ミニマルとは“最小限”という意味で、芸術分野における無駄や説明的な部分を省きシンプルな形で表現する志向をミニマリズムと言う。いまは亡きスティーヴ・ジョブスが掲げたAppleのデザインに対する哲学も“Keep it Simple”であった。それはデザインをシンプルにすることで作品そのものの本質や魅力をストレートに伝えるためだ。

このミニマルという手法は、アートや建築、ファッションなどの分野にも用いられる概念で、音楽シーンでは、諸説あるが1960年代にアメリカの音楽家:スティーヴ・ライヒにより提唱されたとされる。そして、このミニマルというアートフォームは、ダンスミュージックというフィールドにおいて、文化的にも、音楽作品的にも、もっとも重要なファクターのひとつとなった。

その音楽は、最小限に厳選したフレーズを反復させ、一音一音はシンプルなのに流れる時間の中でときに美しく、ときに不思議な響きを産む。偏差値の高いマニアックな音楽だが、その魅力の深みにハマると中毒性の高い音楽でもある。

minimaltechno

90年代〜00年代:多彩な実を結んだミニマルの血脈

ダンスミュージック・シーンにおけるミニマルの歴史を足早に遡ると、1990年代初頭〜中期にかけてアシッドハウス・ムーブメントの衰勢とシカゴハウスの商業音楽化が進み、そのカウンターとも言えるタイミングで産まれた。

大雑把に言えば、ドイツを拠点に活動するモーリッツ・フォン・オズワルドとマーク・エルネストゥスによるユニット(兼レーベル):ベーシック・チャンネルが、音楽的装飾を極限まで省いたディープなミニマル・ダブという音楽性を打ち出し、それとほぼ同時期にデトロイトでは、UR(アンダーグラウンド・レジスタンス)第2世代のジェフ・ミルズやロバート・フットが、既存のデトロイト・テクノからよりビートを主体に構成させたミニマル・テクノを打ち出す。
その後、これらの音楽性をよりハードなものへとシフトさせたのが活動初期(レーベル:Plus 8時代)のリッチー・ホウティンやアダム・ベイヤー率いるドラムコードであり、ハード・ミニマルというジャンルへと結実する。
その一方で、90年代後期から00年代初頭にかけてPARLON(ZIPとマーカス・ニコライによるレーベル)が、ミニマルの手法を用いたよりハウス・フィーリングの音楽性を追求した結果、クリック・ハウスやマイクロ・ハウスというジャンルを産み出すことに成功。後に訪れる(00年代初期〜中期)ベルリンを中心に巻き起こったディープ・ミニマル・ムーブメントの火付け役となった。これこそが、現在のミニマル・ハウスの源流となる音楽であり、ここで才能を開花させたのがいまなおシーンのトップをひた走るアンダーグラウンドのカリスマ:リカルド・ヴィラロボスである。

このようにミニマルなダンスミュージックは、90年代から00年代にかけて世界各地のアンダーグラウンドなプロデューサーたちの実験的な試みにより様々なサウンドが生みだされることで、多くのジャンルに細分化されてきた。

現在進行形のミニマル・ミュージックを発信するRPRサウンドシステムがついに初来日

そんなミニマル・ミュージックの現在進行形のサウンドを追求し、世界のミニマルリスナーの間で注目を集めている国がある、それがルーマニアだ。

roumania
rpr-soundsystem

ラドゥー、ペトレ・インスピレスク、そしてラレッシュ。3人の頭文字をとったユニット:RPRサウンドシステムの活動で知られる彼らこそが、いまのミニマル・シーンに新たなる風を吹き込むトップDJである。

この3人が2007年に立ち上げたレーベル[a:rpia:r](アーピアー)は、ストイックなまでに音数を減らしたミニマル・サウンドを追求するとともに、プロモーションは最小限、リリースは数百枚限りで再リリースもなし。コマーシャリズムの真逆、ミニマルの極北をいくスタイルにもかかわらず熱烈な支持者を獲得し、またたく間にシーンの最重要レーベルとしての地位を確立。
その最先端のサウンドは、シーンの絶対王者リカルド・ヴィラロボスとも共鳴し、近年、共作や数多くのフェスのヘッドライナーを共にこなしてきた。

