©tomato|©tomato/underworld

日々その様式、そして潮流が刷新されるデザイン。その早い流れの中で絶えず最先端であり続け、時代をリードしてきた世界屈指のデザイン集団Tomato。

そんな彼らが、このたびその活動25周年を記念したレトロスペクティブ・マルチメディア・エキシビション『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION “O”』を開催。

そこでFLOOR編集部では、Tomatoの中心メンバーであるサイモン・テイラーとジョン・ワーウィックにインタビュー。
2人が語るTomatoの25年史、デザインに関する哲学やクリエイティヴィティの源泉、そして音楽、アンダーワールドとの関係とは……。

Voices

——Tomatoは今年で結成25年を迎えたわけですが、この四半世紀を振り返ってみていかがでしょうか。

John Warwicker(以下、J)「25年という月日は、僕らの寿命の約半分にあたる長い時間だ。
その中で、いつの時代もTomatoは型にはまった“会社”や“グループ”を目指してきたわけじゃない。それぞれのメンバーが新しいものを表現したり、会話を楽しむ場所なんだ。
しかし、当たり前のことではあるが、子供のためにお金を稼ぐ必要がある場合、その状況は変化する」

Simon Taylor(以下、S)「旅をするときは、いつだって可能な限り多くの場所をまわりたいと思うだろう。それが目的でもあるからだ。
Tomatoのプロジェクトというのもそれと同じようなもので、僕らを馴染みのある場所とそうでない場所、その両方に連れて行ってくれる。
それはとても素晴らしいことであり、終わりのない可能性でもあるんだ」

J「Tomatoにはこれまで様々なメンバーが加入し、そしてある者は去っていったが、社会的プロセスがTomatoを変化させたんだ。
スタート当初はマックが届いたばかりで、映像もアナログで編集していた。
そして、その後起こった電子革命は、いろいろな意味で僕らを元気づけるものを与えてくれたけど、同時にたくさんのもの、権利を奪っていったんだ。

僕らにとっても、そしてみんなにとっても、理想に縋ることは容易じゃない。最終的には、重要な仲間たちと学び、教え合う、そういった本来の目的のために存在するもの、それがTomatoなんだ」

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——この春、3月からはTomatoの結成25周年記念エキシビジョンが開催されますが、その見所、注目点は?

J「来場者のみんなには、作品を通してTomatoが制作過程でどんな会話をし、何を感じたのかを想像してもらいたい。
作品の裏側にあるあくなき探究心と、常に僕らの頭の中にある疑問符を感じてほしい」

——なぜ渋谷で開催しようと思ったのでしょうか。以前、渋谷から大きなインスピレーションを受けているという話は聞いたことがありますが。

J「僕らは1980年代から東京に行っているが、なかでも渋谷は日本で最初に泊まった場所なんだ。
それから来日を繰り返すたびに、そこは徐々に第二の故郷のような感覚を覚えるようになった。

渋谷の街は、僕らの地元であるロンドンを彷彿させるものがあったのさ。
僕らは渋谷のストリートが持つエネルギーを理解し、そこに反応することで、本当に多くの刺激を受けてきた。

それは、葛飾北斎らが描いた“浮世絵”が持つエネルギーに近いものだと思う。
ファッションは流行にあわせ絶えず変化していくものだが、人々の顔や性格、行動はほとんど変化しない。
僕は幼少期に浮世絵に出会い、それは初めて感情移入できるアートだったわけだけど、今の渋谷にそれを重ねて見ているんだ」

——渋谷で好きな場所とかありますか?

J「来日するたびに渋谷のPARCOで買い物をしていたよ。
ミュージアムにもたくさん行った。なかでも、80年代にPARCO出版から発売された書籍は素晴らしいね。
それは、僕らが愛用しているロンドンの書店でも発見したよ。

様々なカルチャーを紹介し、それらを支えていく活動はとても興味深いし、刺激的だ。
僕らがロンドンで経験しているものとは別次元のものだね。
それが僕らの好奇心をかき立て、日本への興味をより強くしたんだ」

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——この25年の活動の中で、印象に残っている作品は?

S「僕は、作品とは孤立するものではないと思ってる。
ある作品は違う作品と重なり、ある作品は他の作品の情報を与えてくれる、というようにね。

そして、作品はスナップショットのように最高の瞬間にストップし、世に送りだされるんだ。
その瞬間こそ、僕らはもっとも鮮明に覚えている。

そして、素晴らしい印象を与える作品の多くは、誰かに頼まれて作るもの、委託されたものではない。
しかし、Tomatoはしばしばクライアントの指示の外にアイディアを発展させていくことがある。
それがプロジェクトを立ち上げる基盤を作る手助けになっているんだ」

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J「Tomatoの全てのメンバーが、それぞれ興味深いものを生み出してきた。
一方で、全員あまりよくないものも作った。そこに、僕らは学ぶことがあると思う。

そして、取り組んだプロジェクトの中には“画期的”だとか、“時代を先取り”するもの、互いに競い合い高め合う、とても美しいものがたくさんあった。

作品のリストも広範囲に及ぶが、日本で受託したものは僕の中でも大事なプロジェクトとなっている。
例えばソニーのビジュアル・アイデンティティやテレビ朝日のロゴ。それらは時代を先取りしたクリエイティヴだったと思う」

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——グラフィックに映像、ファッション、建築、その他あらゆるものをデザインしてきましたが、それらの源になっているものは何なのでしょうか?

