90年代から世界のハウスシーンを牽引するトップDJ・プロデューサー、エルナン・カタネオ。
かたや名古屋を拠点に自らのサウンドを世界へと発信し続ける日本屈指のハウス・プロデューサー、DJ OGAWA。

今週末に名古屋、東京で開催される両者の共演を前に2人のスペシャル対談が実現!
ハウスの本質、そしてDJの神髄、さらにはエルナン自ら“嫌いだ”と語るEDMに加え、ダンスミュージック・シーンの今、そして未来について、たっぷりと語ってもらった。
ハウス好き、そしてハウスDJは必見!

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——まずは、初めて会ったときのお互いの印象を教えてもらえますか。

DJ OGAWA(以下O)「確か、2003年にマイアミの『WMC』で(SATOSHI)TOMIIEさんが主宰していたSAW RECORDINGSのパーティで会ったのが最初。
そのとき、遊びに来ていたエルナンに僕が一緒に写真をってお願いしたんだよね(笑)。
そしたら、彼は近くの人を呼び止めてカメラマンになってくれるようお願いしてくれて。なんて優しい人なんだ! って思いましたね」

HERNAN CATTANEO(以下、H)「OGAWAは、本物のパーティ・ラバーだと思ったよ。そして本物のDJだし、ものすごく人が良い印象を受けたよ」

——OGAWAさんから見て、エルナンさんの一番の魅力とは?

O「エルナンは僕のヒーローです。世界で一番好きなDJで、センス、スキルともに世界一。
有能なミュージシャンは、その生き様を音楽に反映させるって言うけど、エモーショナルで懐が深く、自身を映し出すかのような彼のプレイは、クラブに入った瞬間、ミックスを聴いた瞬間にすぐにエルナンだってわかるんですよ。
どんな曲でも自身のフィルターを通してエルナン色に染めてしまう、それができるのは彼だけだと思います」

H「僕もOGAWAが本当に大好きさ。僕らはすごく似た音楽のテイストを持っているし、DJのスタイルも似てる。
例えば、スムーズなミックスやヒプノティックな選曲、そしてロングセットが好きなところとかね」

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——これまで2人は様々な場所で共演していますが、その中で印象に残っているギグは?

O「僕は全部印象に残ってますね。彼は毎回こちらの期待と想像を遥かに超えるプレイを見せてくれるというか、軌跡を生み出してくれる。
特に、3年ぐらい前に僕のパーティでオールナイト・ロングセットをお願いしたんですが、完全にフロアをロックし続けたあの一夜は今でも語り継がれる伝説です」

H「僕にとっても(名古屋にあるクラブ)Magoでのプレイはいつも特別だよ。名古屋で過ごす時間は、世界中を周るなかでも、必ずその年のハイライトの1つになるくらいにね」

——エルナンさんは90年代から活躍されていますが、今のハウスシーンをどう思いますか?

H「すごく興味深く捉えているよ。10年前と比べて様々なジャンル、小規模なシーンが生まれ、何よりフォロワーやファンが桁違いになってきているからね」

——ハウスもすごく細分化していますよね。

H「それに関してはあまり気にしていないよ。なぜなら、僕は僕の思ういいもの、面白いものをプレイするだけだから。大事なのは自分の好きな音楽、そして自分の選曲で人々をハッピーにすることだけさ」

O「細分化したというより、いいDJが増えたんだと思いますね。
本来、特定のジャンルの音楽しかかけないDJは少ないと思うし、様々なジャンルの音楽をその人なりのものに染めることができるのがDJ。
だからDJ自身がジャンルであり、その選択肢が増えることはいいことなんじゃないかな」

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——2人にとってハウスの一番の魅力とは? 多くのDJたちがハウスはジャーニー、物語だと言っていますが。

H「その通りだよ。僕らは俗に言うプログレッシヴ・スタイルだけど、それは音楽のスタイルじゃなく、いかにして音楽をかけるかという方式。
“スムーズなロングミックス”と“スローなトランジション”、そして“ロングセット”が大事なんだ」

O「まさにエルナンの言う通り。楽しいときは時間を忘れてしまうけど、それを生み出すためには彼が挙げた3つのことがすごく重要だと思いますね」

——では、逆にいい音世界を紡ぐために必要な要素は?

H「良いお客さんとサウンドシステムだ。日本は常にどちらも最高だよ」

O「あとは音楽への情熱と愛情もね」

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——ハウスDJとして大切な要素についても聞きたいのですが、まずは選曲についてはどうでしょう?

H「選曲においてはプログラミングが非常に大切だよね。それで自分の音楽的パーソナリティが決まるから」

O「音質はもちろん楽曲のクオリティが高いものを選び、それらをよく聴き込み、楽曲のよさをしっかりと理解し、それが持つパワーが一番発揮することだと思います」

——ミックスについては?

O「曲と曲が混ざり合えば、そこで新たなグルーヴが生まれる。そのためにもスムーズなミックスが必要ですよね」

H「ミックスはもちろん大切だけど、決して難しいことじゃないと思う。
どうやって上達するのか?って言えば、ただ練習するのみさ(笑)それに最近ではコンピューターDJも増えてきて、彼らはミックスなんてしていないしね」

——DJの心得という部分では?

H「それはすごく個人的かつ主観的な部分だね(笑)。
僕が思うに、DJは音楽だけに集中すべきだ。ステージ上で飛び跳ねたり、観客にケーキを投げつけるDJを見ると気分が悪くなるよ」

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O「いい音楽をちゃんと理解し、自分なりに消化してプレイすれば、お客さんとのキャッチボールは音楽を通してできると思うんです。
エルナンの言う通り、僕もそこに違った解釈のパフォーマンスは必要ないと思いますね」

——楽曲制作の面ではどうでしょう?

