アーティストである以上、“個性的”であることは必須の条件。

誰よりも激しく、誰よりも美しく、あるいは誰よりも狂気的に……自らのアビリティを特化させ、強烈な光(あるいは闇)を伴うことで胎動し、アーティストは確固たる存在へとなり得るのだ。

例えば、ロック界のカリスマ:マリリン・マンソン然り、鬼才エイフェックス・ツイン然り、稀代のポップ・クイーン:レディ・ガガ然り。

そして今、新たな時代の“個性”のアイコンになるべき存在が、新作「Mount Ninji And Da Nice Time Kid」を手に上記の面々と同じステージへと歩を進める。彼らの名は“ダイ・アントワード”。

MCのニンジャ、ヨーランディ、そしてゴッド(元DJ Hi-Tek)の3人からなるダイ・アントワードは、1992年に南アフリカはケープタウンで結成。

アフリカと言えば、メジャーなサウンドには成り得てはいないが、近年も多種多様な土着的サウンドが注目を集める、ダンスミュージック界における最後の秘境。

そこには人間の根幹にある踊りへの欲望をかき立てる独特なダンス・サウンドから心の奥底まで響く呪術的なものまで、未開の音楽が数多く残っている。
しかし、かの地は広大なアフリカ大陸の中でもとりわけ西洋文化が進む国であり、まさに坩堝。そんななかで彼らは生まれた……のだが、ダイ・アントワードはそんなことはさておいてしまうほどの圧倒的な個性、そして存在感で耳目を集めているのだ。

その圧倒的な個性とパフォーマンスで近年世界中のフェスで謳歌している彼らについて、ここでは通算4枚目となる待望の新作「Mount Ninji And Da Nice Time Kid」の9月16日世界同時リリースを祝し、ダイ・アントワードのヤバさを、彼らならではのエピソードとともに紹介してみたい。

圧倒的な個性を伴う彼らの音楽性、それを紐解くキーワードは“Zef”

ダイ・アントワードの音楽性は、至極シンプルに言えばヒップホップ。
特にレイヴ・フィーリングを感じる部分が多々ある。

しかし、そうは言っても簡単にカテゴライズできるものではなく、ディープかつダーク、ときにファンシー、あるいはセクシー。かと思えばグロテスクであったり、グラマーだったり。実に多彩なのだが、それはトップ・アーティストであればみな同じこと。

ただ、彼らはその角度が鋭角過ぎて、それが絶対的な音楽的個性となっているのだ。
そして、そこには1つのキーワードがある。それがアフリカ貧困白人層から生まれた、いわばカウンターカルチャーともいえる“Zef”なる思想(南アフリカのスラングで呪いの言葉でもあるとか)。

カウンターカルチャー、それこそ新たな潮流の原点でもあるわけだが、アフリカ発のそれを掲げる彼らに既存のサウンドを凌駕する魅力があるというのも頷ける。

こちらは彼らの過去代表作。

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