今年、逗子海岸はその様相が一変した。

以前から懸念されていたビーチにおける様々な問題に対して、

行政は大きな決断を行ったのだ。それにより、

日本一規制の厳しいビーチとなった逗子海岸はいま……。

すでに新聞や雑誌、ワイドショーなど様々なメディアでも報道されている通り、今年から神奈川県逗子市では新たに「安全で快適な逗子海水浴場の確保に関する条例」が設けられた。これは、逗子海岸内では海水浴場開設期間中、音楽(スピーカー等の拡声装置の使用)と飲酒(砂浜での飲酒・バーベキュー)を禁止し、さらには入れ墨( 他人を畏怖させ海岸利用を妨げるもの) の露出を規制するという条例である。そのため、逗子海岸は夏を盛り上げるビーチパーティのメッカから一転、日本一規制が厳しいビーチとなったのである。

確かに多くの人々が楽しむ場所だけに、治安の悪化や風紀の乱れによる様々な危険性を考慮することは十分に理解できる。そこには、子供のことを考えれば何よりも安全性を重要視する親御さんがたくさんいて、なおかつビーチならではの開放感のなか、ゆったりとして落ち着いた時間を楽しみたい人もいるわけで、騒がしいことなどもってのほか。そういう意味では、この条例によって恩恵を受ける人もいるわけだが……。

とはいえ、今年制定されたこの条例の余波はすでに至るところに表れている。あまりに厳しい条例のため、逗子海岸の今年の利用客は8月頭の時点で例年の半分以下となり( とりわけ若者の利用者が激減)、一方でそれに呼応するように由比ガ浜をはじめとする近隣の海岸はこれまでにない盛況を迎えている。逗子海岸では音楽、そしてお酒が楽しめないから隣の由比ガ浜に行けばいい、そう単純に考える利用客が数多くいるということだ。しかし、果たしてそれでいいのか。逗子市で今年から新たな条例が設けられたように、このままの状態でいればいつか由比ガ浜のある鎌倉市でも規制が始まる、逗子と同じ轍を踏んでしまうことになりかねないのではないか。

逗子市による条例に反発することは簡単だ。しかし、それはこの問題に対して何の解決にもならないのではないか。では、ビーチを愛するもの、音楽を愛するものとして、まず何ができるのかと言えば、それは他人に迷惑をかけず、そして自然を大切にすること。つまり、人として最低限のマナー、節度を守ることが重要なのである。ビーチは誰か1 人のものではなく、あくまでみんなもの。子供から大人まで、誰もが楽しめる場所がビーチ。もちろん、そこには音楽があって、お酒も自由に楽しめれば最高だ。ただ、そのためには利用者たちがみんなでビーチを守っていく、そんな意識が必要なのではないか。最高の場所をみんなで作っていく、“ 逗子海岸がダメだから由比ガ浜で” なんて軽い気持ちでいてはいけない。それは、ビーチだけでなく現代社会においてはあらゆる問題に対しても言えることで、人としてのマナーをしっかりと守ることができれば、すべてが今よりも確実に、もっともっと楽しむことができるだろう。

行政も一概にただ抑圧しているわけではない。この条例も様々な問題を考えた上でのものなのである。であれば、その問題の懸念を払拭することができれば、そこからまた新たな道が生まれる。誰もがマナーを守り、美しく、楽しいビーチをみんなで作っていく。そうすることできっと近い将来、また逗子海岸でもお酒とともにダンスミュージックが楽しめる、最高のビーチパーティが再び開催されるときがきっとくるはずだ。

 

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変わりゆくビーチに関して

音霊 OTODAMA SEA STUDIOからのメッセージ

9年間、音霊 OTODAMA SEA STUDIO でビーチパーティを開催し、お陰様でOTODAMA に毎年来ることを楽しみにしてくれる人が増えてきました。海外では当たり前のように行われているビーチパーティが様々な理由で日本では開催が非常に難しくなってきています。問題なのは音楽でもビーチパーティでもDJ でもないはずです。一部マナーの守れない人達の行動が様々な問題を起こしています。幕張で開催される『OTODAMA BEACH PARTY』では来場してくれる人達としっかりとマナーを守って楽しく騒げる場所を作っていきたいと考えています。ビーチパーティを楽しみにしていたけど今年の夏はどこであるの? そんなみなさんと一緒に最高のパーティを!