2014年にレーベル設立10周年を迎えたUKのHyperdub。
記念すべきアニバーサリーイヤーのワールドツアーを、日本4都市からスタートさせると
その後丸1年をかけて、オリジナリティ溢れるサウンドで世界中を熱狂させてきた。
そして、10周年の集大成を12月19日に東京、20日に大阪でクロージングパーティとして開催することが決定!
そこで、彼らの近年の活動の中から、10枚のディスクを厳選して紹介しよう!

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『Sebenza』

こういったアーティストの作品がリリースされることがHyperdubの支持の高さに直結する。ロンドン出身のトリオであるLVが南アフリカのMCたちとタッグを組み完成した本作は、定型に収まらないサウンドが飛び交う。リズム、ビート、音色、ラップそのすべてに意表を突かれ、新しい発見が溢れている。タイトルはズールー語で“仕事”の意。“音楽に国境はない”を縦横無尽のサウンドで見事に体現している。

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『Pretty Ugly』

UKファンキーの新旗手としてリリースされたDVAのデビュー・アルバム。本作はHyperdubの多様性を示す1枚と言え、グライミーな展開からR&BなどUKアーバンの深い旨味を凝縮したような1枚となっている。“Why You Do?”“Eye Now”など女性ボーカルを配した楽曲は、ちょっと粘着質な夢心地というか、正統派少年漫画ではなくアンチヒーローが持つ屈折したロマンティックな魅力があり、病み付きになる。

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Burial
『Burial』

06年リリースのブリアルのファースト・アルバムにしてダブステップ史にて永遠に語り継がれるマスターピース。代名詞となった金属が擦り合うようなサウンドや非常にダークかつミステリアスな雰囲気は、いまだ色褪せず新鮮な響きを保つ。本作以降にダブステップが飛躍的に広まったとはいえ、ブリアルのフォロワーが生まれなかったことが、本作のオリジナリティと完成度の高さがいかに屹立しているかを示す。

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King Midas Sound
『Without You』

キング・ミダス・サウンドが09年にリリースした「Waiting For You」のリミックス盤。なぜリミックスをセレクトしたかというと、もちろんオリジナルも素晴らしいのだが、リミキサー陣の豪華さとHyperdubの音楽性がより窺い知れるから。コード9などのレーベルメイトの他、フライング・ロータス、マーラ、ラス・G、D・ブリッジなどベース・ミュージックの雄たちが鎬を削った秀曲が並ぶ。

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Dean Blunt & Inga Copeland
『Black Is Beautiful』

これまたHyperdubの多様性を示す傑作。冒頭を飾る曲だけタイトルが付けられているものの、他は収録順に2、3、4……と数字が羅列されるだけの適当さ。タイトルよりもサウンドを聴いてくれよ、という非肉なのだろうが、この数字は実際に聴き込むと、一般的に使われている楽曲タイトルよりも脳裏に刻まれるから不思議だ。それだけ内容が個性的だとも言えるが、なにもかもが狐につままれているような錯覚に陥る。

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Ikonika
『Aerotropolis』

チップチューンとダブステップの融合で名を馳せたアイコニカ嬢の新境地。インディ・ダンスやベッドルーム・ミュージックからオールドスクール・ハウスを解釈したかのようなポップでキャッチーなサウンドの数々は、野暮ったさは皆無でモダン。ジャンルにカテゴライズされることやあるべき姿を求めるリスナーに対し、余裕の微笑みとともに変革というカウンターをかました彼女は、まさしくコード9の秘蔵っ子だ。

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DJ Rashad
『Double Cup』

DJラシャドのデビュー・アルバム(CDフォーマットでは)とも言える2013年を代表する名盤。盟友であるDJスピンが半数以上の楽曲に参加しており、ラシャドが所属するTeklifeの作品と言えなくもないが、ジューク~フットワークの傑作であることには異論をはさむ余地はない。ゲットー感溢れるトラックに加え、スムースでアーバンな楽曲も多く、得られる印象はストリートのそれよりも上質なジャズに近い。

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Burial
『Rival Dealer』

ブリアルが突如リリースし、世間を驚かせた最新EP。07年「Untrue」以降、アルバム単位のリリースはなく散発的に音源を発表してきた彼の最新作は計3曲収録で合計30分を越える。しかし、世間を驚かせたのは、突然のリリースではなく、収録楽曲が転換作とも言える衝撃的な内容だったからだ。表題曲は、不安を募らせるような音色とともに攻撃的な硬質ビートが刻まれ、予測不能に転回していく。2013年の問題作。

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Jessy Lenza
『Pull My Hari Back』

カナダ出身の女性シンガー・ソングライター:ジェシー・ランザのデビュー作。彼女の氷点下で囁かれているような温かいボーカルが軸となっており、Hyperdubというレーベルを捉えるうえでも非常に重要な作品。そして、セクシーだ。なぜかそのボーカルから北国を連想してしまうのは、彼女の出身地が原因ではなく、その類稀な声質なのだろう。トラックやメロディも独創的だが、その歌声を聴くだけでも価値がある。

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Laurel Halo
『Chance Of Rain』

USインディー・シーンから突如現れ、喝采を浴びた宅録女子は、2作目にして、大きく舵を切った。ドリーミーなシンセとボーカルに主眼を置いていた前作と打って変わって、ノンボーカルになり、それに代わりビートが脈を打つ。しかし、インテリジェンスはそのまま。さらにストイックさはより向上し、本当の意味での“作品”を創造している。じつに洗練された音の芸術性を味わわせてくれる芯の強い作品。