今春、約3年振りにフランクフルト、パリ、ミラノ、ヴェネツィア、ナポリをまわるヨーロッパツアーを敢行したDJ SODEYAMA。今回はその前半戦、フランクフルト、パリの模様を本人がセルフレポート!
果たして彼は今回のツアーで何を求め、何を感じたのか。リアルな思いをたっぷりとお届け!

【3月30日】

ROBERT JOHNSONでの公演が3月31日のため前日入り。
ホテル到着後早々にすぐ隣のビルにスタジオを構えるChristian Burghardtと合流。過去に僕のレーベルでリミックスをお願いしたこともある彼と久々に再開したのですが、すぐ近くでリカルド・ヴィラロボスやSonja Moonear、アタ、Move Dなどが出演しているドキュメンタリー作品『If I Think of Germany at Night』のプレミアム上映があるらしく観に行くことに。

とはいえ、それは全編ドイツ語の英語字幕。40%ほどしか理解できていないと思うけど、充分に楽しめる内容でした(特にMove Dのキャラクターが最高で)。ぜひぜひ観てみてください。

そして、観賞後はChristianと軽くディナーして、この日はおとなしく爆睡zzz。

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【3月31日@ROBERT JOHNSON】

お昼に再びChristianと合流し彼のスタジオへ。今回特に機材を持って行かなかったので制作はせずに見学だけでしたが、彼のスタジオが入っているビルにはローマン・フリューゲルをはじめ様々なアーティストのスタジオが! 僕が中学生の時に聴きまくっていた“THE POWER”を生み出したSNAPのスタジオもあった歴史的にも有名なビルだとか。機材も素晴らしい物が揃ってましたが、何より音が好みでした。何と言うか……制作をしたくなる音。

話しは少し外れますが、“音がいい”ってそれぞれ好みもあると思いますが、僕にはその良し悪しの前に肝心なことがあって“生々しくてグっと来る音”かどうか。それは、スタジオでもクラブでも種類は違うけど同じ風に思っています。

日本にはスゴく音がいいクラブはたくさんあるけど、“生々しくてグっと来る音”かと言われるとそうでもないことが多い。個人的には、どんなに解像度が高くクリアな音だとしてもその方が自然と体が動くし、DJをしていて調子がいい。“生々しさ”が大事で、その方が“グっ”と来る。結果それがクラブにおいては“音がいい”と僕自身は捉えることが多いです。

スタジオもクラブほどの音量ではないけど同様の感覚が僕には必要で、Christianのスタジオはそれを感じれる場所でした。

スタジオ見学の後、彼はオッフェンバッハ~フランクフルト近辺を案内してくれました。とてもゆったりした空気感、それはベルリンとはまたひと味違っていて、僕は大の神戸びいきなのですが(笑)、何か近いもの感じた様な気がしました。街が似ているわけでは全くないのですが、直感というか。

軽いランチをすませた後にはレコードショップ『GOSU』へ。中古が多めですが品揃えもよく、ローカルのDJに支持されている雰囲気がしっかりと伝わってくるお店。Christianとはここでお別れ。耳の調子が悪いようで、この日のパーティには来れませんでしたが、回復を祈っています。

夕方、ROBERT JOHNSON のレジデントでもあるMax Bestと合流し、僕の海外ブッキングを担当しているエージェントもベルリンから応援に来てくれて久々の再会。さらには、трипのレーベルメイトでもあるNikita Zabelinと合流してディナーへ。その後は一度ホテルに戻ってDJの準備。この日のROBERT JOHNSONは、ニーナ・クラヴィッツ、Nikita Zabelin、そして僕の3名。今回трипのパーティにニーナが誘ってくれたことには本当に感謝しているし、その期待に応えられる様なプレイをしたいと思い、気合い十分。

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僕はニーナの後の朝6時からと、ツアー初日からいきなり洗礼を受けそうな時間帯。いままで何度も彼女とやってますが、ニーナの後は初。みなさんご存知の様に大人気のニーナの後ってのはなかなか怖いですよ。想像してみて下さい……彼女のプレイが終わった瞬間、フロアから人がいなくなる、なんてこともありえるわけで……。ただ、僕の場合はそれを念頭に置いてるタイプなので意外と気にせず、常に最初はアウェイ。最善を尽くすことだけに集中。

3時からプレイ予定のニーナと3時にロビーで待ち合わせ(この時点でおかしいのですが(笑))して、一緒に会場へ。15分程遅れて(そりゃそうだ)プレイ開始。

ROBERT JOHNSONには初めて行きましたが、本当にいいお店。スーパースターDJがこぞって絶賛する理由がすぐに分かりました。音も僕が好みの生々しさのある音。MARTIN AUDIOを搭載していて、僕はその音が結構好きなのですが、なかなか扱いづらい代物でもあって。過去に日本でもいくつかのクラブに搭載されていましたが、どの箱も調整に手こずっていた印象があります。でも、今までで聴いたMARTINの中でも一番いい音が鳴っていたと思います。しかも、僕の好みの音質で。

RAなどには公表でキャパシティーが250と書いてありますが、もう少し広いですね(作りは違えどVENTくらいかと)。ベランダみたいなものがあるので、400人近くは入ると思いますが、詰め込めばもう少し。ちなみに、この日は600人ほど入ったようです。

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ニーナは小箱な雰囲気のセットかと思いきや、結構飛ばしてました。そして、フロアは終始パンパンのサウナ状態。
さて、6時になり僕の出番。思いのほかフロアの熱気は冷めずにいたので、そのままのテンションを引き継ぎつつ、エンディングに向けてキレイに着地させることを意識。テクノなラインで2時間ほどひっぱり、徐々にハウス、ミニマルの方向へ。