そんなルーマニアの三連星が、RPRサウンドシステムとして今週末にリキッドルームに来日する。
一説によるとRPRサウンドシステムとして出演するのは、彼らが認めたギグだけだと言う。世界的に見ても貴重なギグを、世界の音楽トレンドと同じタイミングでここ日本で堪能できる。これは音楽ファンにとって重要な1日になりそうだ。

rpr_front

『RPR SOUNDSYSTEM (Rhadoo, Petre Inspirescu, Raresh / [a:rpia:r])』

2015.4.4 SAT @ LIQUIDROOM
【ACT】RPR SOUNDSYSTEM (Rhadoo, Petre Inspirescu, Raresh / [a:rpia:r]) / KABUTO (LAIR) / DJ PI-GE (TRESVIBES SOUNDSYSTEM) / Taro (op.disc)
【TICKET】ADV ¥3,800 DOOR ¥4,500
【OPEN/START】23:30
【INFO】☎03-5464-0800(LIQUIDROOM)www.liquidroom.net
【Facebook】www.facebook.com/events/1574282336149058

ルーマニアン・ハウスを牽引するトップアーティストたちを解析!

Rhadoo|ラドゥー

rhadoo

現行のアンダーグラウンド・シーンにおけるトップDJの一人。
革命を経て大きな社会変動を迎えるルーマニアを拠点に1995年活動スタート。2003年には『MTV ROMANIA AWARD』を受賞、以降もイビサのクラブDC10などでレジデントを担当。2008年には初のEP「DOR MIT ORU」をリリース。2013年にリリースしたミックスCDの名門「fabric 72」では、地元ルーマニアのDJたちの音源を多数採用、現行のルーマニアン・シーンを世界に提示した。

Petre Inspirescu|ペトレ・インスピレスク

Petre-Inspirescu

1999年、ルーマニアの首都ブカレストでDJ活動を開始。その後盟友ラドゥー、ラレッシュとともにイビサのクラブDC10のパーティ『Circoloco』でレジデントを担当。2007年には3人で[a:rpia:r]を立ち上げる。
2013年2月にリリースした「fabric 68」では全編に渡って自身の未発表曲を使用、各メディアの賞賛を浴びた。オーケストラをフィーチャーしたπ Ensemble名義では、エレクトロサウンドと弦楽器を融合、新たな領域に踏み出している。

Raresh|ラレッシュ

Raresh

15歳から地元バカウでプレイ、その後首都ブカレストにてDJ として経験を積む。
2006年にリカルド・ヴィラロボスと競演し意気投合、以降リカルドとのギグを重ね『SUNWAVES』『LOVE FAMILY PARK』といったフェスにも出演、2014年まで所属した『Cocoon』をはじめワールドワイドに活躍。
現在『Resident Advisor』のDJランキングでは27位。2015年、主宰レーベル[a:rpia:r]の2年ぶりのリリースとなるEP「Vivaltu」を発売。

パーティ前に聴いとけ! ルーマニアン・ハウス必聴盤9選


01_Arhiva EP

RHADOO
Understand
『Arhiva EP』

02_Gradina Onirica

Petre Inspirescu
[a:rpia:r] 『Grădina Onirică』

03_Vivaltu

RARESH
[a:rpia:r] 『Vivaltu EP』

04_fabric68

P1etre Inspirescu
『fabric 68』
FABRIC

05_FABRIC72

RHADOO
『fabric 72』
FABRIC

06_fabric78

RARESH
『fabric 78』
FABRIC

07_NILLA003_1

Roustam
『RUSTOSPACE EP』
Nilla

08_SYLPHE02_1

HOLDIE GAWN / MICAWBER
『DISTINC / SATELLITE SYSTEMS』
Sylphe

09_projections

Vlad Caia
『Projections EP』
AMPHIA

minmaltechno

FLOORad_150505_onenation
FLOORad_RDC

[:en]

