新鋭の躍動からベテランの台頭。メジャー、アンダーグランド問わず、じつに様々な才能が光り輝いた2015年。
今回FLOOR編集部では人物に焦点を当て、もっとも輝いていたアーティスト10組をピックアップ。

「FLOOR ARTIST OF THE YEAR」として3回にわけて紹介し、2015年のシーンを振り返る企画。
第二回となる今回は3組のアーティストをピックアップ。

04|GRIMES

2015年末に舞い込んだ
次世代アイコンの真なる才能

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DIYな女性と言ってもいまやそれほどのトピックにはならないが、グライムスを語るうえでは、それは欠かすことのできない情報だ。
カナダはバンクーバーを拠点に活躍する彼女は、独学で作曲を学び、宅録で作品を制作しはじめ(いまも宅録だとか)、その独特な世界観が絶賛され、2012年リリースの「Visions」でブレイク。

あらゆる音楽性が入り乱れながらも、ポップセンス抜群という、えも言われぬ作風で話題となったわけだが、2015年も押し迫った11月に発表された新作「Art Angels」では、アーティスティックでカオティックな一面を覗かせながらもポップさ倍増、よりシンプルな方向へ押し進めるという離れ業をなし遂げ、世界中で大きな話題に。

2015年も残り2カ月というわずかな時間ながら、そのインパクトは大きく、Pitch Forkの年間ベストディスクではケンドリック・ラマー、ジェイミーxxに続く3位、NMEではなんと1位を獲得した(ちなみにNMEでは前作リリース時2012年のときも「Most Exciting News Bands of 2012」で1位に輝いている)。

ポスト・インターネット世代の新アイコンと騒がれ早3年。2014年には完成させたアルバムを作り直すとアナウンスし一時音楽ファンを心配させることもあったが、その不安も一掃させる今作の出来。
次世代アイコンの面目躍如というか、彼女の存在感は今作で確かなものであることを示し、2016年以降のシーンにも影響を与えるであろうことは間違いない。

05|DRAKE

米アーバン・シーンの代名詞
記録ずくめの2015年

05_drake

自身のInstagramに突如リリースを示唆する投稿がされるやいなや話題騒然。デジタル配信されると3日間で49万5千ダウンロードを記録し、全米アルバムチャートでも1位を獲得したドレイク通算4作目となるアルバム(本人はミックステープと考えている)「If You’re Reading This It’s Too Late」。

今作はUSだけでなくUK、カナダ、オーストラリアなど全世界32カ国のiTunesでも1位を獲得し、2015年リリースのアルバムで初のミリオン作品に(彼にとっては4枚目のプラチナディスク)。
結果、ビルボードの年間ディスクでも4位を記録したが、2015年はそれ以上にドレイクにとっては記録づくめの1年だった。

というのも、今作収録の全17曲が全米R&B・ヒップホップ・チャート50位以内にエントリー(彼がゲスト参加した楽曲を含めると一時は21曲もランクイン)。
また、全米チャートには彼が歌う楽曲が14曲もランクインし、それは1964年のビートルズ以来の快挙。
さらにはアルバム・セールス、トラック・セールス、ラジオ・エアプレイ、ストリーミング、SNSの反応などを総合して発表される全米アーティスト・チャートではラッパーで初めて1位を獲得。

そして、2016年に発表となる第58回グラミー賞でも最優秀ラップ・ソング、最優秀ラップ・アルバム他、3部門にノミネートと、様々な偉業を成し遂げた。

ケンドリック・ラマーとともに、2015年のアーバン・シーンにおけるドレイクの活躍も見逃せないトピックだ。

06|Jamie xx

新世代の使者が作り上げた
ロックとダンスの新たな光明

06_Jamiexx

2000年代以降、様々なアーティストがあらゆる形式を作り上げたロックとダンスミュージックの融合。
2015年、その最新形であり、同時に至高のハウスミュージックとも言えるようなサウンドをアルバム「In Colour」で見事表現したジェイミーxx。

ザ・エックス・エックスでの活動を経て、ソロ名義としてはデビュー・アルバムとなった本作は、Pitch Forkでケンドリック・ラマー「To Pimp a Butterfly」に続く2位(リリース時の同誌の採点では9.3という超高得点をたたき出している)。
さらにNMEでは3位、TIMEでも9位、ダンスミュージック系のMixmagにおいても1位と各メディアの年間チャートを賑わせた。

2010年にイギリスで最も権威のある音楽賞「マーキュリー・プライズ」を獲得しているザ・エックス・エックスのメンバー兼プロデューサーとして活躍しながら、フォーテットやアデル、レディオヘッドらのリミックスで高い評価を獲得。
その後ギル・スコット・ヘロンの遺作のリエディット、そして自らのシングル、さらにはドレイクやアリシア・キースのプロデュースで大きな話題をよんだ彼だが、待望のソロアルバムをもって、天才の名を欲しいままにすることに。

バンドとソロ、双方の活動でメジャー〜アンダーグラウンドを行き来する彼が今作で見せたロックとダンスミュージックの美しい調和は、2015年におけるエポックメイキングなサウンドであり、これが今後どう紡がれていくのか、それもまた興味深い。

<記事前編はこちら>
FLOORが選ぶ2015年もっとも輝いたアーティスト10人|Part.1