確定していませんが、夏以降でマッツとツアーもしたいと思ってます。Local Talkとは引き続き一緒に面白いことをしたいと思っていて、その中でEUREKA!2枚目のヴァイナルや新作CDもリリースできればと思ってます。

Ron Hardyの意志を継ぐ、シカゴアンダーグラウンドシーンのアイコンJamie 3:26とKamma & Masaloの来日ツアーが決定!

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EVENT INFORMATION

EUREKA!

2016.4.7(金)

OPEN 22:00

Contact Tokyo

Door¥3500 W/F¥3000 GH S Member¥2500 Under23¥2000 Before 11PM¥1000

<Studio> Jamie 3:26 / Kamma & Masalo / Midori Aoyama / sio
<Contact> DJ Mitsu the Beats / Kenji Endo / hiroshi kinoshita / KDT / Spody / Nari

インフォメーション

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V.A
『Local Talk 5 1/2 Years Later』

EUREKA!
https://eureka.buyshop.jp/items/5589214