|1| 主要音楽メディア編

1年を振り返ると、やはり才能あふれる新しいアーティストからベテランまで実に良作が多かった2014年。年末ともなると、各音楽専門メディアが趣向を凝らした2014年度の各種音楽ランキングを発表しており、音楽ファンを楽しませてくれている。

今回はFLOOR編集部が独断と偏見で選んだ海外メディアの各種ランキングをセレクトし、2014年度のシーン、主にダンスミュージックに重点を置いて、その傾向を読み取っていきたいと思う。

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2013年は「Harlem Shake」、2014年はトゥワークが猛威を振るう!

2014年の象徴的な1曲としてピックアップしなくてはいけないのは、DJスネークとリル・ジョンによる「Turn Down For What」だ。
2013年からホットなキーワードとして耳にすることが多かった“トゥワーク”が、本格的に一般層にも認知されるきっかけとなったのは同曲に負うところが多い。2013年12月にリリースされると徐々にランキングをあげていき、アメリカの「Billboard Hot 100」の最高位4位を筆頭に世界中で大ヒットを記録し、トゥワークムーヴメントを巻き起こした。
結果、Billboardの「Hot Dance/Electronic Songs」の年間1位に獲得(年間総合チャートでも15位)。さらに「ローリングストーン誌」の「2014年ベストソング」でも堂々の2位!
DJスネークはまだアルバムのリリースがないため、他のランキングやUKのチャートでは目立ったものはないが、ディロン・フランシスとの「Get Low」も2014年度にヒットさせているだけに、このムーヴメントが2015年度以降どのような動きを見せるのか、注目だ。

90年代リバイバル!? ハウス~ディスコの波が本格化

昨年の話題をかっさらったディスクロージャーのアルバム「Settle」収録の「Latch」がBillboard各種ランキングで猛威を振るったのに呼応するように、UKのバンド:クリーン・バンディッドの「Rather Be」(東京で撮ったMVも話題に)も今年ロングヒットを記録。UK産のディスコティックなサウンドがUSにも浸透した顕著な例となった(それぞれ「Hot Dance/Electronic Songs」の年間チャートが5位と4位)。

また北欧ディスコの雄:トッド・テリエのファーストアルバム「It’s Album Time」(「SPIN」16位/「NME読者投票」2位/USアマゾン17位/収録曲「Johnny and Mary」がPITCHFORK13位)が、今年大躍進を遂げたこともダンスミュージックファンにとっては朗報だったろう。
EDMのようなド派手なサウンドが流行する一方で、90年代フレーバー色濃いディスコサウンドの動きがメジャーシーンにも顕著だったのは、非常に面白い。カナダのデュオ:クローメオやA・トラックとアーマンド・ヴァン・ヘルデンによるビッグユニット:ダックソースの動きもこの範疇と言えそう。

昨年のダフトパンク「Get Lucky」の影響もあるのか、ファレル・ウィリアムスの最新アルバム「GIRL」、その収録曲の「Happy」(Billboard年間総合チャート1位)が社会現象となったこともこの項に加えておきたい。

やはり女性は強し! 百花繚乱に咲き誇ったフィメールアーティスト

YouTubeの音楽部門の視聴ランキングでは、なんと1~10位のうち8つまでが女性アーティストのもの。曲の良し悪しに加え、カワイイ、美しい映像はやはり正義。
ニッキー・ミナージュの「Anaconda」なんて、とにかく“ケツ”。男性の視線を釘付けにしたのは間違いない。

実際に2014年は女性が強かった。イギ―・アゼリア(Billboardの「Top New Artist」に選出)やメーガン・トレイナー、ティナーシェ(SPIN8位/TIME5位ほか)といった新しいスターがシーンを賑わせてくれたのは象徴的な出来事のひとつ。
またビヨンセが2013年末にノープロモーションで突如リリースしたアルバム「BEYONCÉ」から「Drunk in Love feat. Jay Z」が、ローリングストーンズ誌のベストソング1位を獲得(PITCHFORKでも数曲ランクインしたほかTIMEのベストソングで「Flawless Remix」が1位)。
“脱カントリー宣言”したテイラー・スウィフト(「Blank Space」がローリングストーン6位/アルバム「1989」がTIME4位)、アリアナ・グランデといったアイコンたちも新作をリリースし、好調なチャートアクションを記録。またシーア(ローリングストーン15位ほか)、ジェニー・ルイス(ローリングストーン5位/アルバム「The Voyager」がSPIN4位、TIME8位)、ラナ・デル・レイ(NME18位ほか)、セイント・ヴィンセント(NME2位ほか)、FKAツイッグス(アルバム「LP1」がTIME1位)などアートポップ色が強いシンガーソングライターや、MVでキレッキレのダンスを披露したカイザなどの活躍も目立った。

EDMはやはり現場の盛り上がりが一番なのか

EDMの隆盛は2014年も継続。日本では「ULTRA JAPAN」の開催もあり、本格的な盛り上がりを見せたのが印象的ではあったが、全世界のチャートアクションはどうだったのか。

アルバムリリース単位で見ると、アフロジャックのファーストアルバム「Forget The World」、スティーヴ・アオキ「Neon Future.1」、カルヴィン・ハリス「MOTION」、デヴィッド・ゲッタ「Listen」とシーンの超大物が新作をリリースする豊作の1年だった。
もちろん楽曲単位でもそれ以上のアンセムが生まれたわけだが、“1年”というスパンと“全ジャンル”というフィールドになってしまうと、アヴィーチーの2013年のアンセム「Wake Me Up」がBillboard年間総合チャートの22位が目立つくらいで、アレ?といった感じ。
「Hot Dance/Electronic Songs」に目を移すと、カルヴィン・ハリス「SUMMER」が3位、マーティン・ギャリックス「Animals」が8位、ティエストの「WASTED」「RED LIGHTS」が上位に食い込んでいるが、他の総合チャートではいわゆるEDMシーンのアーティストの名前はほとんどなし。

しかし、ゼッドが客演したアリアナ・グランデ「Break Free」やアレッソの「Heroes」に客演したトーヴ・ローの「Habits」がヒット。またコールドプレイの「A Sky Full Of Star」をアヴィーチーがプロデュースするなど、その影響力は随所に垣間見ることができたと言える。
またカルヴィン・ハリス、デヴィッド・ゲッタの新作はともに11月のリリースだったこともあり、年間ランキングに反映されにくい要素があったことも考慮すべきかもしれない。

アンダーグラウンド

アンダーグラウンドのカリスマの動きも面白かった2014年。その最たるものが13年ぶりとなるニューアルバム「Syro」をリリースしたエイフェックス・ツイン。「もう彼のアルバムは出ることがないのでは?」と言われていただけに、リリースそのものが“事件”だった。
リリースのアナウンスで世界中の音楽シーンが揺れた、と言っても過言ではないフィーバーが巻き起こり、その狂騒にも似た期待に違わぬ懐古趣味には陥らない音楽性は、あらゆる音楽メディアに絶賛を受けた。

それと同様に2014年のシーンをアンダーグラウンドから揺るがしたのが、カリブー。IDM、フォークトロニカ、エレクトロニカの旗手として、長年活躍してきたカリブーの4年ぶりの新作「Our Love」は、エイフェックス・ツインの「Syro」以上の高評価を獲得。
こういった作品やアーティストがしっかりと評価される土壌があるのが日本とは絶対的に異なる点であり、非常にうらやましくも感じる。

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|2| ダンスミュージックメディア編
ダンスミュージックを専門にするメディアの2014年のランキングは?

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