世界と戦う、それは政治、経済、スポーツ、そして文化、あらゆる面において昔から日本の至上命題として考えられてきた。
こと音楽、ダンスミュージックに関して言えば、簡単には打破できない難しい状況が続いているが、そんななかDAISHI DANCEは新作「GEKIMORI」を機に、今後は世界配信を活発化させワールドワイドな展開を目論んでいるという。
保守的かつ中庸な現行の日本のダンスミュージック・シーン。だが、今年は奇しくも世界的ムーブメントたる大型のDJフェスが上陸し、シーンも大きく変化しつつある。

そこで、彼はどう世界と向き合い、本作へと至ったのか。ここ数年で、よりDJへと特化するスタイルへとリブランディングし、新たな形へと移行した彼の今を追う。

 

 

「世界のヘッドライナーたちがトレンドを作っていくなか、今EDMもまたさらに変化の時期を迎えていると思うんです。その中で、僕は僕でトレンド感にオリジナリティを入れ込んでいければと思っています。
以前と違って、ここ数年は世界的に音色でトレンド感を共有し、展開もフォーマット化されてきている感じがする。僕自身、そういった曲も好きでDJでもよくかけますが、僕は単純に同じタイプの曲をかけ続けるDJスタイルではないので、楽曲にもいろいろなバリエーションが必要なんです。
フォーマットにとらわれず、今のトレンドも持った自分のDJセットで使える楽曲。そして、世界的なムーブメントになっている大型DJフェスの流れがいよいよ日本にも上陸してきた今年、僕自身今夏だけで12本のフェスに出演させていただくことになって、そこで即戦力になる楽曲がほしくて。そういった楽曲が今作には詰まっています」

――それは、ここ数年行ってきたリブランディングの集大成のような感じ?

「音楽が完成することはないと思うんです。常にアンテナを張って更新していかなければいけない。それは音楽性を含め、DJの選曲やパフォーマンスにも言えることで、僕は自分らしさを残しながら今後も行動できればと思っています。
ただ、その中でもアッパーなハウスというのは、僕自身学生のころからブレることなくメインにしていて、その延長線上、自然な流れの中にEDMがあると思っていて」

――自分らしさという意味では、メロディックな楽曲あり、なおかつ今回はDAISHIさんの代表曲をサンプリングした新曲があったり。

「今なおファンの方から昔の曲をかけてほしいという要望が多いんですよ。ただ、昔とは盛り上がりのツボが違うし、音圧も全然違う。だから、今回はそういった曲を今かけられるように、フレーズを弾き直して再構築しました」

――現場での即戦力ということもあり、全体的にはかなりアグレッシブな仕上がりになっていますね。例えば、“WEWON’T STOP feat. Stush”とかは特に顕著で。

「この曲は、僕の新しいキーワードになりつつある“ズンドコヤーマン”を代表する曲ですね。ダンスホールのノリはもともと好きで、これは今自分が一番作りたい、DJでプレイしたいサウンドなんです。次は“ズンドコヤーマン”だけでアルバムを作りたいくらいに」

――盛り上がりで言えば、GILLEとSHINJI TAKEDAが参加した“HAVE A NICE DAY”も外せないですね。

「この2人の組み合わせは鉄板ですからね。この曲は、僕自身大きな影響を受けているジュリアナ時代のピークタイム・アンセムのカバーなんですけど」

――それはちょっと意外……。

「以前、GILLEちゃんに歌ってもらった“LET ME FLY POW!”もそうなんですが、実は結構僕の曲はジュリアナ時代の曲のノリやエッセンスが入っているんですよ。制作の際にアイディアに困ったときは、そういった曲を聴いて勢いをもらったりするし。
それに、当時のサウンド感は今の若い世代には新鮮に聴こえると思うんですよね。この曲もフロアの反応がすごくいいし、僕の新しい定番曲になったと思います」

――カバーと言えば、レゲエの名曲ウェイン・ワンダー“NO LETTING GO”のカバーも収録していますね。

「この曲も昔から大好きで。でも、僕はハウスDJなのでなかなか現場ではかけられないし、でもカバーしたらかけれるって思っていたんです。
しかも、今回は本人に参加していただけることになって。ダメもとでお願いしてみたんですが、これには驚きでした」

――あと、今回はメロディもよりわかりやすいというか、みんなで歌えるようなものが多くなったと思うのですが。

「簡単に口ずさめるメロディというのは意識していますね。やっぱり、みんなもフロアで歌えると気持ちいいと思うんです。難解で複雑なものよりはキャッチーなメロディ、それも今は短くて簡単なシンセのメロディの方が盛り上がる。
それは以前にはなかった傾向ですね。今はみんなインターネットで世界中のフェスを見ることができる時代だし、DJだけでなくお客さんも新曲をチェックしている。そうやってみんなアンセムを覚えて、フェスやフロア大合唱して一体感を楽しむ時代になってきているので、その要素は素直に取り入れていますね」

――あらゆる面で現場での機能性を重視した1枚になっているわけですね。

「音楽性だけでなく、DJのパフォーマンスやステージング、演出など、フロアを作る様々な要素が今世界では急加速で進化しているんです。それはフェスはもちろんクラブにおいても。僕はそれを自分なりの感覚で表現していきたいんですよね」

――そのキーワードとなるのが、今作のタイトルでもある“GEKIMORI”?

「これは学生時代から使っている言葉で、本来漢字(激盛り)だったものを数年前から英字にしていて。
今は海外でプレイすることも増えたし、SNSも世界各国の人が見てくれていて、みんな意味はわからないんだけどそのフレーズが写真などのニュアンスで伝わっていたり、その感じがいいなって思っていて。
それに、今はDJプレイ中も“GEKIMORI”フラッグを振り回すとすごく盛り上がるし。この言葉は自分のアイコン、キーワードになっていますね」

――あとは、今回のジャケットも前作に引き続き自分で撮影されたんですよね。これはどこですか?

「今回は岩手県の遠野です。タイトルを『GEKIMORI』に決めたときから、森の写真にしようと思っていて、秋田県の黒又山とか候補地をいろいろと出していたんですけど、遠野が一番ベストで。
これまで様々な場所に撮影しに行きましたけど、ここは一番と言っていいぐらい良かったですね。日本の原風景が残っていて、どこを撮っても激森がある。
今回は、最近現場でも使っているマルチコプター(空撮用のラジコンヘリ)で、ミュージックビデオの撮影もしたので、ぜひそれもYouTubeで見てほしいですね」