この6月、新木場ageHa自慢のサウンドシステム「オクタゴン」がリニューアル!

去る6月9日には試聴会が行われ、多くのアーティストやDJ、業界関係者立ち会いのもとその実力が明らかになったのだが、今回はそこに参加したKO KIMURAに新型サウンドシステムについてインタビュー。

果たしてageHaの新たなサウンドシステムはいかに機能するのか、
そしてダンスミュージックにとって重要な音の要素とは何か……

サウンドシステムの話に留まることなく、ダンスミュージックと理想の音、そしてクラブ・イベントとDJの関係……様々な話へと飛び火しつつも、そこには30年に渡り一線で活躍してきた彼だからこそ言える、含蓄のある言葉の数々が! 必見!

P1050525

——いきなりですが、リニューアルしたageHaのサウンドシステムの率直な印象は?

以前から都内でも最も分離のいいクリアな音が出てましたけど、新しいサウンドシステムになってそれがさらに際立ったと思いますね。

ダンスミュージックで重要なのは低音、高音、中音がそれぞれ分離が良く聴こえ、クリアで透明感があり、かつ音圧があること。

ageHaは以前からすごく特徴があったと思うんですが、それがより一層クリアになった気がします。

今回の視聴会ではまだEQも完全ではなく、フラットな感じだったので僕の大好きな高音が曲によっては出てなかったけど、それは調整すれば自然に出せると思うので楽しみ。

とにかくポテンシャルはかなり高いと思います

——リニューアルしたことでこれまでと変わる部分はどんなところでしょう?

とにかく音がクリアなので、デジタルであればデータの優劣次第で音が全然変わる。
WAVなのかMP3なのか、MP3でもビットレートでどのぐらいのものを使っているかでね。

そもそも普通にリスニングで聴いていい音とダンスに向いている音というのは違っていて、MP3でもWAVと比べて、その軽さが逆に場所によってはダンス向きのいい方向に作用することもあるんですよ。

だから、そのあたりはより意識しないといけないでしょうね。
ただ、大前提としてネットから拾ってきたような(音質の悪い)低ビットレートのMP3音源なんか使ったら、確実にわかってしまうので絶対にダメ。

いくらミックスがうまくても、いきなり音質が変わったらフロアのテンションは落ちますし。

P1050414

——新しいシステムはデジタルに特化し出力の高さが増したそうですが、それはどう作用するんでしょう。

DJとしては元の音源からスピーカーまで行く経路での音の劣化はできる限り少ない方がいいし、レイテンシーも少なければよりDJがやりやすくなると思います。

あとは、個人的にはアーティストが本当に作りたかった音質というのは、マスタリングスタジオから直で届けられるデジタル音源が一番近いと思うんですよ。

アナログはレンジが限られていて、カッティングの際に高音を原音のまま入れるとどうしても歪んでしまうことがあるし、すべての音域は入らない。

ただ、レコードという形態が逆にクラブでは床の音を拾って厚みがあるように聴こえたり、優しい感じになるんですけどね。

一長一短あるわけですが、本来の音の再現性で言えばデジタルの方が高い。そしてageHaはそれができる場所なんだと思います。

クリアでいい音というか、まるでハイエンドのオーディオのような感覚なので。
ダンスするにはもう少し攻撃的な方がいいと思いますが、それも調整次第でなんとかなるんじゃないですかね。

——DJとしては、クリアになったということはその分その人の技量もわかりやすくなるってことですよね。

そうですね。DJが下手だったらすぐにわかっちゃいます。

それは音質の面でもそうだしミックスもそう。
ひとつひとつの音の粒が出やすいから、ちょっとでもミックスがズレてるとわかっちゃうんですよ。

かつて(伝説のミキサー)UREIが良かったのはそれを曖昧にできたから。
あれは本体の音がいいというよりは、2枚の音が混じってDJが上手くなった様に感じるほどミックスしやすかったのでDJが大好きだったのだと思います。

それに、今回は視聴会でパイオニアの新しい機材「TOUR1」も発表されて、さらに音がよくなるわけですし。
ミックスの良し悪しはもうバレバレ、ある意味DJ泣かせかもしれませんね(笑)

——今回のリニューアルで特にメリットのあるジャンルは?

視聴会ではいろいろな人が曲を持ち寄ってかけていたんですけど、そこで聴いた限りではEDM全般の電子音楽は合いそうですね。

レゲエやヒップホップでも試聴できましたが、それはちょっと忙しく感じたというのが率直なところです。

——ハウスなどは?

曲によってはすごくカッコ良く聴こえる曲があると思うんですが、でも透明感がありすぎるから、曲のチョイスによっては音の隙間が聴こえやすくなってしまうので地味に聴こえてしまうかも!?

またディープハウス系はアンダーグラウンドに自宅スタジオで作っている楽曲が多いから、曲によってはチープな感じがするかも。

あとは、もともとageHaは天井が高く、空間が広いからディープハウスやテックハウスにしろ、アンダーグラウンド感があるものはちょっと曲の速さが単調で遅く感じたりすることがあると思いますね。

IMG_0889

ただ、そういったことも今後ageHaのサウンドエンジニアさんがどんな味付け、セッティングをしてくるのかで変わると思うし、それがまた楽しみです。

最終的にはセッティングするエンジニアさんのセンスによるところも大きいんですが、その幅が広がったことはいいことだと思います。
何より視聴会までするぐらいだから相当な自信があるはずだし(笑)。

あと、視聴会ではageHaの方がハードウェアとともにソフトウェアにも気合いを入れていく所存であります!って仰っていたので、ソフトウェア=DJの部分で今後どう気合いをいれるのか期待です。

——世界的にみて、このサウンドシステムへのこだわりはどうでしょう?

