表参道駅から徒歩1分という好立地にできた新ベニューVENT。メインフロアには高品質の調音パネルで整えられたルームアコースティック(音響特性)に、世界初の新機構SRスピーカーを導入。さらには防音に対しても緻密に計算されるなど、同店の音に対するこだわりは相当なもの。
8月26日に開催されたオープニングパーティでは、コアなダンスミュージックファンを絶えず熱狂させ続けてきたドイツの人気クラブRobert Johnsonのアタを招聘。

世界に名だたる名門を手掛けてきた、いわば音のプロ中のプロである彼は極東の最新サウンドシステムをいかに判断したのか……。また、その他にもクラブにまつわる国内外の最新トピックについて、彼ならではの視点でいろいろと語ってくれた。

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――率直にVENTのサウンドシステムはいかがでした?

とてもよかったよ。パーティとしても成功したしね。素晴らしいオープニングパーティだった。

スピーカーは最上級のものだと思ったよ。そこから放たれる音はとても柔かく、温かみを感じさせるものだったからね。スピーカーにとって最も大事なことは、音が冷たくないことなんだ。

――実際にプレイしてみて、このサウンドシステムはどんなジャンルがフィットすると思いました?

どんなジャンルのサウンドも合うと思うよ。ただ、僕は東京のシーンで何が流行っているかわからないから、詳しくは話せない。

あとは、店内のロケーションも素晴らしいよね。いつか僕もここでパーティをしたいと思ってる。

――ルームアコースティックも最高品質の調音パネルで整えているようですが、音の反響に関してはいかがでした? サウンドシステムにとって音の反響は大敵ですが。

エコーは確実になかったね。そこは素晴らしかった。
最近のヨーロッパでは音響や防音設備よりも照明にお金をつぎ込むクラブが多いんだ。僕自身、クラブはやはりいい音を出すために店内を整えることが重要だと思うし、だからこそVENTのようにスタジオ並のしっかりとした防音設備や音の邪魔をするようなものを極力抑えた造りは本当に素晴らしいと思う。

あとは、常に店内を清掃をしてクリーンに保っているところもいいよね。

――あなたがディレクターを務めるRobert Johnsonと比較してみてどうですか?

どちらもいいクラブだと思うよ(笑)。VENTの音響はとても柔らかく、Robert Johnsonは高音がパキッとしていてクリアだ。それは人それぞれの好みであって、どちらが優れているかは判断できない。
例えば、赤ワインと白ワインの違いみたいなものさ。ただ、どちらも高級ワインであることは間違いないけどね。

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――では、今回のオープニングパーティのオーディエンスの反応はどうでした?

日本のオーディエンスのリアクションはいつも美しいよ。今回もみんな飛び跳ねたり、なかには歓喜のあまり泣いている人もいたね。
つまり、みんな普段とは違う自分を解き放っていたんだ。どのDJもとてもいいプレイをしていたからね。

――Robert Johnsonは今年で17年を迎えましたが、どんなクラブを目指しているんでしょうか? もし、新しいプロジェクトなどあれば教えてください。

僕たちは将来のプランを作らないんだ。この16年間一度もそれを設計はしたことない。だから、展望なんてものはないんだよね。それが大切だと思ってる。
この方法で今までやってこれたし、これからもこのスタイルでやっていくよ。

――Robert Johnsonは、ダンスカルチャーの成長・発展という意味では、世界的にも大きな役割を担った重要なクラブだと思います。同じようにロンドンの名門であるFabricは今閉店の危機に陥っていますが、これについては?

それはとても政治的な問題だよね。僕は専門家じゃないからたいしたことは言えないけど、Robert Johnsonでやっていることと言えば常に新しい人を呼び込むことなんだ。そして、ただただ良質な音楽を良質なフロアと良質なサウンドシステムに提供すること。

Fabricについては、個人的には大きすぎると思う。多くの人が大きなクラブやフェスティバルに行く理由はわかるんだけど、でも僕はそれが得意じゃないんだ。

――あなたが考える理想のクラブカルチャーはどのようなものですか?

これはあくまで個人の意見であり、マジョリティではないと思うけど、僕は基本的に6時間以上クラブにいるのは好きじゃない。だから、朝6時までの営業は長過ぎると思ってる。
終盤は当初の状況とは別物になってしまっているからね。だから、僕はどんなパーティでも止めることが大切だと思うんだ。

例えばディナーに行ったときに、アペタイザー、メイン、そしてデザート。そこで食事を終えるように、クラブも朝6時とかでパーティを止めることが重要なんだ。

――最後に日本のファンにメッセージを。

日本のことは大好きさ、日本のみんなのこともね。おいしい料理とオープンマインドな人々は最高だ。
いつも日本に帰ってこれることを光栄に思ってる。ありがとう。

Interview Naoki Serizawa
Photo By Yoshihiro Yoshikawa

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