個が中心の現代社会に待ったをかける
ハーバートならではのメタファー

——あなたは冒頭で“世界を変えたい”と言ってましたが、それは音楽の世界にも言えることなんですよね。

もちろん。

——そのために今回は不快な音、トイレの音などを使ったわけですが……
話は戻ってしまいますが、日本のトイレの消音システムは“他人が不快にならないように”というより、自分の音を聞かれたくないからできたものだと思うんです。

それは今の世界が孕んでいる危険性だと思うな。
現在の資本主義社会において、みんな最も重要なのは自分であると思い込まされている。
全てが自分中心。個が全てだとね。

でも、それは真実じゃない。
人は他人との関わりの中でしか生きていけないものだからね。

僕には車は作れないし、食べ物を育てることもできない。
僕ができることは何か……それは音楽を作ることであり、それが僕なりの社会貢献なんだ。

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でも、それだって聴いてくれる人がいなければできないんだけどね。
ただ、人はお互いを必要とし、力を合わせる必要がある。

でないと気候の変化に歯止めをかけることもできないし、消費を抑えたりすることもできない。
そして、それはみんなでやらないと意味がないことでもある。

つまり、行動をともにする必要があるということ。
そのためには人はもっと隣人に目を向ける必要があり、お互い何ができるのか考えなければならないと思う。

この作品はそれを表すメタファーなんだ。
身体に……つまり互いの存在に耳を傾け、それを受け入れる必要があるってことさ。

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——確かに現代社会は他人に対して無反応。それこそ街中でもヘッドフォンをしていてまわりの音をシャットアウトする人がすごく多いですね。

一概にそれを責めることはできないけどね。世の中はどんどん騒々しくなっているからさ。

ある統計によると、人間の話す声はこの15年間で10%ぐらい大きくなっているらしいよ。
なぜなら周りがうるさいから、人は声を荒げなければならなくなってしまったらしいんだ。

そういう意味ではヘッドフォンをしたくなるのもわかる。ただ、そこで何を聴いているのかわからないというのもまた問題ではあるんだけどね。

それは結局、人と人とが繋がっていないということだから。

後編に続く……

Matthew-Herbert-/-A-Nude-(The-Perfect-Body)-(jake-sya)(HSU-10078)

Matthew Herbert
「A Nude (The Perfect Body)」

Accidental / Hostess
7月1日発売

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