海外は意外とサウンドシステムにお金をかけてなかったりするし。それこそ僕は南米やロシアのど田舎でもプレイしてきましたけど、全然お金がかかってない、よくわからないサウンドシステムだったところもあったし。

ただ、それでもしっかりとしたダンサブルでトリッピーな音が出ているところがたくさんあるんですよ。それは聴いて音がいいか悪いかではなくて。

——それはサウンドシステム以外のこと?

ダンスをする人の気持ちを考えたセッティングですかね。

そして、クラブの臨場感のある音ができるかどうか。
そのハコならではの音というか、ジャンルによって音の鳴り方も違いますし、クラブによって特徴があっていいと思うんです。
ハウスやEDM、ヒップホップなどの各ジャンルに特化していたり。

バルセロナフロア

ただ、そういうお店でプレイするとDJは自分がうまくなったと勘違いしがち。
他と違っていい音が出せると、スキルがあがっているような気になってしまうかもしれないけど、実はその場所のサウンドシステムに曲が偶然合ってるだけということもある。

そういったことを理解することでDJもより成長していくと思います。

つまり、DJがクラブに育てられていくということ。
それはとてもいいことだと思うし、そういった意味ではageHaは最適。
音が悪い環境では気が付かなかったことがわかり、それを意識する=育つということだから。

そもそも家で聴いていい曲とクラブで聴いていい曲は違うんですよ。
ハコ鳴りがいい音を学ぶことで選曲にもいい影響を与え、自ずとどこでもいいプレイができるようになっていくと思います。

バルセロナ

——ちなみにKOさんの理想の音ってどんな音ですか?

たとえば音がいいと言われる海外のハードコアなクラブ、伝説的なクラブは全て高音がシャキシャキしてダンスを覚醒させるという面で効いているんですよ。

海外の人はドラッギーでトリッピーなサウンドに反応することもあって。理想としてはそういった基本的な音がありつつ、低域のベースラインとキックの音が別々に聴こえるといいですね。

そして、中音も目の上辺りを雲のように漂ってる感じで、ハイハットの音が脳天から刺さるような音が理想です。

そうするとステレオのLRを加えて、上下左右からの音の動きを感じる、音が3D化したような感じがするんですよ。
ageHaはそれができる環境にあると思うんですが、残念ながらスピーカーの位置関係とスピーカーユニットが各個でLRになっているからフロア全域を渡って動く様な左右の音の動きが出ないんです。

これもセッティングを変えればできると思うのでぜひお願いしたいんですけど……ただ今のシステムもどこを向いても同じように聴こえてみんなが楽しめるというメリットがあり、それがまたageHaの特徴でもあるんですけどね。

——KOさん自身は最近香港やヨーロッパでプレイされてきたそうですが、向こうはどうでした?
「面白かったですよ。やはりアジア全般的にはEDMがメインストリームで流行ってますけど、その分それ以外の音に飢えている人も多くて。
僕はその隙間商売で今回行ってきました(笑)。

ヨーロッパの方はEDMに飽きた人がいるのをより多く感じました。

パリ街2

——もはやアジア全域ではEDM旋風が吹き荒れているんですね。

そうですね。ただ、かといってアンダーグラウンドな人はそれを意識することはないと思いますね。

何もそれと戦う必要はないんです……が、それに反抗する様なパワーを持っていなくてはいけないとは思います。

——去年はDJ活動30年という節目の年でしたが、何か自身の中で変化はありました?

今年に入ってからより一層楽曲を作りだしました。
去年から30周年記念アルバムもレコーディングしていたんですが、それもようやく年内中に出せそうです。

変化という部分では……あまり考えなくなりましたね、仙人っぽくなったというか(笑)。

以前はそれこそ世の中の音楽の流行りのことや集客のこととかいろいろ考えてましたけど、今は自分の好きなことをやり、スタッフ含め皆そんな音楽で盛り上がりたい人達を中心にした規模は小さくとも濃いDJがしたいし、すごく自由な気持ちになりましたね。

あとは、ここ数年みんなで頑張っていた風営法改正が実を結んだことも嬉しいです。

ただ、風営法が改正されたからといって好き勝手何をしてもいいわけじゃなく、気をつけなくてはいけないことはたくさんあるんですけどね。

最近は本当に野外フェスも盛り上がっていて、それもすごくいいことだと思うんです。
僕自身昔からお祭り事は好きでしたし今でも参加することもありますし。

でも、僕はインドアなクラブを大事にしたい。それこそ音質面で言えば野外よりクラブの方が100%いいし、クラブならではの楽しみ方もたくさんあるし。

野外もいいけど僕はやっぱりクラブが大好きなので、その良さを多くの人にわかってもらえるようにしたいですね。

KO KIMURA
2015年でプロDJ歴30年! 日本のクラブ黎明期からハウスシーンをリードするDJ・アーティスト。その活動は国内に留まらず海外でも活躍。また、ダンスミュージックだけでなく実に幅広い趣味を持ち、オートバイやグルメ、アニメ関連業界などとも交流が深く、それらをクロスオーバーした活動も注目を集める。現在は、30周年記念アルバムを鋭意制作中。2016年内にリリース予定。