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90年代にミクスチャーサウンドの先駆けとなったSBK(2010年に解散)のShigeoJD。
東京ストリートカルチャーのアイコンとなったDEXPISTOLS(2015年に活動休止)のMAAR。
ダンスミュージックファンの多くが彼らの名を知り、またはクリエイトしてきた楽曲に触れてきたはずだ。

2人に共通するのは、操る音楽のフィールドは違えど、古今東西問わずあらゆる音楽に精通し、常に実験的、先進的な音楽を提示しつづけてきたことだ。
マスに媚びず、流行の後追いは決してしない。簡単に言えば、“売れ線”とは対極にある音楽家だと言うことだ。

その2人がいま手を取り合う、Fake Eyes Production。
桜舞い散るこの季節に、彼らはどんな音楽の華を咲かせてくれるのか?
2人の野心をここで暴きたい。

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――結成の経緯について教えてください。

ShigeoJD(以下S)「東日本大震災が起きたときにTwitterで『一緒に何かやりませんか』って投稿したんです。そのときに、MAARも手を挙げてくれて、それがきっかけで遊びだすようになって、クラブ帰りに一緒にスタジオに行ったりとか」

MAAR(以下M)「それで1曲できたのが、2年くらい前かな? いや、そんなに経ってないかも……1年くらい前かも」

S「海外のノリだよね。DJ終わったあとにスタジオ行って、曲を作るという。ぶっちゃけて言うと、ヒマ(笑)。曲作る以外にやることがないっていう」

M「俺的には、Shigeo君の音楽の制作方法とか哲学がフィットして、学ぶことが多かったのが一番だった。それはDEXのときよりも、すごく刺激的だったから、一緒になんかやりたいなって」

――2人が組む強みはなんでしょうか?

S「互いに自分にないものが理解できていて、その欠けている部分を補完できる。なおかつ依存じゃない。突出している部分もかぶっていないしね。それがすごいメリットですね。俺がパッと作ったものをMAARに渡す。色んな意味で散らかしている僕のアイディアがあって、彼はそこにある程度の秩序をもたらしてくれる。MAARからすれば秩序の中にルール違反をする俺、みたいな関係性かな」

M「制作では、Shigeo君の方がスキルがあるし、俺は学ぶことしかないな~。俺はずっと独学でやってきたんで、人と共同作業するという刺激や作業の進行のスピードなんかですごくプラスになってる」

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――Fake Eyes Productionでのライヴスタイルは、DJプレイに即興で歌を入れたり、生楽器の演奏を加えるというユニークなスタイルです。どのようにしてこのスタイルに行き着いたのでしょうか?

S「僕は元々バンドからダンスミュージックに寄っていったタイプ。逆にMAARは、ずっとバンドっていいよねって気持ちがあったから。それにロス・ヘルマノスとかDJプレイに生ドラムを入れたりするじゃないですか。UR(Underground Resistance)とかのパーティでも一晩のなかに生のライヴアクトがある。そんなところに、DJで何かをプラスする形で自分たちの持ち味を出せるんじゃないかと」

M「やっぱり常に新しいことをやってきたい。日本のクラブシーンはまだまだ小っちゃいから、いろんな要素を入れて、多くの人に来てもらいたいっていうのを考えているんです。ロック好きとクラブミュージック好きが日本ではすごく分かれちゃっているから。以前にも周りのアーティストやオーガナイザーが頑張って、ライヴがあって、DJもあるというパーティをやったけど、結局なじまなかった。
俺がDJをやっているときに、Shigeo君が機材を操り、楽器を弾いてくれると、ミニマリーなトラックが全然違う聴こえ方になる。クラブっていう空間がこれまでとは違うものになるんじゃないかって思うし、いろんな音楽好きが来てくれるようになればいいなって思っていますね」

――なるほど。自分たちの音楽嗜好性や海外と日本のシーンの差異、クラブシーンの未来を考えた結果ということでしょうか。

S「あとは生楽器とDJプレイの融合というのは、いままでもあったけど、僕らが重点を置いているのは、即興。“インプロビゼーション”なんです。DJは現場の雰囲気を見て、次の曲を決めていくじゃないですか。多少のセットはあれど、そこにはDJの“当て勘”が存在する。MAARが繋いでいくトラックの上で、自分がフロウをするんですけど、相手がどう出てくるかわからない点にすごく面白味を感じたんです。自分たちのトラックじゃないところでのライヴ感。これって日本じゃ唯一無二なんじゃないの?って」

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――デビュー作品を180グラムのへヴィーバイナルでリリースされましたけど、アナログへのこだわりはありますか?

M「元々アナログ的なものはすごい好きだし、制作でもアナログシンセもなるべく使うようにしましたね。でも、古いものが全部良いなんて思っていないし、懐古主義ではなくて、昔のものをどう新しく使うかってこと。どの感覚とタイム軸で、昔のクラシック感を入れるのか。
服とか映画もそうだけど面白いものって、大体クラシック要素が混ざっている。でも、それをそのままやったらつまらないんですよ。今のフォーマットでやるからこそ土台がしっかりした面白くて、新しいものになる」

S「僕らがよくいう“古新しい”ってことだよね。ポール・マッカートニーは、音楽は螺旋階段状の進化だって言っている。どこかの部分で下から見上げると、同じ部分がある。それは一周上だったり、下だったり。アートの進化の積み上げ方って、そういうもんなんじゃないかなって。突飛に飛び越えたりしないし、途切れていない」

M「21世紀になっても、突然車が飛ぶわけじゃないもんね」

S「いや、飛びたいけどね(笑)」

M「結局、そういう未来をみんなが求めているわけじゃない気がしているんですよ。もっと温かみがあって、デジタルとフィジカルが融合している未来を欲しているんじゃないかな。人のアイディアと昔からある技術を構築して、新しい概念になるのが面白い。人から見たら、俺らってすごい突飛なことをやっているように見えるかもしれないけど、若い人たちから『俺でもできるじゃん』とか『俺だったらこうする』ってアイディアのきっかけになってくれたらと思いますね」

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――今後のリリースの予定は?

S「3枚は自分たちのオリジナルで頑張ってみようと思っています」

M「うん、4カ月に一回くらいのペースで」

S「次の2曲はもう完成しています。今はバイナルだけのクラブトラックだけど、今年中には、違ったテイストの“聴きもの”のCD音源で、自分たちの名刺代わりになるものを出したい。自分たちの実験的な武器はバイナルで出す。でも、バイナルだけだと聴けない人もいるから、いまいろいろと作戦を練っている状態ですね」

――90年代から第一線でご活躍されている二人がまた1からスタートして、アンダーグラウンドで勝負するってすごくモチベーションが必要なことだと思いますが。

S「DEXにしてもSBKにしても、ミクスチャーってカテゴライズされたもの、もしくはヒップホップとロックの“間”を取ってやっていたんじゃないかと思うんです。ダンスミュージックとエレクトロだったり、いろんなものの“間”を取っていって、メジャーだったり、アンダーグラウンドだったり、全部混ざっちゃっててわかんないけど(笑)。“合間の仲介役”というとおこがましいですけど、そこがすごい好きなんだなって。カルチャーが混ざっている部分にロマンを感じるんです」

M「ずっと面白いことをやっていたいね」

S「あとずっと混ぜていたい」

M「いろんなカルチャーに対してもそうだし、せっかくだからずっとドキドキしていたい。いばらの道かもしれないけど(笑)」

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Fake Eyes Production
『Fake Eyes EP』
Fake Eyes

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