ミニマルとは“最小限”という意味で、芸術分野における無駄や説明的な部分を省きシンプルな形で表現する志向をミニマリズムと言う。いまは亡きスティーヴ・ジョブスが掲げたAppleのデザインに対する哲学も“Keep it Simple”であった。それはデザインをシンプルにすることで作品そのものの本質や魅力をストレートに伝えるためだ。

このミニマルという手法は、アートや建築、ファッションなどの分野にも用いられる概念で、音楽シーンでは、諸説あるが1960年代にアメリカの音楽家:スティーヴ・ライヒにより提唱されたとされる。そして、このミニマルというアートフォームは、ダンスミュージックというフィールドにおいて、文化的にも、音楽作品的にも、もっとも重要なファクターのひとつとなった。

その音楽は、最小限に厳選したフレーズを反復させ、一音一音はシンプルなのに流れる時間の中でときに美しく、ときに不思議な響きを産む。偏差値の高いマニアックな音楽だが、その魅力の深みにハマると中毒性の高い音楽でもある。

minimaltechno

90年代〜00年代:多彩な実を結んだミニマルの血脈

ダンスミュージック・シーンにおけるミニマルの歴史を足早に遡ると、1990年代初頭〜中期にかけてアシッドハウス・ムーブメントの衰勢とシカゴハウスの商業音楽化が進み、そのカウンターとも言えるタイミングで産まれた。

大雑把に言えば、ドイツを拠点に活動するモーリッツ・フォン・オズワルドとマーク・エルネストゥスによるユニット(兼レーベル):ベーシック・チャンネルが、音楽的装飾を極限まで省いたディープなミニマル・ダブという音楽性を打ち出し、それとほぼ同時期にデトロイトでは、UR(アンダーグラウンド・レジスタンス)第2世代のジェフ・ミルズやロバート・フットが、既存のデトロイト・テクノからよりビートを主体に構成させたミニマル・テクノを打ち出す。
その後、これらの音楽性をよりハードなものへとシフトさせたのが活動初期(レーベル:Plus 8時代)のリッチー・ホウティンやアダム・ベイヤー率いるドラムコードであり、ハード・ミニマルというジャンルへと結実する。
その一方で、90年代後期から00年代初頭にかけてPARLON(ZIPとマーカス・ニコライによるレーベル)が、ミニマルの手法を用いたよりハウス・フィーリングの音楽性を追求した結果、クリック・ハウスやマイクロ・ハウスというジャンルを産み出すことに成功。後に訪れる(00年代初期〜中期)ベルリンを中心に巻き起こったディープ・ミニマル・ムーブメントの火付け役となった。これこそが、現在のミニマル・ハウスの源流となる音楽であり、ここで才能を開花させたのがいまなおシーンのトップをひた走るアンダーグラウンドのカリスマ:リカルド・ヴィラロボスである。

このようにミニマルなダンスミュージックは、90年代から00年代にかけて世界各地のアンダーグラウンドなプロデューサーたちの実験的な試みにより様々なサウンドが生みだされることで、多くのジャンルに細分化されてきた。

現在進行形のミニマル・ミュージックを発信するRPRサウンドシステムがついに初来日

そんなミニマル・ミュージックの現在進行形のサウンドを追求し、世界のミニマルリスナーの間で注目を集めている国がある、それがルーマニアだ。

roumania
rpr-soundsystem

ラドゥー、ペトレ・インスピレスク、そしてラレッシュ。3人の頭文字をとったユニット:RPRサウンドシステムの活動で知られる彼らこそが、いまのミニマル・シーンに新たなる風を吹き込むトップDJである。

この3人が2007年に立ち上げたレーベル[a:rpia:r](アーピアー)は、ストイックなまでに音数を減らしたミニマル・サウンドを追求するとともに、プロモーションは最小限、リリースは数百枚限りで再リリースもなし。コマーシャリズムの真逆、ミニマルの極北をいくスタイルにもかかわらず熱烈な支持者を獲得し、またたく間にシーンの最重要レーベルとしての地位を確立。
その最先端のサウンドは、シーンの絶対王者リカルド・ヴィラロボスとも共鳴し、近年、共作や数多くのフェスのヘッドライナーを共にこなしてきた。