H「DJと同じく、音楽的パーソナリティがすごく重要だね。
この世には何千人、何万人ものDJ、プロデューサーが常に自分を出そうとしてる。その中でもほんの一握りの人だけがハイレベルになれるわけだけど、彼らはみんな強いアイデンティティを持っているんだ」

O「確かにアイデンティティを確立すること、そして自分のプレイに楽曲を反映させることは重要ですよね。
DJと楽曲制作は技術的には別ものだけど、その人から生まれるセンスは同じだと思います」

H「思うに、トレンドとはティーンエイジャーのためのもので、大人のためのものではないんだ。
僕はDJとしてすでに自分のスタイルを持っていて、それを貫き通すだけ。トレンドに流されてスタイルが変わるヤツなんてリスペクトされないよ。

過去のクラブミュージックのマスターたちを見ても、誰もが強いアイデンティティを持っている。(ローラン)ガルニエやサシャ、(リッチー)ホウティン、ダブファイヤー然りね。
彼らのサウンドは誰が聴いてもすぐわかる。それはみんなが強い個性を持っていて、トレンドに支配されていないからなんだ」

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——トレンドという意味では、現在盛り上がっているEDMの印象を教えてください。

H「僕はEDMが嫌いだ。でも、誰でも嫌いなものを抱えているわけで、大きな問題じゃないよね。
そもそも聴かなければいいだけだし。
ただ、正直な話、EDMはダンスミュージック・シーンをかなり拡大させたよね。それはみんなにとっていいことだと思う」

O「僕は全てが悪いものとは思っていなくて、簡単に言えばEDMは映像や特殊効果などの演出面を含めたいわゆるエンターテインメント性の高いコンサート。
そういう点ではある意味可能性を広げたのも事実だけど、僕らが指すDJとは全くの別ものだと思います。

その証拠にフェスなどのEDMは“見に行く”って言うしね。いいDJなら“聴きに行く”って言うはず。それらはもともと違ったもので、同じ土俵で比べるものじゃないんですよね。
ただ、それが好きか嫌いかで言うと……好きじゃないかな」

H「EDMを通じてシーンに入った今のティーエイジャーたちは、将来もっといい音楽を聴くと思うんだ。
言うなれば、EDMは若い子たちが好みそうなジャンクフード。みんな大きくなるに連れてファストフードには足を運ばなくなり、いいレストランに行くようにね」

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——OGAWAさんが言うように、EDMの流れとしては1つのステージを映像や演出などを含めたパッケージをトータルで楽しませる流れになっていますよね。

O「それはいいことだと思うし、短時間のショーであればそれも可能だけど、DJが作りあげるドラマというか、シンプルにいい音楽だけでも十分に魅力を伝えられるはずなんですよ」

H「それはただ単にブランディングの仕方であって、ポピュラーなスタンス。
その他にアンダーグラウンドなスタンスが昔からあって、特に新しいものじゃないんだよね。

ただ、そうやって違ったスタイルがあるのはいいことだし、みんなやりたいようにすべきだと思う。
僕は自分のかける音楽、自分が好きな音楽を大事にしているだけで、他のスタイルは気にかけていないだけさ。例えば、レゲエのバンドはメタルのシーンに気を配らないようにね」

——ハウスシーンにおいて今注目している国、エリアはどこでしょう?

H「南米と東ヨーロッパは常に熱いね。あとは日本。日本は常に僕のお気に入りさ」

——エルナンさんにとって日本とは?

H「一番好きな国の1つさ。日本での初めてのギグは2001年、Yellowでプレイしたんだけど、それ以来毎年来ているし、この国の人々、文化、食、クラブシーン、そしてストリート、全てが大好きだ」

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——今後2人で何かプロジェクトを行うようなことは……。

H「現段階での次のプロジェクトとしては……2人でたらふく焼肉を食べることだね(笑)。
OGAWAはトップDJであるだけじゃなく、焼肉キングでもあるんだ。いつも素晴らしいお店に連れていってくれて、最高のお肉を一緒に食べてるよ」

O「(笑)。Yakiniku Powerってスゴいんですよ。
焼肉は世界を平和にする!うまい肉は宇宙を平和にする!」

H「(笑)。真面目な話、僕らは本当に仲良しだからね。いつでも一緒に何かを作るチャンスはあると思うよ」

O「エルナンとは本当に好きな音楽やDJのスタイルが似ているので、近い将来何か一緒にやりたいですね。
いろいろアイディアはありますが、まずは2月26日のMago、2月27日のSOUND MUSEUM VISIONでのパーティを楽しみたいです」

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『SMASH DX feat.HERNAN CATTANEO』
2016.2.26.FRI@Mago(Nagoya)
ACT:HERNAN CATTANEO, DJ OGAWA, AIDA, MAACY and more
【START】22:00
【CHARGE】ADV¥3,000 DOOR¥3,500
【INFO】052-243-1818(Mago)www.club-mago.co.jp

HERNAN-@VISION-OMOTE-2016

『Mercy feat. Hernan Cattaneo』
2016.2.27.SAT@SOUND MUSEUM VISION(Shibuya)
ACT:HERNAN CATTANEO, DJ OGAWA, SEKITOVA, EITA and more
【START】22:00
【CHARGE】DOOR¥3,500
【INFO】03-5728-2824(SOUND MUSEUM VISION)www.vision-tokyo.com