2012年10月に突如リリースされたEP「Sayonara Twilight」でiTunesダンスチャート1位を獲得。以降、5作連続で同チャート1位、総合チャートでも毎回5位以内にランクインするなど快進撃を続けてきた覆面ユニット、CTS。だが、その正体も目的もいまだ謎のベールに包まれている。ベスト盤「THE BEST OF CTS」をリリースする彼らの正体に迫る!

◯(丸)と△(三角)、□(四角) をかたどったLEDの覆面を 被った3人が機材を操り、歌を唄う。その様は、SFの世界から飛び出してきたように非現実的でファンタジック、そして、ミステリアスだ。彼らは、3名の名前であるCircle、Triangle、Squareの頭文字をとってCTSというが、それ以外の情報は謎に包まれている。唯一わかっていることは、フロアに通用する最新のダンス・ミュージックとテクノロジーを駆使し、ポップを絶妙なバランスで融合した“日本産”の楽曲で、シーンを席巻していることだ。その実績は、iTunesダンスチャートでは5作連続で1位、総合チャートでも最高3位を記録するなど枚挙に暇がない。そのビジュアル面、サウンド面の両方でいまもっとも衆目を浴びているCTS。彼らは一体何者なのか? この疑問に答えるべく、CTSのプロデューサーを務めるDJ KAYA氏、ビジュアルやクリエイティブ、演出面を手掛ける宮下俊之氏の2人に話を聞いた。

――まず誰もが気になっているCTSの結成の経緯について教えてください。

DJ KAYA(以下、K)「僕はこれまでDJを16年ほどやっています。日本でも海外でもプレイしてきて、僕なりの経験や、活動する現場での話になるのですが、フロアでプレイすることができるカッコいいJポップって存在しないなって感じたんです。海外ではチャート上位のダンス・ミュージックが、普通にフロアでもプレイされます。日本ではクラブシーンと国内チャートが直接的に繋がっていない。それを純粋に打破したいと思ったのが最初のきっかけで、デビュー曲“Sayonara Twilight”が生まれました」

――基本的に楽曲制作はCTSの3名が行っているのでしょうか?

K「すべての楽曲はCTSが作っています。僕は楽曲の企画や方向性であったり、DJ~プロデューサーとして、現場の感覚や時代の流れをアドバイスさせてもらっています。僕と宮下くんとCTSの3人で、楽曲制作の前にアイデアを練って、彼らが形として完成させてくるという流れになっています」

――宮下さんはCTSとどのようなきっかけで関わり始めたのですか?

宮下俊之(以下、宮下)「会社の会議で、後に1st EPとなる“Sayonara Twilight”を聞いたのが最初のきっかけです。その会議にはスタッフも何人かいて、賛否両論あったのですが、自分にはそのEDM的なサウンドの鳴りと、歌のハマり、歌詞の世界観、全体のグルーブ感だったりに、新しさとオリジナリティを感じて、これはなにか面白いことができるんじゃないかって思いました」
K「そのときは、まだアーティスト名もビジュアルも世界観も決まっていなくて、ただ曲だけがあった状態です。先入観も持たれたくなく、音へのフラットな評価が欲しかったので、最初は僕が関わっていることも明かしていませんでした。そんな中でDJの手に行き届くようにプロモーションを開始した所、誰の曲かもわからず、日本の曲なのに、某クラブではDJチャートの1位になるくらいプレイされたんです」

――こういった世界観やビジュアルのイメージはどのように生まれましたか?

宮下「最初の曲である“Sayonara Twilight”、 CTSの楽曲がどういう形でアウトプットできたら面白いかを逆算した結果、あの造形、世界観に行き着きました。最終的な決め手は、試行錯誤しているときに、夢に○と△と□が出てきたんです(笑)。できるだけ国内外問わず、老若男女に受け入れてもらえるよう間口を広げたかったので、固有名詞ではなく誰もが知っている記号的でキャッチーなCircle、Triangle、Squareという言葉で、覚えやすい名前にしました」

――CTSがデビューした際は、ちょうど海外ではEDMのムーヴメントが起きていた頃でしたが、その辺は意識されましたか?

K「時期的には被っていますが、最初にEDMを作っているという意識はまったくなかったですね。それよりも邦楽としてのダンス・ミュージック。フロアでも通用するJポップという意識が強かったです。」

――そういった意味では、歌詞の世界観が非常に面白いな、と感じました。世界の過去も未来も知悉したような教訓めいた歌詞や、哀愁が漂っていたりとダンス・ミュージックでは珍しいですよね。

宮下「歌詞はトラックと同じくらい注力している部分です。見た目が見た目なんで、生身の人間が言うのと、伝わり方が異なってくると思いますし、ある種フラットに受け取ってもらえるので、結構思い切ったことも言えちゃう。“闇と光”を歌っていると言って頂いたこともありますが、常に“闇だけにはならない”よう、それぞれの楽曲でその割合はバラバラですが、必ず最後には“光”が見えるように意識はしています。ダンス・ミュージックでありながらも、歌詞が注目されるのはうれしいですね。本作にも今回が初めての公開になる歌詞カード、ブックレットが同梱されるんで、楽しみにして頂けたらと思います」

――ボーカロイドの逆アプローチ的な要素もあって、単純なダンス・ポップでは括りきれない世界観がCTSにはありますよね。

K「僕も宮下くんも、CTSの3人も通ってきたカルチャーがまったく違うので、それが混ざり合いながらも本当にギリギリのバランスで成り立っていると思います。そういった様々な要素のなかで、CTSの3人と僕と宮下くんで、かなり感覚的ではあるんですが、“CTSらしさ”という判断で最終的に楽曲が完成していきます。その世界観だけはブレないように気をつけていますね」

――本作「THE BEST OF CTS」は、メジャーでのファースト・アルバムになりますが、これまでのヒット曲も網羅したベスト盤になっています。これまでの活動の区切りと新たなスタートになると思いますが、改めてCTSの今後の目標を教えてください。

K「あからさまに海外っぽい曲を作るのではなくて、日本らしさを意識しつつダンス・ミュージックを広めていきたいですね。CTSをきっかけにダンス・ミュージックを聴く人が増えてくれるとすごくうれしいです。そして、日本の曲がクラブでもっとプレイされて、壁がなくなれば」
宮下「紅白に出場したいです」
K「『紅白歌合戦』に出てるのに、さらに『Tomorrowland』にも出ちゃうみたいな(笑)。かなり大袈裟ではありますが、そういった両シーンをリンクさせるような、様々なジャンル、シーンをクロスオーバーできるようなアーティストが目標ですね」

我々はクラブ・シーンとJポップ・シーンを無意識のうちに別物だと認識しがちで、実際に現状でその壁は存在する。そんな壁を失くすためにやってきた使者がCTSなのかもしれない。国境もジャンルも取っ払う彼らの音楽がどこまで拡大するか、ぜひ注目してもらいたい。