そんなルーマニアの三連星が、RPRサウンドシステムとして今週末にリキッドルームに来日する。
一説によるとRPRサウンドシステムとして出演するのは、彼らが認めたギグだけだと言う。世界的に見ても貴重なギグを、世界の音楽トレンドと同じタイミングでここ日本で堪能できる。これは音楽ファンにとって重要な1日になりそうだ。

rpr_front

『RPR SOUNDSYSTEM (Rhadoo, Petre Inspirescu, Raresh / [a:rpia:r])』

2015.4.4 SAT @ LIQUIDROOM
【ACT】RPR SOUNDSYSTEM (Rhadoo, Petre Inspirescu, Raresh / [a:rpia:r]) / KABUTO (LAIR) / DJ PI-GE (TRESVIBES SOUNDSYSTEM) / Taro (op.disc)
【TICKET】ADV ¥3,800 DOOR ¥4,500
【OPEN/START】23:30
【INFO】☎03-5464-0800(LIQUIDROOM)www.liquidroom.net
【Facebook】www.facebook.com/events/1574282336149058

ルーマニアン・ハウスを牽引するトップアーティストたちを解析!

Rhadoo|ラドゥー

rhadoo

現行のアンダーグラウンド・シーンにおけるトップDJの一人。
革命を経て大きな社会変動を迎えるルーマニアを拠点に1995年活動スタート。2003年には『MTV ROMANIA AWARD』を受賞、以降もイビサのクラブDC10などでレジデントを担当。2008年には初のEP「DOR MIT ORU」をリリース。2013年にリリースしたミックスCDの名門「fabric 72」では、地元ルーマニアのDJたちの音源を多数採用、現行のルーマニアン・シーンを世界に提示した。

Petre Inspirescu|ペトレ・インスピレスク

Petre-Inspirescu

1999年、ルーマニアの首都ブカレストでDJ活動を開始。その後盟友ラドゥー、ラレッシュとともにイビサのクラブDC10のパーティ『Circoloco』でレジデントを担当。2007年には3人で[a:rpia:r]を立ち上げる。
2013年2月にリリースした「fabric 68」では全編に渡って自身の未発表曲を使用、各メディアの賞賛を浴びた。オーケストラをフィーチャーしたπ Ensemble名義では、エレクトロサウンドと弦楽器を融合、新たな領域に踏み出している。

Raresh|ラレッシュ

Raresh

15歳から地元バカウでプレイ、その後首都ブカレストにてDJ として経験を積む。
2006年にリカルド・ヴィラロボスと競演し意気投合、以降リカルドとのギグを重ね『SUNWAVES』『LOVE FAMILY PARK』といったフェスにも出演、2014年まで所属した『Cocoon』をはじめワールドワイドに活躍。
現在『Resident Advisor』のDJランキングでは27位。2015年、主宰レーベル[a:rpia:r]の2年ぶりのリリースとなるEP「Vivaltu」を発売。

パーティ前に聴いとけ! ルーマニアン・ハウス必聴盤9選


01_Arhiva EP

RHADOO
Understand
『Arhiva EP』

02_Gradina Onirica

Petre Inspirescu
[a:rpia:r] 『Grădina Onirică』

03_Vivaltu

RARESH
[a:rpia:r] 『Vivaltu EP』

04_fabric68

P1etre Inspirescu
『fabric 68』
FABRIC

05_FABRIC72

RHADOO
『fabric 72』
FABRIC

06_fabric78

RARESH
『fabric 78』
FABRIC

07_NILLA003_1

Roustam
『RUSTOSPACE EP』
Nilla

08_SYLPHE02_1

HOLDIE GAWN / MICAWBER
『DISTINC / SATELLITE SYSTEMS』
Sylphe

09_projections

Vlad Caia
『Projections EP』
AMPHIA

minmaltechno