先日、ノーベル文学賞を受賞し、ノーベル賞実行委員会への音信不通や、授賞式への欠席など、大いに世界を沸かせたボブ・ディランが、ウィリアム・シェイクスピアを超えた!? と熱狂の渦中にあるようだ。

彼は多忙と先約を理由に式典に出席しなかったことを明らかにしたが、ディラン氏は当初、このノーベル文学賞受賞の事実に対して気乗りしない様子だったという。

しかしながら、12月10日のセレモニーで発表された、ディラン氏承諾済みの“感謝のスピーチ”によると、
「自分の受賞のニュースは大げさに騒ぎ立てられていると感じている」
としつつ、最初にこのニュースを耳にした時を思い起こすと同時に、受賞に関して、
「言葉にならない。とても光栄だと思っている」
とのこと。

さらに続けて、
「これらの事態を想像もできなかったし、自分にこんなことが起こることも予想外だった。これまでにもし誰かが、いずれノーベル賞を受賞するような嘘みたいなチャンスがあるかもしれないと言ってくれていたならば、それは月の上に宇宙服なしで奇跡的に降り立つことができるかどうかってくらいの可能性だと考えただろうね。
ともかく――、このサプライズな一報を受けた時は、ちょっと先約があって遠くに出掛けていたのさ」

と綴ったという。

このアイコニックなソングライターは、自身を劇作家:シェイクスピアになぞらえる。

「シェイクスピアは、自分自身が文学を書いているという認識はなかったらしい。彼の言葉は、全て舞台のために書かれていたんだ」
と。さらにこう続ける。
「これまでにたったの1度も自分自身に問いかけたことなんかない。――俺の歌は文学か?……なんてね」

「スウェーデン王立科学アカデミーに感謝を述べたい。この壮大なテーマと自分への自問自答の貴重な時間をもつ機会を与えてもらったこと、そして究極的には、この驚くべき回答を与えてくれたことに――」

ディラン氏は最後にこうまとめている。

dylan

ディラン氏の受賞を讃える場面を含む授賞式典は、YouTubeで生中継された。彼は、事前に友人でもあるパティ・スミスに自分の代わりに出席しパフォーマンスをして欲しいとお願いしていたという。

その願い通りパティが授賞式に出席し、ディランの“A Hard Rain’s A-Gonna Fall”を歌った。彼は当初、自分の曲を歌うつもりだったが、10代の頃からディランに憧れていたことから、この授賞式のオファーを受けた後、ディラン氏の曲を歌うことに決めたという。
演奏中に、歌詞を忘れるというハプニングに見舞われたが、本人曰く、「とても緊張した」とのこと。

またもしもディラン氏が、ノーベル文学賞の受賞賞金=約9400万円を受け取る意向があるならば、授賞式から6ヶ月以内に受賞部門に関する講演を行わなければならず、その条件が満たされなければ、賞金を受け取る権利は消滅してしまうという。

<次ページ> ディラン氏の“感謝のスピーチ”全文

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