後半はBPM遅めのトラックやアンビエントなども混ぜつつ、キレイに着地できたかなと。細かい部分での変化や小技にも敏感に反応する感じはさすがドイツといった感じでしたが、他のDJと似た様なことをやっても意味はないし、普段通りに変則的なビートやアンビエントやダウンビートも挟みつつ、独特なメロディラインのある曲も混ぜつつ上手くまとめられたので満足。

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アンビエントの様なビートのない曲にも、ちゃんと体を揺らしてその人たちなりのリズムを刻んでるのが印象的でした(狙い通り)。3、4回のアンコールとたくさんの拍手をいただき、10:30頃に終了。その後パリへの移動があったこともあり、もうちょっとって余韻がある程度で。

環境やクラブ文化自体の差はあると思うけど、ヨーロッパの流行や有名DJなどを意識したプレイをするようなヨーロッパ・コンプレックスは抱きたくないので、僕が普段日本でやるようなセットのまま、それが通用するのか? というのが今回の僕なりの課題でしたが、ROBERT JOHNSONのナイトマネージャーから『本当に素晴らしかった』と言ってもらえたことがツアー初日にして残り4カ所への何よりの自信に繋がりました。

【4月1日@CONCRETE】

ほとんど寝れないままパリへと移動。
今回のツアーは、5公演中パリのCONCRETEを除く4公演がニーナと一緒。最初にオファーをくれたのはCONCRETEでしたが、そこが決まった後にニーナの計らいでこれだけのツアーに。CONCRETEのBrice、そしてニーナには本当に感謝しています。ありがとう。

CONCRETEまではホテルから歩いて10分ほど。そこは川に停泊する船がクラブになっていて、キャパは1000人ぐらい。僕が会場に到着した8時頃には、一旦落ち着いた雰囲気ではありましたが、まだまだ会場はパンパン。床の散らかり具合を見ると、深夜はエラいことになっていたのだろう。アテンドのMouloudから外からブース裏に行ける扉の前で『Ready?』と言われたのが凄く印象的でしたが、扉を開けると熱気と湿気で蒸気が飛び出して来るほど。そう、海外のクラブは日本ほど空調設備がしっかりしていないことが多いんです。

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中に入ると、フロアは埋め尽くされ、朝9時前とは思えない盛り上がり。いろんな人が声を掛けてくれて、頑張っていることが海外にも伝わっているんだなぁと改めて実感。
この日のCONCRETEは24時間営業ライセンスを取って最初の週末ということもあり、日曜夜までぶっ続けのロングパーティ。ベン・クロック、Rrose、Antigone、Luigi Tozziなどがそれぞれ長めのセットを披露し、僕の出番は朝の9時半から午後1時まで。

オペレーションもよく、音や機材の確認、ドリンクやブース周りのトラブル(店内は撮影禁止のためブース前などで写真や動画を撮っている人を片っ端から注意をする)など、細かい所までDJが集中できる様に考えてくれていました。僕がプレイ中も出音やモニターの音を気にかけた様な表情をすると、すぐに『大丈夫か?』と聞きに来てくれるなど、とてもやりやすいブースで、DJ自体もかなり調子よくやれたし、ラインナップがテクノ全開だったこともあり3時間半みっちりテクノでやりましたが、最後までお客さんもついて来てくれて楽しかったです。

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ROBERT JOHNSONのときよりも、かなりテクニックを活かしたプレイをしたので、手元を見にくるお客さんも多く、印象づけられたかなと。Mouloudも喜んでくれていたので良かったです。

ただ、残念だったのがベルリンに移動するフライトを早めの時間で取っていたため、13時にDJが終了した瞬間、全く余韻に浸ることもできずそのまま空港に連れていかれたこと……次回はゆっくり遊んで行きたいです。

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その後、16時頃にベルリン到着。ベルリンは8年振りぐらい。
翌週金曜のミラノまではベルリンでゆっくり過ごしていたのですが、そこではDJの予定は入れず、友人宅でゆっくりしたり、10年前に初めてベルリンでDJをするきっかけをくれたRonnyや、先日ミックスを提供したラジオを担当しているCamea。昔からの友人でもあるティム・ザビエルにちょうどベルリンにきていたTruncate。日本でも仲良くしてもらっていたmergrim、STEREOCITIことケンちゃん、YONE-KO、HITOさんなどなど、いろんな人に会いまくってた結果、全然ゆっくりできず……。

ヨーロッパツアー自体は約3年振り。今回はこれまでのツアーとはいい意味で内容が確実に違い、さらには世界でもスター的な存在であるニーナ・クラヴィッツとの公演が含まれていたため、規模も大きな会場も多い。その中で自分のテーマとして『日本でやっているプレイのまま』というのがあって、海外を意識した選曲をするのではなく、いつも通りの自分のプレイがどれくらい通用するのか。

前半戦のROBERT JOHNSON、CONCRETEともに自分らしさを出し切れたと思うし、手応えも感じることできました。そこまで大きなキャパのお店ではないけれど、どちらもクラブらしいクラブであり、素晴らしいスタッフとお客さん、素晴らしいサウンドシステム、ブース環境、全てにおいてプロフェッショナルで、世界的に評価が高いクラブである理由がよく解ります。

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みんな有名だから来るわけでも踊るわけでもなく、単純に音楽が好きでクラブに来て、プレイがよければ踊るし、反応もしてくれる。もちろん有名になれば集客が増えるのは当然だが、クラブ側のスタンスやダンスミュージックとしての基盤がしっかりしているからこそ、自然とクラブにお客さんが足を運ばせているんだなと思えた素敵なクラブでした。

両店舗のマネージャーやプロモーター、お客さんからもたくさんの嬉しい言葉がもらえて、次に繋げられるような感覚をお互いに感じられたことが何よりも嬉しかったです。