J「好奇心だ」

S「アイディアは時間と場所に縛られるものではない。それは生きていて、進化するものなんだ。

だからこそそこに興味があるんだ。物事がどのように反応し、どう繋がり、そこからどんな結果が生まれ、僕らをどこに連れていってくれるのか。
それは制作期間中、僕らを後押しするダイナミックなシナリオでもある」

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——デザインとは進化する一方で、変わらぬものでもあるべきだと思います。新しさと普遍性、それを共存させているのがTomatoのデザインであり、魅力なのかなと思ったのですが。

S「デザインのコンセプトはすごく複雑だ。その中で普遍的なデザインであるためには、可能な限り幅広い人たちにアピールする必要がある。

そう考えると、そのデザインはシンボルというよりサインとして存在し、デザインが本来の個性を抑えた機能的なアプローチをとってしまう。

でも、目的がニッチであれば、特定の決まった人たちだけにアピールすればいいので、焦点も狭くなる。
そして、そこではより記号的な結果を生み出すことになる。
だから、普遍性には脈絡が必要不可欠なんだ。

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普遍的であるか、ニッチであるか。それは重要なことだが、進化はデザインの一部でもあるんだ。
デザインの消費者たる僕らは、みな“新しい”挑戦、目新しさを好む。
視覚的な変化や新たなコミュニケーションはデザインのプロセスの基本となり、デザインを前進させる。

ただ、そこには危険性もあるんだ。
それは進化と普遍性の交わりにおいて、ある“スタイル”が生まれてしまうということ。
Tomatoはそういったスタイルを採用する場合、いつもニュートラルな視点で見るよう心掛けているよ。
なぜなら、一度スタイルを踏襲し、結果を求めてしまうと意味やプロセス、探求や会話が二の次になってしまうからね。
だからこそ僕らは、スタイルよりも変化を受け入れ、好むんだ」

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——Tomatoの設立メンバーでもあるアンダーワールドはどんな存在ですか?

J「リックとカールとは33年来の付き合いになる。
彼らは友人であり、たまたまTomatoの一員でもあった。そして、アンダーワールドでもあるわけだが、僕らの友情はそういったものを超えたものだと思ってる。

ただし、Tomatoとアンダーワールドの関係性は、常に共存し、相互作用を及ぼしてきた。
彼らは僕らのさらなる興味をそそり、僕らは彼らの興味をより深めていったんだ。

僕個人としても、彼らには常に驚かされているよ。
アンダーワールドの真の価値を見いだすことは難しい。ただし、僕らは彼らが発するものが真実だと確信している。
アンダーワールドがこれまで成し遂げたもの、時間を超えた仕事のクオリティを振り返ると賞賛しかないからね」

S「長きに渡り同じブランドのイメージを作り上げていくということは、すごく稀なことなんだ。
それだけに、アンダーワールドとともにそれができてすごく光栄だ。

彼らはTomatoにとって、本当に重要な意味を持っている。
創造性という部分においては、リックとカールと作り上げることで、彼らがアンダーワールドとして経験するプロセスを僕らにも体験させてくれる。そして、その逆もまた然りだ。

Tomatoは常にリックとカールとともにあり、強い共通の関心事もあるんだ」

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——では、音楽とデザイン、その関係性についてはいかがでしょう?

S「歴史的に見れば、両者の関係は最近のものだ。
音楽が初めて録音され、商業的に発表されたときにそれはスタートしたんだ。
そして、両者はモダニズムなどを通して一般的なアートの進化と結びつく。

しかし、結果的に音楽自体はデザインとは簡単に切り離されてしまう。
とはいえ、音楽のコンテンポラリーな体験は、間違いなくデザインによって広められる。
視覚的に結び付けることなく音楽を楽しむことは難しいからね」

J「僕は、音楽もデザインも同じものだと思ってる。
どちらも思考を形にするものだ。そこに違いはないよ」

——Tomatoとして、さらには個人としても、これまでデザインの枠組みにおいて本当に様々な分野で活躍してきましたが、今注目しているものは?

J「テクノロジーは移り変わる。そこに携わる人たちはある挑戦をしている。それは、ある意味ですごく興味深いことだ。

ただ基本的に唯一の挑戦、僕の関心事と言えば、いい図面を描くこと。
いつもそうだったし、これからもそう。僕は今なおそこに挑戦しているんだ」

S「僕は未来。過去。そして今、何が起こっているのかということだけさ」

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EVENT INFORMATION

『THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION“O”』

2016.3.12.SAT~4.3.SUN

【OPEN / CLOSE】10:00〜21:00

パルコミュージアム(PART 1・3F)、ギャラリーX(PART1・B1F)
その他、シネクイント(PART1・8F)、2.5D(PART1・6F)、
ポップアップショップ(PART1・B1F)など

一般500円、学生400円、小学生以下無料

インフォメーション

Simon Taylor
サイモン・テイラー
イギリス出身、1965年生まれ。Tomato設立前からアーティストとして活動し、母国イギリスでは様々な賞を受賞。設立後は、より活動の幅を広げ、映像・映画や建築、ファッション、音楽など様々な分野で才能を発揮。マルチクリエイターとして、高い評価を受けている。ここ日本との関わりも深く、UAらのミュージックビデオのプロデュースや様々な企業プロジェクトに参加している。
John Warwicker
ジョン・ワーウィッカー
1955年ロンドンに生まれる。1980年代よりデザイナーとして活動し、イギー・ポップ、ジャネット・ジャクソン、ローリング・ストーンズらのデザインを手掛けた。その後、Tomatoを設立し、サイモンらとともに様々な作品を制作。同時に、大学でもデザインに関する教鞭を振るう。とりわけタイポグラフィに定評があり、世界的にも高い評価を受けている。