常連が並ぶなか、唯一注目すべきは8位のオリヴァー・ヘルデンス
昨年22ランクアップの12位となり話題となったが、今年はいよいよトップ10入り。これはフューチャーハウスという新たなジャンルを推進してきた活躍が認められたことを示し、同シーンで活躍するドン・ディアブロ(年明け早々の『electrox 2017』出演!)も15ランクアップの15位と躍進しているだけに、今後もフューチャーハウスの流れはとまらないということか。

今回1位にEDMシーンのブライテストホープであるマーティンが輝いたとはいえ、上位の顔ぶれに大きな変化がないところはいかがなものか。2013年に初登場40位、翌年には4位、そして2015年にベスト3入りを果たし、このたび栄冠に輝いた、まさにシンデレラストーリーを地でいくマーティンのようなスターが新たに出てこないとシーンの活性化という意味では懸念が残るところ。

シーン全体を見てみれば2015~2016年最も目立っていたアーティストとしてはザ・チェインスモーカーズが挙げられるだろう。
2014年に“#Selfie”で脚光を浴びた彼らは “Roses”、“Don’t Let Me Down”、“Closer”と立て続けにメジャーをも席巻するワールドヒットを連発。それだけにこのランキングでも躍進が期待され、結果は2014年初エントリー97位以来となる2年ぶりにランクイン。しかも18位と躍進度に関して言えば、今回最もランクアップしたアーティストと言える。
しかし、それでもトップ10入りができないところは壁が厚いというか、このランキングに関して言えばプロデューサーというよりも現場での活躍に重きが置かれているということか(かのディプロも3ランクダウンの23位だし)。

また、『ULTRA JAPAN 2016』にも出演していた超新星マシュメロも満を持して初エントリー。見事28位につけているのも見逃せない。

その他、50位内で順位が大幅にアップしたアーティストをあげてみると

12位:カシミア(↑11)
15位:ドン・ディアブロ(↑15)
19位:ウメット・オズカン(↑17)
22位:DJスネイク(↑10)
25位:アロック(↑19)
27位:スワンキー・チューンズ(↑70)
28位:マシュメロ(初登場)
32位:クインティーノ(↑48)
33位:DJ Chetas(↑26)
36位:ヘッドハンターズ(↑12)
39位:ギャランティス(↑59)
44位:メジャー・レイザー(↑10)
48位:イエロー・クロウ(↑26)
49位:MaRLo(↑42)

こう見ると、DJスネイクやメジャー・レイザー、イエロー・クロウといった本流EDMではない、いわゆるトラップ、トワーク系のアーティストが伸びてはいるもののまだまだ。このジャンルにおいては、DJ Magの読者のファン層とヒップホップを含むトラップシーンとのマーケットの違いも影響しているように感じる。
一部では本流EDMはもはや終焉と語られているが、このランキングの結果を見る限りではまだまだ健在。(あくまでDJmagランキングでは)そして一方では、フューチャーハウス系やベースハウス系の台頭も見られ、はたまたノーベル平和賞やリオオリンピックの閉会式といった大舞台でのパフォーマンスで世間を賑わせたトロピカルハウス界の旗手カイゴも奮闘。今年はファーストアルバムもリリースし、7ランクアップの26位に位置している。
ただ、その他のアーティストが続かないところを見ると、トロピカルハウスというジャンル全体では、新たな潮流の脈動を感じられないのは少々残念なところでもある。

その他、ウメット・オズカン、クインティーノ、ギャランティスなどはヒット曲を多々生み出し、ここ日本にもたびたび来日しているので、本邦のファンにとっては納得のいくところかと思うが、あまりなじみのないスワンキー・チューンズ。彼らはとりわけ海外で大きな活躍を見せ(特に2015年ヒット曲を連発し大躍進)70位もランクアップ。その動向には今後も期待したいところだ。

このランキングいかんで少なからずシーンでの影響力は変わる。しかし、あくまでこれもひとつの指針。これでDJたちの序列が一変するというわけではないのはあしからず。
とはいえ、毎年思うことだが日本人のランクインは今回もならず。今年はDJ Mag Japanもできたことだし、来年こそはと思うところだ。

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