ドナルド・トランプ大統領が、第1回連邦政府予算案の中で、全米芸術基金(NEA)や全米人文科学基金(NEH)の廃止を提案した。

彼は今年の1月ごろにもそのふたつを閉鎖すると同時に、公共放送機構(CPB)の民営化を示唆していることが政治専門紙『The Hill』にて語られていた。その理由として、大統領自身にもともと芸術面への関心がないことが挙げられるという。

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NEAやNEHは、州や地方の組織・自治体とイニシアチブをとることで、芸術や人文科学を支える役割を担ってきており、これまでに16ものピュリッツァー賞受賞作品を輩出し、さらには数々のドキュメンタリー映画を制作。またサンダンス映画祭の創立に貢献し支援を行ってきた。
複数の人権団体やメディアは今回の一件に関して「芸術文化の冬の時代の到来」であると批判しているが、彼らの中ではこの廃止案を推進する勢力に対抗することは可能だという見方も強まっている。

仮にこれが実現してしまうと、多くのアーティストたちの活動や文化関連組織に影響が出ることは避けられないだろう。ただし、NEAに関してはアーティストに直接的に資金を提供することが少ないだけに、完全に廃止された場合アーティストにとってどこまで問題になるかという議論も巻き起こっているという。

NEAとNEHは、1965年にリンドン・ジョンソン大統領によって設立。これまでこの基金の廃止を提案した大統領はいない。両基金を合わせた年間予算は、国家予算1.1兆ドル(約124.59兆円)のうちの約30億ドル(約3397億円)。

先日の『グラミー賞』のように、まだまだ人種差別的側面を含む問題が残るとはいえ、アメリカの音楽/アートシーンは、そのカルチャー全体に対する寛容な姿勢によって誕生してきたことはいうまでもない。今後も多くのアーティストやDJはもちろん、世界中の音楽や芸術に関わる全ての人々によりよい環境が提供されていく事を望むばかりだ。