ミュージシャンとしての生命を断たれる最後にもモチベーションが高い段階で音楽制作ができたっていう。
そういうアーティストはなかなかいないと思うんですよね。

——本当にそう思います。決して不運なわけじゃない。

アーティストとして自分の作品を自分の意思で最後の表現を残すことに成功した。
アウトテイクのようなものを本人の意思とは関係なく出されたわけじゃなく、完全に自分たちの手で最後まで面倒を見て作品を世に出すことができた。
これ以上のことはないと思います。

——ミュージックビデオ(MV)も拝見しましたが、“LAY YOUR HANDS ON ME”のMVには川島さんの愛娘が登場しているんですね。それもまた愛おしくて。

ベタなんですけどね(笑)。これもすごくラッキーなことに、彼女が絵に描いたような天真爛漫な子で。

MVもこれが最後になるし、打ち合わせも本当に緊張しました。これに関してはどうしても他人に委ねなければならないし、自分の手を動かすことで責任が持てるわけではないので。

なかなか話がまとまらなかったんですけど、“娘さんを使ってみますか”というアイディアがポンと出て。それはあまりに禁じ手というか、ズルくないかと思ったんですが、今回に限ってはそう考えるのはやめようと思ったんです。

それに彼女は川島くんの何かを受け継いでいる存在であり、彼女を表現することはこの曲にもあっているんじゃないかと思って。

——川島さんが出演している“STARS AND CLOUDS”のMVとセットにして見るとさらに感慨深いものがありました。

“STARS AND CLOUDS”は年が明けてから撮影したんですが、それも突然のことで。

明確なアイディアがあったわけじゃないんだけど、その日一日に賭けてみたんです。それがあのMVなんですけど……でも、その結果こうして残るものができた。

それが僕らが生きた証でもありますし本当によかったです。

——この一年間は中野さんにとってどんな時間でしたか。Twitterを見ているとその胸中は本当に複雑だったのだろうなと思ったんですが。

真っ只中にいると感情に持っていかれそうになる瞬間と、目の前にあることをやらなければという思い。そういった様々なことを切り離す努力をしなくてはいけないことの連続なんです。

それこそステージに立てばそんなことは感じさせたくはないんですが……僕らの最後のライヴは山口の『WILD BUNCH』で、その時点では11月にワンマンを計画していたんですけど、僕はそれは難しいだろうなと予想していて。

そして、そのときはそれをファンに言いたかったんです。なぜなら、見れなかったと思う人がひとりでも少ない方がいいなと思って」

——確かにファンの心理としても知りたかったでしょうね。

でも、それを言ってしまうとライヴができているのに心配してしまう人もいるだろうし、発言することが難しい時期を過ごしていたこともあって言わなかったんです。
そういう意味でもこの1、2年間は本当に濃い時間でしたね。

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——活動終了後のことは考えていますか?

BBSとしてやってきたことは最後まで青春だったと言いましたけど、それに匹敵するものを見つけるのは正直難しいだろうと思っていて……

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