歴史ある由緒正しき伝統的なオーケストラと、最新のテクノロジーを取り入れて進化し続けてきたダンス・ミュージック。

両者のコラボはこれまでも度々行われ、ここ日本でも3月21日にジェフ・ミルズと東京フィルハーモニー交響楽団の大々的なコラボレーションが行われたばかり。

ダンス・ミュージックとオーケストラが結びつくことによって生まれる有機的なグルーヴ、大編成ゆえのスケール感と奥行き、クラブとはまた違う会場がもたらす音響の新鮮さなど魅力は様々だが、ここではそんな相互作用が遺憾なく発揮された名演の数々を動画で振り返っていこう。

01.スクエアプッシャー × サウスバンク・シンフォニア交響楽団

WARPが誇る奇才スクエアプッシャーと若手音楽家が集う交響楽団:サウスバンク・シンフォニアとのコラボレーション。チャールズ・ヘイゼルウッドが指揮者を務めている。

2013年6月にロンドンのFairfield Hallで開催された本公演では、スクエアプッシャーのアルバム「Ufabulum」の楽曲を披露。
本来、「Ufabulum」では生楽器は使われていなかったそうだが、このオーケストラ・アレンジでは高速で精緻極まるエレクトロニックビートにストリングスやホーンが違和感なく、むしろ最初からそこにあったかのように交じり合う。
サウンドはもちろん、巨大なLEDを用いたビジュアルも見もの。

02.アーミン・ヴァン・ブーレン × ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(新国王即位式)

続いてはトランス〜EDMシーンのスーパースター:アーミン・ヴァン・ブーレンがオランダの新国王ウィレム=アレクサンダーの即位式に際し、2013年4月に披露したパフォーマンス。
国王の即位式に出演する、その事実だけでも驚愕だが(ダンスミュージック史上でももちろん異例)、そこでアーミンは世界三大オーケストラの一角を担うロイヤル·コンセルトヘボウ管弦楽団とコラボ。

オーケストラ・サウンドがアーミンの壮大なメロディーを力強く後押しし、歴史的な式典を彩っている。
イベントの途中には国王をはじめ、ロイヤルファミリーがステージに登場するサプライズも。

なんでも国王も王妃もアーミンのファンだったそうで(動画ではアーミンと握手するシーンも)、そんな経緯もあり実現したこのパフォーマンスはまさに奇跡のようなコラボレーションといっても過言ではないだろう。

03.カイゴ × ノルウェー放送管弦楽団(ノーベル平和賞記念式典)

2015年12月にはトロピカル・ハウスの若き旗手カイゴノルウェー放送管弦楽団と共演。
しかもその舞台は、毎年オスロで開催されるノーベル平和賞の記念式典(ノルウェー王族も出席)であり、もちろんEDM系のアーティストの出演は初。

“Stay”や“Stole The Show”といった自身のヒット曲をライヴで披露するとともに、より生楽器に寄せたアレンジが施された“Firestone”ではカイゴ自身がピアノ演奏で参加。

また、同式典にはシンガーのムーも出演。メジャー・レイザーやDJスネイクとともに“Lean On”をヒットさせた歌手として知られている彼女もまた、ノルウェー放送管弦楽団とともにパフォーマンスを披露している。

04.ピート・トン × ヘリテイジ・オーケストラ(BBC Proms)

イギリスの国営放送局BBCが毎夏、8週間にわたって開催するクラシック音楽フェスティバル『BBC Proms』。
1895年にスタートした本祭だが、120年にわたる歴史の中でも初となる国営ラジオ局BBC Radio 1とのコラボが2015年6月29日に行われ、同局の看板DJピート・トンがホストを担当。

ダンスミュージックの名曲の数々をオーケストラで再構築する本プロジェクトは、ファットボーイ・スリムの“Right Here, Right Now”で幕を開け、グラミー賞候補になったダフト・パンクの“One More Time”やアヴィーチーもリミックスしているフェイスレスの不朽の名曲“Insomnia”、デリック・メイによるデトロイト・テクノ・アンセム“Strings Of Life”など、世界中を沸かせた楽曲が揃っている。

なお、演奏はエイフェックス・ツインやジャイルス・ピーターソンなど、他ジャンルとのコラボに力を入れているロンドンの気鋭楽団、ヘリテイジ・オーケストラが担当した。

05.ジェフ・ミルズ × 東京フィルハーモニー交響楽団

デトロイトの重鎮ジェフ・ミルズもまた、ダンス・ミュージックとオーケストラの融合を進めてきたひとり。
そのプロジェクトは2005年に開始して以来、フランスやドイツ、オランダ、イギリスなど世界各地の交響楽団とコラボし、のべ50,000人以上を動員。

2015年3月21日には日本で初開催され、宇宙飛行士の毛利衛とのコラボによって生まれた彼のアルバム「Where Light Ends」からオーケストラ用にアレンジした“Where Light Ends”、さらには“Amazon”“The Bells”といった自身の代表曲を東京フィルハーモニー交響楽団とともに披露した。

なお、上記の動画は、2014年12月6日に開催されたイル・ド・フランス国立管弦楽団とのコラボレーションでパフォーマンスされた“Where Light Ends”の模様。
ジェフ・ミルズ曰く
「今もまだ発展中ともいえるこの大作は、宇宙飛行士毛利衛氏が1992年スペースシャトル、エンデバー号で初めて宇宙へいった時に体験した『宇宙の闇』へと私たちを導く。
 オーケストラとエレクトロニックのそれぞれの音には意味があり、機械のねじが組み合わされていくように、二つの音楽スタイルがひとつの目的に向かって融合していく」

とのこと。

本プロジェクトはもとより、ダンス・ミュージックとオーケストラの融合の果てには、人類初の月面着陸に成功したアームストロング船長のごとく、“偉大な飛躍”があるのか? 今後もその動向に注目だ。

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10000字インタビューが実現!奇才スクエアプッシャーかく語りき 前編後編